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プロミステイク ~俺と彼女の中二病的恋愛遊戯~  作者: 阿津沼一成
第2章 サマータイム・ラプソディ
59/90

第59話 Oh Me My #2.5

「うげ」


園崎の家を後にして駅へと向かっていた俺は、前方から歩いてきた人物の姿を見留め思わずそう呻いた


夜の闇で紡いだような漆黒のサマードレスを身に纏ったその少女は・・・

言わずと知れたもう一人の中二病女、サツキメイその人だった


「なんだイ?『うげ』とはご挨拶だナ?ちょっと傷付いたゾ」


だがそんなセリフとは裏腹に、口の端を歪ませた笑いを浮かべたその表情はとても傷付いている風には見えない


「ここは僕のテリトリーダ。むしろ君の方が異質な存在じゃないのかナ?どうして君がここニ・・・・・・・ああ、そうカ」


不審な目を向けるサツキが、何かに思い当たったような顔になる


「そうカ・・・ゆずっち、カ・・・・・・キヒ、ゆずっちとヤりに来たんダ?」


「ぶっ!?・・・下品な言い方すんな!きょ、今日は園崎の見舞いだ。風邪ひいたっていうから・・・」


下卑た笑いを浮かべるサツキに、俺はそう説明した


「風邪?・・・あのゆずっちが病気とは珍しいナ。それで具合の方はどんなだイ?」


「・・・もう、だいぶ良くなったみたいだけどな。熱が出て3日くらい寝込んでたみたいだぞ」


「ふーン。どうせ、お腹でも出して寝てたんだろーネ」


「あのな・・・子供じゃあるまいし」


サツキの意外に微笑ましい予想に俺は思わずその場面を想像して苦笑を・・・


「きっと全裸でオ●ニーしてそのまま寝ちゃったんだろーネ。エアコンつけっぱデ」


「ブフォ!?・・・げ、げげげげ下品な事を言うなつってんだろがああああ!!」


脳内に浮かびかけた子どもっぽくて可愛らしい映像が瞬時に淫らなものに切り替わり、俺は全身全霊でサツキへツッコミを入れる


「キヒヒ、ツッコミ方がゆずっちそっくりだネ。ホントお似合いだよ君達」

「・・・うぐ」


サツキのセリフに俺は思わず言葉を詰まらせる


「でも君、ゆずっちのコト神聖視し過ギ。女なんて中身は男以上に欲にまみれてる生き物なんだヨ?・・・物欲、金欲、食欲、自己顕示欲、独占欲・・・それに性欲。キヒ、ただ皆んなそれを上手く隠してるだケ。女は計算高いからネ」


「・・・・・・。」


まあ、それは理解してる。姉さんの友人達との付き合いで嫌ってほどな


だから俺はそれが園崎の中には無い、なんて思っちゃいない


「俺が言ってるのは慎ましさの話だ。お前は下品過ぎ」


溜息混じりにそう言うとサツキは顔を傾け鼻で笑うような顔を見せてくる


「あア、男が望む理想の女ってヤツかイ?『昼は淑女のように夜は娼婦のように』・・・だっケ?フム、そう考えるとゆずっちほどの逸材はなかなかいないだろうネ。ベッドの上じゃ豹変するタイプだヨ、あのコは」


そんなセリフと共にいやらしい笑みを浮かべるサツキに俺は溜息をつくしかない


ダメだ・・・


こいつと話してるとえらい疲れる・・・

他人をおちょくるのが基本スタイルみたいな奴だからな


「っと、俺の事より・・・お前の事だ」


そうだ

コイツに言っておきたい事があったんだ


「僕の事?」


「ああ・・・、お前あんまりマキさんに酷い事するなよ。聞いたぞ、長時間椅子代わりにしたんだって?」


「ゴフッ!?…な、ななななななななんでその事ヲ!?」


俺の指摘にサツキが柄にもなく狼狽する


「マキさんから聞いた。あのな・・・あの人ちょっと変態ぽいとこあるけど基本いい人だし、お前のこと本気で好きみたいなんだから・・・」


「そ、そんな事は言われなくても分かってル。大きなお世話ダ!・・・フン、あのおしゃべり男。・・・・・・後でたっぷりと折檻せねばならんナ・・・」


俺の訴えを一顧だにもせず、サツキは薄い笑みを浮かべて物騒な事を呟く


「お、おい。だから酷い事すんなって。それにもしマキさんの事からかってるだけでその気がないんなら・・・」


「ハン!君には関係無イ・・・これは僕とりょーちゃんの問題ダ。君が口出しする事じゃなイ」


ぴしゃりと俺の言葉を遮るサツキ


・・・ん?いま・・・


「・・・りょーちゃん?」


「うグ!?・・・おっと、急用を思い出しタ。じゃあ僕はこれで失礼するヨ」


サツキは急に早口でそう言って踵を返すと、逃げるように足早に立ち去っていった


なんだあいつ?


珍しく慌てたような様子だったけど



ま、いいか


不自然さがいささか気にはなったが敢えて深く考えることでもないだろう


俺はそれ以上の思案を止めると駅へと再び歩きはじめた


◆    ◆    ◆    ◆    ◆    ◆


「あ、先輩。こんにちは、いまデートの帰りですか?」


駅舎から出たところでそんなセリフをかけられた


振り向くと歩み寄って来たのはやはり・・・後輩女子サクマだった


「あのな・・・別にデートなんかしてないぞ。園崎が風邪ひいたらしくてな。見舞いに行っただけだ」


まあ、結果的にそうなっただけで実際はストー・・・ごふごふ


「うは。お見舞いイベントをこなして来た訳ですか!?裏疚しい・・・もとい、羨ましいです園崎センパイ!」


俺の説明にサクマがマンガみたいに目に星を浮かべる


「羨ましいって・・・お見舞いなんて言っても別に大した事はしてないぞ」


「何をおっしゃられやがりますか先輩!」


溜息混じりに吐いた俺のセリフにサクマが必要以上に噛み付いてくる


「いいですか先輩。女の子は自分が弱ってる時には好きな人に傍にいて欲しいものなんです!たとえ何もしてくれなくても傍にいてくれるだけで心がほんわかとなって元気が出てきちゃうものなんです!それが乙女なおにゃーにょこなんですよ!!」


「わ、わかった。わかったから落ち着け」


謎の興奮をみせるサクマに軽く引きながら宥める


「こふん・・・失礼しました。まあとにかくですね、ただ傍にいてくれてるってだけで女の子は嬉しいんですよ。相手が大事な時間を自分と一緒にいることに使ってくれてるってことですから」


「そ、そういうもんなのか?」


「そうですよ。その上、もしずっと手を繋いでてくれたりしたら・・・うはぁ、もうメロメロですよぉ!!」


真っ赤な顔で僅かに口の端からヨダレを垂らすサクマ


すごい残念な表情だ

さっきまで夢見る乙女みたいな顔だったのに・・・


コイツたまにおかしくなるよな


普通にしてれば普通に可愛いのに、難儀な奴だ


俺はまだぐねぐねと身をよじらせ続けるサクマに別れを告げ、家路へとついた


◆    ◆    ◆    ◆    ◆    ◆


「ん?誰だ」


路地の角を曲がった時、家の前で中の様子を窺う何者かの姿が見えた


「えーと・・・、ウチに何か用ですか?」


取り敢えずかけた声に振り向いた顔は・・・俺の見知った人物のものだった


「あれ?カスガさん?」


「おお?おおーう!?キミはみぃねの弟クン!久しぶりぃ」


「どうも・・・、お久しぶりです」


俺は自分でもわかる複雑な表情で挨拶を交わす


ちなみにカスガさんの言った『みぃね』ってのは姉さんのことだ

ミネが正しい発音なんだが姉さんの友人達はみんな『みぃね』って呼ぶ


「うんうん、どこに出しても恥ずかしくない受け男子に成長したねえ。おねーさん嬉しいよぉ」


「いや、そんな物に成長した覚えはないです」


久しぶりに出会った友人の弟に対してかける言葉がそれって人としてどうなんだ?


「ふふふ、その淡々としたツッコミ・・・やっぱり弟クンはノンケを装ったクール受けよね」


いかん・・・このパターンは延々精神力が削られていく、かつて味わった物だ


話題を変えねば・・・


「あ、そういえば・・・カスガさん、デビューしたんですね。おめでとうございます」


先ほど園崎の部屋で見た雑誌の事を思い出した俺はそう祝いの言葉をかけた


俺のセリフを受けカスガさんは嬉しそうに顔を赤らめる


「弟クン、読んでくれたんだ。でもあの雑誌ってBL系なんだけど・・・うは、やっぱり弟クンって・・・」


「いや、違いますから。見たのはホント偶然ですから」


いかん、薮蛇だった


「それはそれとして・・・どうしたんですか今日は?姉さんに会いに来たんですか」


「うっ・・・実は・・まあ・・そうなんだけど・・・・」


俺の疑問にカスガさんは急に歯切れが悪くなる


「あー、もしかして・・・前にケンカしてから、まだ仲直りしてないまんまなんですか?」


「うぅっ、実はね・・・。それで、出来れば仲直りして、またちょっと力を貸して欲しいなって・・・」


カスガさんはそう言うと、バツが悪そうに苦笑いを浮かべた


◇  ◇  ◇  ◇  ◇


「ふう」


自室に戻った俺はベッドへと仰向けに身を投げ出して一息ついた


姉さんがいま家にいないこと、それどころか日本にすらいないであろうことを話すとカスガさんはガックリと肩を落とした


取り敢えず姉さんと連絡がついたら、カスガさんが仲直りしたがっていることを伝え、電話させることを約束すると彼女は『よろしくお願いね』と言って去って行った


まあ、ケンカの発端は俺の一言・・・と言えなくもないし多少は責任を感じ・・・



って、おかしいだろ!?



あれって俺に責任あるのか!?


俺の脳裏に・・・思い出したくもない記憶が蘇ってきた


・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・


「へえ、姉さん達って二人でマンガ作ってるんだ?藤●不●雄みたいに?」


その時、俺は何気なく連想した国民的アニメの原作者コンビの名前を出した積もりだった


それがあんなことになるなんて・・・


「そーね、例えるならあたしがFでこのコがAってとこね」


「・・・ちょっと待ちなさいよ。それを言うなら貴女がAであたしがFでしょ?」


「はあ?何言ってんのよ。当然あたしがFじゃない。Aはあんた!」


なんかよくわからない言い争いが始まり、話題を振った俺は慌てふためいた


コイツら、いくら酒入ってるからって怒りのスイッチが意味不明だ


「けーくんはどう思う?あたしとこいつ、どっちがFでどっちがAだと思う?」


「弟クン、当然あたしがFだと思うよね?」


「だからあたしがFだって言ってんでしょ?ね、けーくんもそう思うでしょ」


だから意味わかんねーって


こんな時、どっちの味方についても男はロクなことにはならない


こんな時は・・・


「あ、俺ちょっとトイレ行ってくるね」


そう、逃げるが最上の手だ


そうやって俺は、トイレへと一時撤退したのだ


・・・・・・・・・・・・・


「やれやれ、いい加減あの意味不明な言い争いも終わった頃かな」


俺は溜息つきつつトイレから戻るのだが・・・



「だから!Fが攻めでAが受けに決まってんでしょ!?これがガチなカップリングだってば!」


「はあ!?バッカじゃないの?Fは受けだっての!Aが俺様攻めだってこと知らないの?」


「Aが俺様攻め?バカバカしい!Aはヘタレ受けがガチでしょ?てゆーか総受け?赤●とか石●森なんかにも流されるままにカラダを許す展開が鉄板よね」


なんだ!?この魔空間は?


俺が数分、席を外してる内になんでこんな事になってんだ?


「AのAはFにFして貰うためのモノだっつってんの!」


「ハッ!FのAこそAにFされる為のモンだってーの!!そう思うでしょ?弟クン!?」


「けーくん!けーくんはAのAこそ総受けF用のAだと思うよね!」


ぐあああああああああああ!!やめろおおおおおおおお!!



・・・思い出したら目眩がしてきた・・・



取り敢えず姉さんにメール打っとくか・・・


いや、文面を考えるのが疲れる。電話にしよう・・・


姉さん・・・ちゃんとケータイ使えるとこにいるんだろうな?


(つづく)



【あとがき】

皆様、あけおめことよろでございます


新年早々オ●ニーとか書いてすみませんでした


でも、サツキの予想は事実に限り無く近かったりそうでなかったり…


まあそれは置いといて新年初投稿でございます


まさか連載中二回目の新年を迎えるとは開始時には考えもしなかった事です


これもひとえに読んで下さる読者の方々のお陰です

これからもよろしくお願いいたします


なんとお気に入り件数もとうとう200になりました

ありがとうございますありがとうございますありがとうございます


土下座して額を地面に擦りつけても足りないくらいです


年が変わるこの機会に小説のタイトルをもっとベタでキャッチーなものに変更しようとか思ってたんですが・・・思い付きませんでした


またしばらくはプロミステイクのままでいきます


何かいいタイトルないですかね?


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