第71話 Summer Date act.4
二人で切符を買い、電車へと乗り込んだ
車内はわりと混み合ってはいたものの座れないほどではない
「けーご、ここ座ろ?」
「おう」
園崎が横座りのシートの端に座り、俺を隣へと促す
腰を下ろすと身体の左側面に園崎の身体が触れた
特に肌が露出した二の腕同士がくっついて、俺の鼓動が変に高まっていく
と同時に血流が下半身の一部へと集まって行く
ちょ、待て俺!
腕だぞ腕
興奮しすぎだろ
確かにナマの素肌だけど・・・
すべすべして気持ちいいけど・・・
・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・他んとこは、どんだけイイ感触なんだろ・・・
「けーご?」
「うおっ!?」
不意に声をかけられ俺は飛び上がらんばかりに驚いた
「どしたの?ぼーっとして」
園崎が俺の目を覗き込むように見つめてくる
俺は沸き立った不埒な欲望に対する後ろめたさに慌てて顔を逸らす
「べ、別に・・・ちょっと考え事」
「ふーん」
俺は触れた肌の感触に発情していることを気取られないよう努めて平静を装った
だから、くっついた二の腕も敢えてそのままだ
園崎が平然としてるのに俺の方から慌てて離したりしたら・・・園崎の「オンナ」を意識してるのを見透かされそうだしな
そうやって表面上は無表情無関心を装うものの・・・俺の分身は勝手に膨張を続けていく
この・・・俺の中にドロドロと渦巻き燃えたぎる、園崎のカラダに対する性の欲求
これを、もし気付かれたら・・・
親友として信頼している相手が、実は自分に対してこれほどの劣情を抱いていると知ったら・・・
その信頼は瞬時に不信へと変わり、俺達の関係はこれまでと同じではいられないだろう
こっそりと目だけで隣に座る園崎を盗み見る
いつもより近い距離にある園崎の横顔
愛らしい形の唇は・・・何か塗っているのだろうか?
濡れたように光り輝いて見える
・・・ごきゅ
思わず喉が鳴り、俺は園崎に聞きとがめられてないか焦る
「?」
園崎が不思議そうな表情でこちらを見た
う・・・何か気取られる前に、気を逸らさなきゃ怪しまれる
「でも遊園地の券なんてどうしたんだ?わざわざ買ったのか?」
俺は密着したこの状態が・・・まるで何でもない事のような
あたかも男同士でのことのような感覚を装い、隣の園崎にそんな話題を振った
「うむ、実はこれは父親から貰った物でな。毎年、この時期にくれるんだが・・・いままでは特に使い道もないんで金券ショップで換金して、小遣いの足しにしてたんだ」
園崎から返ってきた回答に俺は眉根を寄せる
「金券ショップで換金って・・・せっかく親父さんから貰ったものを、そんな・・・」
「別に構わないさ。そもそも使わないなら換金したらいいって言ってきたのは向こうだし」
「え?」
親父さん、使われずに換金されるのが分かってて毎年くれてるってのか?
なんとも腑に落ちない
それならわざわざチケットの形で寄越さなくても、金銭で普通に小遣いとして渡した方がスムーズなんじゃないか?
俺は園崎親子の不可解とも思える回りくどいやり取りに困惑を覚えるが・・・渡され手に取ったチケットを改めて見てその理由を理解した
「なるほど・・・毎年・・・この時期に・・・貰える・・・・ね」
そのチケットには金額の表示はされておらず・・・
その代わりに『株主様御優待券』との文字が刻印されていた
「株主なのかよ!?」
「ん?・・・ああ、そうみたいだな。でも貯金代わりに少し持ってる程度で、経営に口を出せるほどじゃないらしいぞ」
俺のツッコミに園崎がそう淡々と返す
庶民の俺からすれば株を持ってるってだけでスゲえ感じがするが・・・
「でも、ここって割りと有名な遊園地だろ?毎年タダ券が手に入るってすごいな」
「そうか?行かない人間にとってはただの紙切れだろ?換金するっていっても売値は二束三文だし・・・」
そうゆうもんか?
「ボクもここに行くのはこれが初めてなんだが、けーごは行ったことあるか?」
「あー、俺もここは行ったことないな。大体、遊園地自体しばらく行ってないし」
「そうか、だが案ずるな。前もってネットとかで下調べはしてある。ボクに任せておけ」
そう言ってニヤリと不敵に笑う園崎
それにしても遊園地で『部活』って、どんなことをするつもりなんだ?
ちょっと思いつかないぞ
そういえば俺が最後に遊園地に行ったのっていつだったっけ
確か数年前・・・中学の時だったか?
あれは都内某所の・・・
うぐっ!?
そうだ、思い出したぞ!
あの時も姉さん一味に無理矢理連れてかれたんだ
当時姉さん達の間で特撮ヒーロー物がブームになってて、遊園地でヒーローショーがあるからって付き合わされた事があった
あいつらそこで『レッドとブルー、どっちが攻めでどっちが受けか』とかで論争を始めて・・・チビッコ達から奇異な目を向けられたんだよな
(でも何故かグリーンだけは『総受け』ってことで意見が一致していた)
まさか・・・
まさかまさかまさか!!!!
悪の心を呼び覚ますためにヒーローショーに乱入する・・・とか言い出すんじゃないだろうな!?
有り得そうで恐え
俺は冷や水を浴びせられたような悪寒を感じて思わず身震いした
「ど、どうかしたのか、経吾?急にビクッとして」
触れたままだった腕から、俺の体の動きを感じた園崎が怪訝そうな顔を向けてくる
「・・・いや。あのさ園崎。今日の部活って、この遊園地でどんなことするつもりなんだ?」
俺は園崎が今日予定している部活の内容を恐る恐る尋ねた
「ど、どんなコトって・・・・、そ、それはその・・・」
俺の質問を受け、何故か園崎は急に頬を赤らめ、目を泳がせながら口ごもった
「きょ、今日は・・・最終的にはある『術式』を・・・行いたいと・・・思っている」
少し俯き加減にそんな答えを返してきた
「『術式』?それってどんな?」
「う、あ、う・・・・そ、それは、その・・・・い、今はまだ、言えん。そ、その時になったら・・・・・・・・説明する」
なんとも歯切れの悪い答えに俺の不安はさらに増していく
「そ、その『術式』を行うためには色々と、条件を・・・揃える必要が・・・・あるから・・・」
「条件って?」
「場所とか・・・タイミングとか・・・・・・・・・・・・・・・・・・ムードとか…」
俯いてモゴモゴと喋る園崎の声は電車の騒音でよく聞き取れない
微かに『場所』、『タイミング』なんて言うのが聞こえたけど・・・
中二的な思考で推察してみる
『地を這う龍脈の交わる場所』・・・そして、『太陽と月の角度』なんてことだろうか?
まさかヒーローショーのイベント会場とタイムテーブルって意味じゃないよな!?
俯いてしまった園崎の表情は窺うことは出来ず、もうこれ以上の質問は無理のようだ
まあ、何をやらされるか解らないのは不安だが、これまでも痛恥ずかしいことは散々やってきたし、いまさらか・・・
大概のことはやる自信はあるけど、あまりの無茶振りは勘弁してほしいよなあ・・・
「園崎、それ・・・出来れば人目が多い場所でやるのは勘弁してくれないか?」
「は!?な、な、な・・・、ボ、ボクがそんな破廉恥な真似をすると思うか!?軽薄なリア充どもと一緒にするな!そ、そういった行為は神聖なものであり秘するべきものだ!軽々しく衆目に晒していいものじゃない!」
なんか凄い剣幕で怒られた
「そ、そうか、なら、いいんだ」
うーん・・・、園崎は今回やるっていうその『術式』とやらを、かなり神聖視してるみたいだ
いつもとは意気込みというか気合いの入り方が違うように見える
・・・こりゃ、俺も腹をくくってかからなきゃならないかな
なんか失敗は許されないような雰囲気だ
「んー、まあ・・・出来るだけお前の期待に応えられるように頑張るよ」
「ふぇ!?・・・き、期待って、そんな・・・・・・まあ…してる…けど・・・・・・」
諦め混じりの苦笑で軽く言った俺のセリフに、妙にわたわたした反応でそう返す園崎
あれ?
なんか・・・変な温度差みたいなものがないか?
微妙に噛み合ってないっていうか・・・
俺は園崎の様子に僅かな違和感のようなものを感じたが・・・それがなんなのか見当もつかない
俯いたままの顔からは表情を読み取ることは出来なかったものの、髪の間から覗く耳たぶは・・・何故か真っ赤になっていた
「と、とにかく・・・上手くやれるか分からないけど・・・なるべくお手柔らかに頼む」
「あう・・・・・・こ、こちらこそ・・・よろしくお願いします」
・・・なんだ?この妙な神妙さというか、しおらしさは
・・・えっと
それ以上は、何か言葉をかけるのが憚られるような変な雰囲気になってしまい、俺達は無言のまま列車の揺れに身を任せた
触れたままの腕から伝わるお互いの体温を感じながら・・・・
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「よし、着いたぞ!ここの駅前から無料のシャトルバスが出ているからな。ここからはそれに乗って行く。ついてこい、経吾」
目的地の駅に着きホームに降り立った園崎は俺を振り仰ぎ、そう指示を出した
その様子はいつも通りの園崎に戻っていて、俺は僅かにあった変な緊張を解く
まあ、今日やる予定の『術式』ってのが何か気にはなるが、直前になるまで教えるつもりはないみたいだし、いま考えてもしようがないよな
ヒーローショー乱入でないことを祈るだけしかない
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
バスに揺られ十数分後、俺達は遊園地のゲート前へと到着した
窓口でチケットを見せ、パスカードと交換し、揃って入場ゲートをくぐる
一緒に貰った園内パンフを開き見た俺は密かに胸を撫で下ろした
どうやらこの遊園地のプログラムにはヒーローショーは無いようだ
まあ、それもそうか
ここはどちらかというと家族連れというよりカップル向けの『ちょっとオシャレな遊園地』ってイメージを売りにしてたはずだ
確か大観覧車が有名で、テレビの情報バラエティ番組とかのデートコース紹介コーナーなんかで度々取り上げられてた気がする
隣で一緒に観てた姉さんが
「チッ・・・リア充どもが・・・爆発しろ・・・てゆーか、観覧車崩壊しろ」
とか物騒な事を呟いてたのを思い出した
前方を仰ぎ見るとその威容を誇る巨大な車輪がそびえ立つのが見える
あれが噂の観覧車か
確かにでかいな
さぞや見晴らしがいいことだろう
空中に浮かぶ、それぞれのゴンドラの中はカップルのラブラブ空間てわけか
いままさにあの中で何組もの男女がイチャイチャしてやがるわけだな
ふっ・・・
俺にはなんて遠い世界なんだ
僅かに視界がぼやけるがこれは悔し涙が浮かんだからなんかじゃないぞ
青空が・・・眩しかっただけだ
卑屈な気分で視線を観覧車から園崎に戻すと・・・園崎はぽーっとした表情で何かを見上げていた
どこかその目は潤み、頬には朱がさして見える
何を見てるんだ
そう思い園崎の視線を辿ると・・・たった今、俺が眺めていた観覧車の方へと向いているようだった
「園崎?」
「わっ!?・・・・・・・な、何?」
「いや・・・、その・・・・・悪い。驚かせたか?」
俺が声をかけると園崎はこちらが驚くくらいびくりと身を震わせた
「ん、んーん。ゴ、ゴメンね。ちょっとボーっとしてて・・・」
園崎は取り繕うようにそう言って目を泳がせた
明らかに観覧車を見てたように思ったんだが・・・・
だが、さっきの『術式』の話題と同じく、あまり追求するべきじゃないような気がするな
「えーと・・・、取り敢えず奥に進むか?」
俺はそう言って他の入園者達の流れに従い足を踏み出した
「ま、待て経吾。この先へ進む前に、まずやっておくべきことがある」
「ん?なんだ」
先にたって歩き出そうとした俺を園崎が呼び止めた
どうかしたんだろうか?
「経吾も知っての通り、ボクはケータイやスマホを持っていない」
「ああ、そうだったな」
園崎は未だにケータイの類いを持っていない
だからもっぱらの連絡手段は家の電話かパソコンのメールで・・・園崎が自宅にいない時は俺の方から連絡を取ることは不可能な状態だった
「今日、この広い園内において万が一はぐれることにでもなった場合・・・連絡を取り合う手段のない我々が再び合流するのはかなり困難なものとなるだろう」
「そうか。そう言われればそうだな」
人も多いし初めての場所だ
ましてや普通の街中と違ってここは遊園地だ
非日常感のある風景に視覚的にも惑わされがちになる
一度相手を見失えば簡単には探し当てられないかもしれない
さすがにこの歳で迷子の呼び出しとか・・・断られはしないだろうが、恥ずかし過ぎるよな
「よし・・・じゃあ、はぐれた時のために集合場所決めとくか?」
俺はそう思い付き、園内表示の案内板へと目を動かすが・・・
「こふん・・・こふん、こふん」
園崎の変な咳ばらいにそれを止められた
「た、確かに・・・はぐれた時の事を想定して合流ポイントを定めておくのも大事だ。だがそれよりも、はぐれぬようにすることこそ最良の策だろう」
園崎は僅かに頬を赤らめながらそんなことを言ってきた
まあ、それは確かにそうだな
はぐれなきゃ、それに越したことはない
「と、いうことでだ・・・・・」
「うん?」
「えっと・・・・・つまり・・・・・その・・・・・けーご・・・・
・・・・手、つなご?」
ぐおっ!?
僅かに頬を染め、上目遣いにそんなセリフを発した園崎に・・・俺は心の中の何かを鷲掴みにされた
「な、な、な、
なるほど!・・・た、確かに・・・起こり得るトラブルを想定するにあたり、起こった場合の対策を考えるより、まず起こらないようにする対策を考える方がより重要だな。じ、実に建設的な意見だ」
俺は園崎の天才的ともいえる発想に基づく提案に、もつれる舌で全面的な賛同を表明した
「で、でしょ?」
「お、おう・・・・よ、よし。つ、繋ぐか。はぐれないために」
「う、うん。はぐれたら大変だもんね」
意見の一致をみた俺と園崎はお互いに頷き合い片手を伸ばした
よ、よし。繋ぐぞ
俺は僅かな緊張と共に差し出された園崎の手の平をそっと手に取った
うくぅ・・・・
や、柔らけえ・・・・・
園崎の手を握るのは初めてのことではないが、改めてその感触の素晴らしさに感動を覚える
こじんまりとしていて・・・・ほっそりとしているのに物凄く柔らかい、可愛らしい手だ
俺は力を入れ過ぎないように注意して園崎の手の平を自分の手で包み込んだ
ああ・・・、遊園地で女の子と手を繋いで歩くなんて・・・・
まるで夢のようだ
ホントにデートしてるような気分になってくる
いや、ダメだダメだ
気をしっかり持て、俺
舞い上がってここに来た目的を忘れるな
これは『部活』・・・・『部活』なんだ
未だ詳細の解らぬ『術式』とやらをやる為に連れてこられた事を忘れるな
俺はフワフワと宙に浮くような無重力感を錯覚する己の身体感覚の修正に努める
・・・・よし、落ちついてきたぞ
ちゃんと足の裏に地面の感覚がある
「ま、待って。けーご・・・・・これじゃ・・・ダメ・・・」
「えっ?」
ヤバい
そっと優しく握ったつもりだったのに、強過ぎたか?
痛い思いさせたんじゃ・・・
俺は焦り、慌てて手の力を緩めた
「これだと・・・なにかの弾みでほどけちゃうかも・・・しれないでしょ?」
園崎はそう言うと・・・・
俺の手の平の中
包み込んでいた手がどこか艶めかしく蠢き・・・・
しなやかな指が俺の指と指の間へと・・・・するりと入ってきた
ふぉう!?
こ、これは・・・・!?
「こうやって繋いどけば・・・なにかの拍子でほどけちゃうことも、ないでしょ?」
僅かに上擦ったような声で園崎がこの繋ぎ方の優位性を解説してくる
「た、た、た、確かにその通りだな。これなら絶対離れる心配は無いな!てゆーか絶対離さないから安心しろ、園崎」
俺は猛烈に込み上げてくる感情の勢いのまま、変なテンションで園崎にそう誓った
危うく跪くくらいのヤバいテンションだった
「うん・・・・・・ボクも、絶対離れないよ・・・・けーご・・・・」
俺のノリに合わせてくれたのか、返事を返す園崎もちょっとおかしなテンションだった
それにしても・・・
はぐれないようにするための措置とはいえ、この手のつなぎ方はまるで本物の恋人同士になったような気分だ
普通じゃこんなつなぎ方しないもんな
つい、部活だってのを忘れそうになる
俺はつい緩みそうになる顔の表情筋を引き締めた
でも肝心の術式ってのを行うまで、どうしてればいいんだ?
なんか条件が揃わないと出来ないっぽいけど、それまで何もしないでブラブラしてるのかな
「こふん・・・さて、今日の部活だが・・・じゅ、『術式』を行うのは最終的な目標として、それまでここの遊戯施設を使い我等の魔力増幅、記憶の復元を試みることにする」
いつもの如く園崎がもっともらしい説明を語り出した
うーん・・
端から見たら仲良く手を繋いで歩くデート中のカップルなのに・・・話してる内容とのギャップがハンパねえな・・・
「前世では・・・我等は常に死と隣り合わせの毎日だった。そんな前世での日々に比べれば、このセカイの毎日など退屈でヌルいものだと言わざるを得ないだろう」
「お、おう・・・」
俺は何事もない穏やかな日々の方がいいけどな・・・
「このような安穏とした日常の中では前世の記憶の再生はもちろん・・・魔の力の覚醒など起こるべきもないだろう。マンガや小説などをみるに主人公が異能の力を発現するきっかけは概ね身に危険が迫った時だ。・・・・そこで、敢えて自ら危険を冒し、力の覚醒を促す・・・というのも一つの手ではある。だが、それは非常にリスクを伴う事でもある。発動すればよし。・・・・だが失敗すれば大怪我もしくは死・・・というのではあれば軽々しく試せるものでもない」
「そりゃま、そうだな」
「そこで・・・あれだ」
説明を終えた園崎がおもむろに何処かを指し示す
その指の先には・・・
「うげ・・・、マジか」
そこに見えたのは・・・高所から垂直に落下するタイプの絶叫マシン
いわゆる、『フリーフォール』というやつだった
「あれに乗り恐怖を体感することで記憶の復元、及び力の発動を促す・・・・どうだ。これなら死や大怪我の危険を心配することなく恐怖のみを感じることが出来るだろう?」
ドヤ顔でそんなことを言ってくる園崎に俺は引き攣った笑いを返すしかできない
・・・正直、勘弁してほしい
数年前、姉さん達と行った時もアカネさんに無理矢理ジェットコースターに乗せられ、俺は危うく泣きそうになった
「・・・なるほど・・・確かに怪我の心配はなさそうだけどな・・・心臓には悪そうだぞ・・・」
「なにを言う!それがいいんじゃないか!心臓がドキドキする体験を二人ですることにより吊り橋効・・・げふんげふん・・・じゃなくて・・・えーと・・・か、過去の・・・前世の・・・記憶とかアレを呼び起こすのだ!!!」
なんかよくわからない力説をされた
後半がグダグダだったけど・・・
はあ・・・、どうやら拒否は許されないらしい
逃げようにも左手はがっちり繋がったままだしな
「・・・わかったよ」
俺は観念してため息をついた
せいぜい悲鳴を上げないよう努力しよう
好きな女の子に情けない姿は見せたくないしな
(つづく)
【あとがき】
またまた永らくお待たせしてしまいたした
お久しぶりでございます
本当に毎回更新が遅くてすみません
…いつまでも夏休みが終わらない…




