第58話 Oh Me My #2
一人取り残された園崎の部屋
ドアを背に目をつむる
―――まずは落ち着け、俺
ゆっくりと呼吸と心拍数を正常値に戻す
・・・静かだ
物音一つない室内に微かにエアコンの音だけが響く
よし、大丈夫だ・・・平常心を取り戻したぞ
ゆっくりと目を開けた俺は・・・途端に意志がぐらつく
この部屋は魅惑的なモノが多すぎる!
左にはさっきまで園崎がその身を横たえていたベッド・・・
残り香はもちろん、いまならその温もりすら残っているだろう
右側にあるチェスト・・・
俺の記憶が正しければ一番下の引き出しに下着が入っているらしい(本人からの申告)
それだけじゃない
きっとその他にも探せば様々なお宝が・・・
いわばここは神秘の宝物庫・・・
いかん・・・、俺の中に眠るトレジャーハンターとしての血が目覚めようとしている
以前のときはお茶の用意だったから時間的に短かったが、今回は風呂だ
色々と探索する時間は十分にあるだろう・・・
いや、ダメだダメだ
男として・・・いや、人としてそれは最低な行為だ
・・・少し頭を冷やそう
さっきから頭が重い感じがするせいか、正常な判断が出来てない
なんとなく喉の渇きもある
思えば園崎の家に来るまで、暑いなか歩いてきて何も飲んでない
熱中症までいかないにしろ軽く脱水っぽくなってるのかもしれない
少し水を貰おう
そう思い俺は園崎の部屋を出て階段を下りた
以前リビングに通されたことがあるから、その奥にキッチンがあることは知っている
勝手に動き回るのは良くないとは思うが、水を飲むくらいは勘弁してもらおう
一階に降りて廊下を歩く
手前にリビングに通じるドア、それを越えてキッチンへと思しきドアの前に立つ
ドアノブに手をかけた時、背後から微かに水が跳ねる音が聞こえた
この音って・・・
振り向いて・・・心臓が跳ねた
そこに見えた引き戸
これはたぶん・・・いや、間違いなく・・・
バスルームへの扉だ
再び鼓動が激しくなる
あの扉の向こうで・・・
いま園崎は一糸纏わぬ、生まれたままの姿に・・・
ごきゅり
思わず喉が鳴った
「・・・・・・。」
夢にまでみた桃源郷への入り口がそこにある
その事実に、男子としてフロンティアスピリットの昂ぶりを禁じ得ない
って、何考えてんだ俺
ダメだダメだ!
覗きなんてそれこそ最低の行為じゃないか
もし見つかったら間違いなく俺達の関係にヒビが入るだろう
俺は自らの中に生まれた危険過ぎる好奇心の疼きを必死に宥め、踵を返す
欲望を断ち切るようにキッチンのドアを開けその中に入った
シンクの前に立ち、水道口から流れる水を手ですくってがぶ飲みする
その後、勢いのまま顔にバシャバシャとかけた
「・・・・・ふう」
水温はさほど冷たいものではなかったが気を落ち着かせるには十分な効果があった
喉の渇きも癒えると同時に重く感じていた頭もだいぶスッキリしていく
俺はハンカチで濡れた顔を拭いキッチンをあとにした
再び廊下へと出ると目の前にあるバスルームの扉に一瞬意識を奪われるが・・・そのまま足早に歩き、駆け上がるように二階へと上がった
よし、これでいい
目先の欲望に目が眩んだばかりに全てを失う、なんてことはざらにある
園崎のハダカが見たいのは山々だが俺の望みはそれが最終目標ではない
「ふっ・・・、明日の勝利の為、今は退くが上策・・・・・」
苦渋の選択を強いられる軍師のような気分だ
「・・・・・・・。」
ん?
今ちょっと中二っぽかったか?
・・・まあいい
二階へと上がった俺は再び園崎の部屋に入る
相変わらずの魅惑空間だが・・・さっきよりは冷静に物を考えられる
そもそも何もしないでじっとしてるから色々な物に目が行くんだ
何か別の事をして気を紛らせれば余計な事も考えなくなる
よし、園崎もマンガでも適当に読んでてって言ってたし、そうするか
俺はそう考えて部屋の中を見回す
先程枕元にあった本やゲーム機はきれいに片付けられていた
本棚に目を移すが整然と並べられたそこからわざわざ取るのもなんだしな・・・
そう思ったときテーブル脇に積まれた雑誌の山が目についた
このへんでも読んでるか
俺は床に腰を下ろすと、その山の上から一冊取ってページをめくった
「うぐ・・・これは・・・」
そのマンガ雑誌は・・・
美麗な男子二人が絡み合うシーンが大部分を占める、少々特殊なマンガ雑誌だった
姉さんやその友人達のおかげで多少の免疫があるとはいえ、好んで読みたいものでもない
パラ見して次のを取る
「フッ・・・これもか」
だけど比較的こっちの方が内容的にソフトかな?
そんなことを思いながらページをめくる
ん?この絵柄は・・・・
不意にそこで指が止まる
やっぱり・・・
ページを戻ってトビラの作者名を見た俺は自分の記憶が正しかったことを確認した
ハルノヒウララ
姉さんと一緒に同人誌活動をしていたカスガさんのペンネームだ
凄いな
プロになるのが目標って言ってたけどちゃんとデビュー出来たんだ
俺の心の中にある記憶の箱の蓋が開き、懐かしい記憶が蘇り始・・・・・
・・・・・・・。
くっ・・・、思い出したくもない事まで思い出しちまった・・・
俺は開きかけていた記憶の箱の蓋をそっと閉めた
そういえばカスガさんと姉さん、あの時ケンカ別れみたいになったけど、あとでちゃんと仲直りしたんだろうか?
俺からすればケンカの発端なんてくだらない理由だったけど・・・酔ってたとはいえ、あの二人お互いに退かないんだもんな
まあ俺が気にかけてもしょうがないか・・・
俺はそれ以上の感慨を巡らすのを中断するとともにその雑誌を閉じた
次の雑誌を手に取り、開く
お、これはちゃんとした男女のラブコメ物か?
セーラー服を着た美少女とちょっと不良っぽい男子生徒がメインキャラ
学園ドタバタ物って感じのマンガだな
・・・・・・・・。
ふむ、割とありがちなストーリーだけど結構面白い・・・
・・・・・・・・・・。
お。ちょっとHな展開になってきた・・・
・・・・ん?
・・・なんでこの娘、ショーツの前が膨らんでるの?
ゴフッ!?
こ、これはいわゆる男の娘ってやつか?
やっぱりホモネタかよ!?
油断してた!
俺はこのネタへの耐性は無い・・・
くっ・・・これは想定してなかったから精神にモロにダメージが・・・
MPをごっそり持っていかれちまったぜ・・・
俺は震える手でその雑誌を閉じた
はあはあ・・・、とんでもないトラップに引っ掛かっちまった
この部屋にマトモな雑誌は無いのか・・・
ん?これって・・・
雑誌の山の・・・下の方
少し意外ともいえるものが出てきた
これって・・・ティーンズ誌、だよな?
それは俺でも知ってるくらいメジャーな女性ティーンズ雑誌だった
うちのコンビニでも売ってるし棚に並べたこともあるから間違いない
いや、普通の女子高生なら持ってても不思議じゃないんだけど・・・園崎が、ってのが意外だった
園崎なら『ハン、低俗なリア充雑誌だ・・・くだらん』
なんて言って鼻で笑いそうな気がするけど
前に何回か来たときはこんなのは見かけなかった
園崎も普通の女の子っぽい事に目覚めてきたってことなのか?
そういえばこの前、二人で映画を見に行ったときは、かなりオシャレな格好だったな
そのあと食事の時も街をぶらついた時も、男共からの視線の集め方がハンパなかった
もし中二病が治ったら、園崎ほどの美少女ならオトコなんて選り取り見取りなんだろうな
実際、園崎姉はそんな雰囲気だった
園崎が普通になるのは望ましい事のはずなのに・・・なんか複雑な気分だ
・・・・・・・・・。
なになに・・・
タイプ別モテコーデ特集・・・
彼氏と出かける夏休みデートスポット特集・・・
パラパラとページをめくって見るがすぐに目が回ってきた
なんでこのテの雑誌って細かい文字と写真でびっちりなんだ?
女ってこれ全部読んでるのか?
男には解らない読み方のコツでもあるんだろうか・・・
ところどころページの端が折ってあるのは後から読み返す為のものだろう
園崎がどんなページに興味を持ってるのか気にはなるが・・・のぞき見してるみたいで気が引けるし、後ろめたくもある
チラ見で読み飛ばしつつページを繰る
!?
刺激的な文字が目に飛び込んできて思わず指が止まる
・・・・・初・・H・・・?
ページを戻るとそれは読者アンケートのコーナーだった
『読者100人に聞いた彼との初H』
ああ・・・お、男の雑誌にもこうゆうのあるよな
だ、だいたいこんなのホントにアンケートしてんのか?
編集部で適当に書いてんじゃないのか?
・・・・・。
・・・・・・・・・・・。
ふむふむ・・・・・
『あなたはH経験ある?
・H経験あり 65%
・H経験なし 35%』
・・・たぶんこの雑誌の購読層は10代半ばから20代半ばくらいまでなんだろうから、その約7割は経験してるってことか・・・・
これは多いのか少ないのか・・・そもそもこの雑誌はリア充御用達みたいなもんだし、この結果を世間一般になぞらえていいものか・・・
『経験のある人へ:初Hはいつ頃だった?
・18~19才の頃 21%
・15~16才(高校1・2年)の頃 19%
・20歳以上 16%
・中学の頃 10%』
高校卒業あたりの年齢を中心にその前後に分布してる感じか・・・
数%『小学生の時』ってのがいるけど・・・早熟過ぎないか!?
相手も同い年・・・とはちょっと考えにくいし、軽く犯罪の匂いがするな・・・
『経験のある人へ:初めてのH、どんな感じだった?
・痛かったけど、少し気持ちよかった 15%
・痛かったし、気持ちよくもなかった 68%
・すごく痛くて、すごくツラかった 7%
・・・・・・』
・・・やっぱ初めては痛いってのは本当なんだな
『全然痛くなかった。すごく気持ちよかった』ってのが数%いるけど、それはごく稀なことみたいだ
そりゃそうか。血が出たりするんだもんな
ただ気持ちいいだけの男と違って女の子は可哀相だよな・・・
俺がするときは、せめて少しでも痛くないように・・・ちょっとでも気持ちよく感じて貰えるように、出来る限り優しくしよう
『経験のない人へ:初Hの相手で理想的なのは?
・Hが上手な人 15%
・好きな人なら、Hが下手でもいい 13%
・処女とのHが初めてじゃない人 12%
・あまりH経験が多すぎない人 12%
・初H同士 10%
・経験豊富で、Hに慣れてる人 10%
・・・・・・・・・・』
・・・これは複雑だよな
初めては不安だから経験豊富な相手の方が安心だろうけど・・・
でも、経験豊富ってことは自分以外の相手といっぱいしてたってことだからな・・・
『経験ある人へ:初Hの場所はどこだった?
・相手の部屋 56%
・ラブホテル 13%
・自分の部屋 10%
・・・・・・・』
やっぱ男の部屋ってのが一番多いか
ってことは家族が留守の時を見計らわないとな・・・
アパートなんかで一人暮らしなら大丈夫だろうけど
『経験なしの人へ:初Hする前の不安は、どんなこと
・痛そう 45%
・恥ずかしい 22%
・怖い 17%
初Hのときには、どんな風にして欲しい?
・優しくしてほしい 65%
・部屋を暗くしてほしい 22%
・少しでも気持ちよくしてほしい 12%
・ロマンチックな雰囲気・・・・』
・・・言葉は違うけど、どれも不安が和らぐようにしてほしいってことだろうな
その後は
『初H前にやっておくべきことは?
ムダ毛の処理・ダイエット・勝負下着の用意etc・・・』
なんてナマナマしい項目が続いてて、あまり読み込むと男の幻想が崩れそうなので止めにしといた
要約すると
『初めての女の子は不安でいっぱいだから、なるべく優しくして痛くないように・・・できれば気持ちよくさせるように心掛ける』
ってことだな
もし、うまいことそんな展開になったとして・・・その時に俺、ちゃんと出来るかな
我を忘れて自分が気持ちよくなることだけに夢中になってたりしたら最低だよな・・・
経験の無い俺に出来ることは・・・・・よし!
これからはその時に備えて今まで以上に気合いを入れて『イメトレ』に励むことにしよう
俺はそう固く心に誓った
「経吾」
その時、不意にドアの向こうから園崎の声がした
「そ、園崎?」
雑誌から顔を上げ、ドアに向かって確認の声を返す
「経吾。僕、いま両手塞がってて・・・ごめん、ドア開けてくれるか?」
「あ、ああ。わかった。ちょっと待ってくれ」
ドア越しにかけられた園崎の説明に、俺はそう返事をして立ち上がった
ドアへと歩きだそうとして・・・広げたままの雑誌に目が留まる
別に後ろめたいことをしてた訳じゃないんだが・・・急いで閉じて、もとあった雑誌の山の・・・下の方へと突っ込んだ
ドアを開けると園崎がグラスを乗せたお盆を持って立っていた
グラスの中ではサイダーと思われる液体が炭酸の泡を弾けさせている
園崎の姿に目を向けると、その身につけているのは綿素材と思われる、ゆったりとしたワンピース
部屋着っぽいシンプルなデザインのものだった
「待たせたな、経吾。遅くなってすまない」
部屋に入りながら園崎はそう言って、申し訳なさそうに眉を寄せ苦笑した
目の前を通り過ぎる瞬間、ほのかにボディソープの香りが鼻腔をくすぐり、条件反射のように性の欲求が昂ぶる
「いや、大丈夫だ。そのへんの雑誌、ちょっと読んでたから」
俺は自分の中に沸き立つものを気取られないように、努めて平静を装う
「そうか、・・・経吾もなんだかんだ言って男同士がくんずほぐれつするマンガが・・・」
「違うから。別に好きじゃないから」
俺は園崎のセリフを遮って不名誉な疑いを否定した
・・・おかげで沸き立った情欲が一時的に治まった
「経吾、親友である僕には隠す事なんて無いんだぞ」
そんなことを言いながら、しゃがんでテーブルにグラスを並べる園崎
「いや、ホント違うから。頼むから『自分が一番の理解者』みたいな眼差しで見るのはやめてくれ」
俺は溜息をつきつつ、園崎にならってテーブルの向かいに腰を下ろした
「ふむ・・・、確かに僕は常に経吾の一番の理解者たらんとしているつもりなのだが・・・まだまだ心の全てを開いてはくれない、ということか・・・」
そんなセリフとともにフッとニヒルに笑う園崎に、俺はげんなりとした視線を送るしかなかった
「それはそれとして・・・具合はどうなんだ?寝てなくて大丈夫か?」
俺は自らにかけられたホモ疑惑の完全否定を諦め、話題を変える
「うん、すっかり良くなったよ。風呂に入る前に熱を計ったけど平熱だった。・・・心配かけてすまない」
「気にするなよ。俺達は『親友』・・・なんだろ?それにしても・・・水臭いじゃないか、風邪ひいたの黙ってるなんて」
ちょっと責めるように言うと園崎は申し訳なさそうに眉を寄せた
「ゴメン、そういう訳じゃ、なかったんだけど・・・」
「俺に何か出来る訳じゃないけど、言ってくれればもっと早く見舞いに来れたし、それに・・・」
そこで一度言葉を切る
これを言うのは結構恥ずかしいが・・・正直な気持ちを告げることにする
「あんな事があった後だから・・・その、えっと・・・き、嫌われて・・・避けられてるんじゃないかって、本気で、心配した」
「あんな事?・・・・・・・あっ!」
園崎は俺のセリフに一瞬疑問符を浮かべた後、すぐに『あんな事』に思いが至ったらしく瞬時に顔を紅潮させた
念のため言っておくが、『あんな事』とはサツキの部屋でおこなったポーズモデルの事だ
「そ、それこそいらぬ心配だ!あ、あれくらいの事じゃ僕達の友情には何一つ影響などない!あの程度の事、僕達の関係には全く響くことなど有り得ない!あんな事くらいで経吾を嫌うなんて!・・・いや・・・むしろ・・・・もっと・・・…きに・・・なった・・・てゆーか・・・」
園崎は勢い込んだ声で訴え始め・・・しかし、最後の頃は小さくなり口の中でモゴモゴと言うだけになった
「そ、そうか。あ、あのくらいの事、か・・・あの程度じゃ・・・響かない、か」
『あの程度』なんて全力で言われ、俺は自分が自意識過剰だった事を思い知らされる
・・・あの程度の事じゃ俺を異性として意識するほどじゃ無かったって事か・・・
俺なんてその『あの程度の事』をネタに何回も・・・ゴホゴホ・・なんでもない
とにかく俺にとってあの事は園崎の存在をさらに深く心の中に刻み付ける出来事だったんだが・・・
「そ、それにあれはサツキの指示で・・・け、経吾が悪い訳じゃない。経吾が気に病むことは、ない」
園崎は赤い顔のまま、憤慨したようにそう言った
「そ、そうか?・・・そ、それにしてもサツキにも困ったもんだよな。園崎もいつも結構からかわれたりしてるんだろ?アイツ、面白がって話してたぞ。『からかいがいがある』、とか言って」
「あ、ああ・・・、悪いヤツじゃないし何だかんだ言って面倒見もいいんだが・・・時たまタチの悪い冗談が過ぎるんだ、サツキは」
鼻息荒くそう言いながら園崎がグラスのサイダーをあおる
「そういえば・・・なんかとんでもないモノ送りつけられた事もあったんだろ?」
「ブフォッ!?」
ふと思い出した事を何気なく言ったつもりだった俺のセリフに、園崎が盛大に吹いた
しまった・・・、『こんな事話したのがバレたら殺される』・・・なんてサツキも言ってたし、園崎にとって誰にも知られたくないようなエピソードだったのか?
「経吾!?それ、聞いたの!?」
「え?いや、その・・・」
物凄い剣幕で詰め寄ってくる園崎に俺は咄嗟に声も出ない
「コ、コロス・・・・サツキの奴、後で絶対にコロス・・・あ、あああああああああああああのオンナ!!言っていい事と悪い事の区別もつかないのっ!?」
顔を真っ赤にして目尻に涙を僅かに滲ませ、肩を震わす園崎に俺は少々面食らう
ここまで取り乱すなんて一体サツキの奴なにを送りつけたんだ?
「あ、あのっ・・・けーご。ち、違うの!あたしは・・・サツキに騙されたの!!」
黙ったままの俺をどう思ったのか園崎はそう言いながら詰め寄ってきた
「う、わっ・・・園崎!?」
園崎の勢いに俺はバランスを崩し、後ろ手に左手を床についた
その俺の両足の間に園崎が両手をついた四つん這いの格好で迫ってくる
「!」
そんな体勢になった園崎の衿元は大きく開いて・・・その中が奥の方まで見えてしまっていた
「サ、サツキの奴、『みんな言わないだけで女の子なら誰でも持ってるし使ってるんだヨ』・・・とか言って・・・。む、昔のあたし・・・そ、それ信じちゃって・・・」
「あ、ああ・・・」
園崎のセリフに俺は生返事を返す
今の俺は衿元から見える二つの大きな膨らみと、それを包み隠す布地に意識の大部分を奪われていた
「でも、ちょっと、興味は、あったし・・・せ、せっかく貰ったものだし・・・す、捨てる前に・・・い、一回くらい、つ、使ってみよかな、なんて、思っちゃって・・・」
「う、うん・・・・」
園崎の声は耳に入るものの・・・脳はその知覚の大部分を視覚に振り分けている為、頭に入ってこない
この状態で・・・下から両手ですくい上げるように揉みしだくことが出来たら・・・どんな感触を味わえるんだろうか・・・
「そ、そしたら、けっこ、すごくて・・・と、とまんなくなっちゃって・・・」
「あ、ああ・・・・」
園崎のただでさえ豊満な二つの果実が地球の重力によりすごいことに・・・ああ、重力ってなんて素晴らしいんだ
「でも、つ、つかったっていっても、あ、あてるだけで、い、いいい、挿れたりした、ことは・・・ない、から」
「そ、そっか・・・」
園崎が身を揺するたび二つのそれは、たゆんたゆんと我が儘に揺れ動く・・・
重力・・・なんていい仕事しやがる・・・
聞けば地球に生命が誕生するのにも重力の絶妙なバランスが大きな役割を果たしたと聞く・・・
重力・・・偉大過ぎる
「そ、そのあとも・・・つ、ついつい・・・で、でも、いつもつかってるわけじゃ、なくて・・・たまに・・・ほんと、たまにしか、つかってないから!」
「うん・・・・・・おおっ!」
両の二の腕による圧迫で絞られて・・・布地の中から今にもこぼれ落ちそうだ!
「けーご。こ、こんなあたしのこと・・・へ、変態って、思う?・・・け、軽蔑したり、する?」
「え?・・・・・・わっ!?」
目の前わずか数センチの距離に園崎の顔が迫っていた
「けーご、どう思ってる?正直に、言って?」
「あ、ハイ・・・非常に素晴らいボリュームです。またそれを引き立てるブルーのチェック柄が夏らしくて爽やかでいいと思います」
「?・・・・・けーご?」
かみ合ってない俺の返事の言葉に園崎がわずかに頭を傾げる
ヤバい
立体芸術品の観賞に夢中で話を全然聞いて無かった
な、なんの話だっけ・・・
あ、そうだ
サツキからイタズラで何かヘンなもの送りつけられた事があって、その顛末が園崎にとっては知られたくないような事だった・・・って話だったよな
「そ、園崎。俺も別に詳しく聞いた訳じゃないんだ。ただサツキの奴がイタズラでなにかとんでもない物を送りつけて園崎をからかった事があったって程度で・・・それが何かとかは、聞いてない」
「へ?・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ、そ、そなんだ?あ、あは、そっか・・・そだったんだ、あたしてっきり・・・・あ、あは、あはは・・・・・」
園崎は真っ赤な顔になって、狼狽え取り乱した恥ずかしさを誤魔化すように笑った
結局サツキのイタズラとはどんなものだったんだろう・・・
気にはなったが、知られたくなくて隠してる事をわざわざほじくり返すのは悪趣味だよな
・・・忘れることにしよう
それにしてもさっきはヤバかった
思い切りじっくりと園崎の胸元をガン見しちまってた
園崎、取り乱してたせいで気付かなかったけど・・・もし見つかってたら軽蔑されてたよな
スケベ心に支配されると状況が見えなくなっちまうのは俺の悪い癖だ
気を付けなきゃな・・・
(つづく)
【あとがき】
いつもお読み頂きありがとうございます
毎回更新が遅れ気味ですみません
何とか年内の更新が出来ましたが、次回はたぶん年明けになりそうです
お気に入り登録数190を超えました
飽きっぽい自分が何とか書き続けてられるのは、ひとえに読んでくれている人たちがいるからです
ありがとうございます
世間ではすっかりクリスマスシーズンですが話中では夏休み真っ最中です
果たしてクリスマスの話を書けるのはいつになることやら・・・
どうかこれからも気長にお付き合いください
ということでおまけです
【おまけ小説】去年のクリスマスの二人
「やっほー、ゆずっち。メリークリ●●ス」
「が!?・・・な、な、な、なにゆってんだサツキ!?」
「え?クリスマスって伏せ字で言っただけだけド?何を想像したノ、ゆずっち?」
「うぐ・・・」
「ねーねー、何を想像したノゆずっち。教えてヨゆずっち。ねえってバ」
「う、う、う・・・」
「あ。もしかしテゆずっちが毎晩いぢってるアノ部分のコト?やーらしー」
「なっ!?・・・ま、ま、ま、毎晩なんて弄ってないし!」
「あー、いぢってることは認めるんダ?わー、ゆずっちヘンタイ」
「!?」
「僕があげた『アレ』も結局捨ててないんだロ?ホントつくづく淫乱でド変態だよネ、ゆずっちハ」
「淫・・・!?・・・く、う・・・ぐぁあーーーー!!!!」
「痛たたタ。・・・あははゴメンゴメン、そんな泣くほどのコトかイ?・・・ま、からかうのはこの程度にしといたげるヨ。ほら、ケーキも買ってきたヨ。女二人の寂しいクリスマスパーティー開始ダ」
「フン・・・僕は別に彼氏なんか欲しくないし」
「でもチ●ポは欲しいんだろ?ゆずっち」
「ゴフッ!?・・・コロス!やっぱコロス!サツキ!!」
「アハハハハハ。ほらほら、ゆずっち。聖夜に物騒なこと叫ぶんじゃないヨ」
「って、誰のせいよぉおおおおお!!!!!!」
「ほらほラ、冷めないうちに料理を食べようヨ。・・・もぐもぐ・・・うん、こノゆずっちが焼いたチキンは絶品だネ。ハーブとスパイスのバランスが絶妙だヨ」
「う・・・ま、まあ、それは結構自信作、だけどな」
「やーホント、ゆずっちの作る料理はどれもこれも最高だよネ。僕が男だったら嫁に欲しいくらいだよ。入籍は御免だけド」
「・・・・・・最低なセリフだな・・・サツキが男じゃなくて本当によかったよ」
・・・・・そんなこんなでイブの夜は更けていく。
◆ ◆ ◆ ◆
【お知らせ】
この話は基本、主人公視点の物語という体裁上、主人公の見ていない、聞いていない情報は書かないようにしています。
その為、分かりづらかったり説明不足の部分があると思います。
(他にも作者の文章力不足とか・・・)
そういったものを補う意味でブログ的なものなどをつくってみました。
よろしかったら覗いてやってください。
その際、若干ネタバレ的な要素も含まれるかもしれませんのでご注意ください。
URL http://ch.nicovideo.jp/atunuma




