第54話 Preparation Twister part 4
「んー、ゆずっち。なかなか色っぽい顔するじゃないカ。じゃ、スケッチするからしばらくそのまま動かないでいてくれヨ」
サツキはそう言うとスケッチブックに鉛筆を走らせ始める
俺は園崎を壁に押し付け、口に親指を挿し入れた体勢のまま身体の動きを止めた
視覚が捉える現実感の無い状況に、まるで夢の中にいるような錯覚を覚える
しかし指先の触覚が現実であることを鮮烈に伝えてくる
親指を包み込む、あったかくてヌルヌルした粘膜の感触
人差し指に感じる、耳たぶのふにふに感
園崎は健気に俺の親指を咥えたまま、じっと動きを止めていた
そんな従順な園崎の姿を見ている内に・・・俺の心の中に嗜虐的な欲望が沸き起こってくる
園崎の可愛いらしい顔が不自然に歪み、台無しになっている
大好きな女の子をそんな目に合わせているのは・・・他ならぬ俺自身の指だ
無理に挿し入れた俺の親指が、園崎の可憐な唇をいびつな形に歪めている
心中に満ちる罪悪感と・・・甘美な愉悦感
ああ・・・、好きな子をいじめて愉しいとか・・・俺は小学生かよ
そんなサディスティックでひねくれた恋愛感情
好きな子に意地悪をする・・・っていうのは、最も幼稚で拙い愛情表現なんだろう
ゴメンな園崎
俺、ちょっと我慢できない
頬に当てた手の・・・その中指を浮かす
少し移動して・・・
耳たぶの中心・・・耳の穴の入り口付近に・・・軽く触れる
「?」
園崎が『・・・なに?』と問い掛けるように、困惑の混じった瞳で俺を見てくる
ああ・・・ホント嗜虐そそるよな、その表情・・・
心配するなって
少し悪戯するだけだから
「んっ!?・・・んぅ!」
その瞬間、園崎が鼻にかかった可愛いらしい小さな呻きを漏らした
やっぱり耳は・・・かなり感度良いみたいだな
指先で耳の穴の周りをちょっとくすぐっただけなのに・・・
そのまま中指で耳の表面をくすぐるように撫でながら、薬指で耳たぶを弄ぶ
と同時に小指で顎もくすぐった
なんとなく・・・子猫を玩ぶような感覚
「ふあ!?・・・あっ・・・らめ!?・・・・・・・んあっ!」
堪えきれなくなったのか、園崎が悲鳴にも似た甘い声を漏らした
「ん?ゆずっち、どうかしタ?」
スケッチブックから顔を上げ、サツキがそう聞いてきた
「ん、んーん。・・・ら、らんれもらい」
俺の指を咥えたまま、園崎がサツキにそう言ってあわてて誤魔化す
「そウ?・・・悪いけど描き終わるまで、なるべくじっとしててネ」
サツキはそう言うと再びスケッチに意識の集中を戻す
ヤバい・・・ちょっとやり過ぎたかな?
あんなに大きな声を上げるとは思わなかった
う・・・、園崎が軽く睨んできた
園崎、怒ってる?
!?
咥えられた親指の根元
園崎の歯が・・・軽く当たる感触がした
か、噛みつかれる!?
思わず背中に冷や汗が流れる
俺が身を竦ませると、それを見て取った園崎の目元がふっと緩んだ
睨むようだった目が、悪戯っぽい微笑みに変わる
そして・・・親指の側面に園崎の舌が張り付く感触がした
指全体に柔らかくてヌルヌルした粘膜が密着し、包み込まれるような感覚
えもいわれぬ密着感の中・・・ゆっくりとその舌が前後に動き出した
う・・・・・わ・・・!?
快感が指先から腕を駆け上がってきて、俺は思わず声を漏らしそうになった
俺の反応に園崎の目が満足げに緩む
その目が『仕返しだよ』と言っているように見えた
俺は園崎の舌の動きに成す術もなく、ただ身を固くしているしかなかった
優しく・・・丁寧なその動きに指の神経が蕩けそうになる
もしこれが指じゃなくて『アレ』だったらと思うと・・・・どれ程の快感なのか想像もつかない
きっと俺は一分と保たず果ててしまうだろう
もう完全に立場が逆転していた
身体を壁に押し付け拘束し、その口に指を押し込んでる状態の俺が・・・そうしてる相手の園崎に主導権を取って代わられていた
どこか恍惚とした表情の園崎は、なおも俺の指に舌を這わせてくる
ゆっくりと・・・丁寧な・・・舌全体でくすぐるような優しい動き
それがしばらく続いた後、その前後運動が止まると・・・今度は密着させた状態のまま、舌先だけを動かして指の根元の方をくすぐってくる
えーと・・・俺は確か園崎に快感を与えて、俺って存在をその身体に覚え込ませようと目論んでたんじゃなかったっけ・・・
これじゃ思惑とまるっきり逆じゃないか・・・・
でも・・・・もうそんなこと・・・どうでもいい・・・
今はこの甘美な感触・・・園崎の口腔内の快感を愉しむのが最優先だ・・・・
俺は全神経を右手の親指一本に集中して、その蕩けるような粘膜の感触に溺れ陶酔していく
結局また俺は・・・園崎という存在を俺の中に強烈に刻み付けられることになった
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ご、ごめんな園崎。・・・苦しかったろ?」
やっとサツキからOKの言葉が出て、俺は急いで園崎の口から指を引き抜き、謝った
「んーん、らいりょーう・・・」
園崎はのぼせたような赤い顔のまま、ろれつの回らない口でそう言った
指を差し入れた不自然な状態が長引いたせいで、舌の動きがおかしいのだろう
「んっんっ・・・・あらひ・・・あたひこそ・・・ごめんね。けーごの指、ベトベトになっちゃった・・・」
そう言われ見ると、俺の指は園崎の唾液で濡れ・・・それが手首にまで伝っていた
微かに漂うその匂いに・・・劣情が込み上げ下半身に血液が集中してくる
女の子のヨダレの匂いって・・・こんなにエロい匂いなんだな・・・
「使うかイ?」
サツキがそう言いながらティッシュの箱を園崎に手渡してきた
「い、いま綺麗にするね、けーご」
そう言うと園崎は箱から数枚のティッシュを引き抜き、俺の手を取り指を拭き始めた
「・・・・あ、もったいな・・・」
「え?」
「な、なんでもないなんでもないなんでもない!」
思わず漏れた俺の言葉に、園崎が不思議そうに小首を傾げる
「そ、園崎の方こそ・・・顎まで伝ってる」
園崎の口の端から涎が一筋・・・顎まで伝い流れていた
口を半開きにしたその表情と相まって・・・エロ本なんかに載ってる顔みたいになってて卑猥さがハンパない
「ちょっと、じっとしてて園崎」
俺は平静を装いつつ、震える指先で園崎の顎についた唾液をティッシュで拭ってやった
「あ、ありがとうございます。ますたぁ・・・」
園崎が恍惚とした表情でそんなセリフを口にした
ま、また変なスイッチ入ったのか!?
「ん?・・・ゆずっち。いまなんてったノ?」
「はわっ!?なんでもないなんでもないなんでもない!!」
サツキの漏らした疑問の声に、我に返った園崎が慌てて誤魔化す
・・・・・・・。
俺は二人のそんなやり取りを横目に、僅かな逡巡の後・・・手にしたそれをズボンのポケットへと入れた
「けーご」
「うわっ!・・・・・・な、何?」
園崎の突然の呼びかけに俺は思わずびくりと身を震わせた
バクバク鳴る心臓を抑え、ポケットから手を抜きつつ振り向く
「少し休憩してから別のポーズだって・・・大丈夫?」
「あ、ああ」
「キヒヒ、いまのキミ達は意思を持たないポーズ人形ダ、僕の言う通りに動いてもらうヨ」
サツキが悪魔的な笑い顔でそう言った
「お前な・・・あんまり調子に乗るなよな。さっきみたいな横暴・・・」
そんなサツキに俺は釘を刺すつもりで軽く睨み、そう言いかける
「僕に言われても困るナ。脚本がそうなってるんでネ。文句があるなら脚本書いた人間に言って欲しいネ」
サツキは肩を竦めながら意地悪くそう言った
視線は思わせぶりに園崎の方に向いていたが園崎はそれには答えず、赤面してそっぽを向いている
この反応を見る限り、やっぱり園崎が書いた脚本を元にしてるみたいだな
しかし、園崎もまさかこんな事になるとは思ってなかったんだろうし、そんな脚本を書いた事を俺に知られたくもないんだろう
ここは俺も気付いてないふりをしたほうがいいよな・・・
「キヒヒヒ、じゃあそろそろ次のシーンいくヨ」
サツキの言葉に園崎の肩が僅かに跳ねた
あ、そうか
自分で書いた物なら次の展開もわかってるんだな
「じゃあ次はケイトがユウキに無理矢理チ●ポしゃぶらせるシーンネー」
「おいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!」
サツキの軽いノリでのとんでもないセリフに俺は渾身のツッコミを入れる
まあ、そういうシーンもあるだろうとは想像してはいたが、もうちょっと言い方ってもんがあるだろう
「お前はなんでそう生々しいんだよ!?少しは恥じらいってモンをだな・・・!」
「ハン、ウブなネンネじゃあるまいシ・・・やれやれ、これだから童貞ハ・・・」
俺の至極真っ当な主張に対しサツキが理不尽過ぎる誹謗中傷で返してくる
「うぐ・・・童貞童貞ってしつこいぞ。だ、だいたいお前こそどうなんだよ!?さぞかし経験豊富なんだろうな?」
俺は頬を引き攣らせながらサツキにそう言ってやった
「フフン、そんなに僕のただれた性生活の話が聞きたいのカ?」
「・・・・・な、に?」
こいつまさか・・・経験あるのか?
「・・・僕の精神的なロストバージンは13歳の時ダ」
「じゅ、じゅうさ・・・・!?」
こいつ・・・・なんて早熟な・・・・・・・
ん?
精神的な?
「忘れもしない13歳の夏の日の夜・・・僕はその時大好きだったアニメのキャラに無理矢理レイプされタ」
「・・・・・・・・・・・・・は?」
アニメキャラ?
「そウ・・・・淫夢を操る夢魔、インキュバスの仕業ダ・・・その日から僕は毎晩のように夢の中で夢魔にカラダを汚されることとなっタ」
・・・・えっと。それって妄想じゃ・・・
淡々と淫らな与太話を話し続けるサツキに、俺はどうツッコめばいいか悩んだ
「乙女ゲーをフルコンプした日の夜なド・・・攻略対象キャラ13人に輪姦されタ・・・」
「もういい・・・わかった。・・・・頼むからもう何も言わないでくれ・・・」
こいつに真面目な話を期待するだけ無駄だ
諦観した俺は力無くそう言うしかできなかった
「キヒヒ、わかったようだネ。じゃあさっさと始めてくれヨ・・・・ただポーズするだけなんだしそんな気にすることないだロ?ホントに生チ●ポ出せとまでは言わないよ。・・・・まあ、出して貰えればそれに越したことはないけド」
「あのな・・・」
出来るか、そんなこと
サツキの下品な軽口に言葉もない
園崎もさっきから赤面して俯いてしまっている
「あ、それじゃせっかくだからホントにしゃぶって貰えバ?ゆずっち、前に自分の指で練習したことあるって言ってたじゃないカ。この機会に本物で・・・・・うわぅ!?・・・・ゴメンゴメン、悪かっタ。口が過ぎタ。謝るからこの手刀を喉元からどけてくレ」
サツキが冷や汗混じりで引き攣った苦笑いを浮かべる
神速で動いた園崎が顔を耳たぶまで真っ赤にさせたまま、サツキの首筋にまっすぐ伸ばした右の掌を突き付けていた
「おま、おま、お前、サツキ。お、おかしなコト言うなよ。・・・・・殺すよ?」
園崎が震える声でサツキへと警告する
・・・えーと、この動揺ぶりを見るとサツキの言葉はタチの悪い冗談・・・ってわけじゃなくて・・・
俺の右手の親指に残った疼きが・・・それを暗に証明していた
・・・・・・。
「こふン・・・・じゃあ気を取り直しテ・・・・・ゆずっちは『へたりこんだ体勢のユウキ』・・・よっしぃはその前に立って、『ユウキの口に無理矢理チ●ポねじ入れるケイト』」
「で、出来るか!!」
「だからポーズとるだけだっテ」
「ポーズだけって言ってもなあ・・・、てかお前さっきから品の無いセリフ連発すんなよ!女の子だってのに男の前で・・・恥ずかしくないのか!?」
聞いてるこっちが恥ずかしくなってくる
「んー、別ニ?・・・だいたい女同士の時だったらゆずっちだっテ・・・って、ゴメンゴメン。口が滑っタ。謝るからそんな睨まないでくれヨ、ゆずっち」
懲りもせず園崎から鋭い視線を受けるサツキ
「でもサ、こっそり異性のエロ話するのは男どもだって同じだロ?よっしぃだって童貞仲間と『あの女いいケツしてんなあ』とか『あのでけえ胸でパ●ズリしてえなあ』とか『あの女のオ●●コ見てえ!つーかヤリてえ!!』とか喋ってるんだロ?」
「だああああああああああああ!!!!!!お前、もう喋るな!!!」
駄目だ。コイツと話してると精神的な疲弊がハンパない上に女子への幻想が必要以上に打ち砕かれる
「キヒヒ、わかったら準備よろしク」
気力を失い、うな垂れる俺を見てサツキがニンマリ笑う
「はぁ・・・」
諦めたようにひとつ溜息をついた園崎が、俺の前に腰を下ろす
そして足をM字型に、お尻をぺたんと床に付けた体勢になった
・・・マジか?
いや当然、『フリ』なんだけどさ
だけど・・・今日の俺はジーンズだから制服のズボンほど目立たないけど・・・
内側では、さっきからとても困ったことになっているのだ
そんな状態になってるのがバレたら・・・すげえ気まずいぞ
「ほラ、よっしぃはもうちょっとゆずっちに近づいテ・・・その頭を鷲掴み」
サツキがまたサラッと非道な注文をしてくる
「お前な・・・」
「ゆずっちがイヤって言うまで続ける約束だロ?」
俺の言葉を遮り、サツキが中断の為の条件を確認してくる
「けーご・・・・ボクなら・・・平気だから・・・・」
目の前に跪いた園崎が紅潮した頬で俺を見上げ健気にそう言った
その表情に再び嗜虐心が頭をもたげてくる
・・・・ほんと、そそる顔するよな・・・
ごきゅ
生唾とともに躊躇いと罪悪感を飲み込む
俺は左手を伸ばし、その頭へと手の平を乗せた
サラサラとした柔らかくきめ細かい髪の手触り
指の間をくぐる髪の毛の感触が心地好い
軽く指先に力を込める
手のひらから伝わる頭皮からの体温
「ゴメン・・・な、園崎」
口からは謝罪の言葉を発しながら、心の奥底ではどうしようもなく愉悦感が燻る
「んー、二人ともイイ表情してるネ。僕も創作意欲が湧いてくるヨ。・・・ゆずっち、もう少しよっしぃに顔近づけテ」
サツキの指示に、園崎が俺へと触れんばかりに顔を近づけてくる
いや・・・今のは俺がこの腕で園崎を引き寄せたんじゃないのか?
興奮で脳が茹で上がったような感覚に、自分の行動に自信が持てない
「・・・けーごの・・・ここに・・けーごのが・・・・・」
熱に浮かされたように園崎がうわごとのような呟きを漏らす
その熱い吐息がズボンの布ごしに伝わってきて、内側の膨張率が加速度的に上がっていく
上から見下ろすと・・・まるで本当に『園崎に口でされてる』みたいな錯覚を覚えた
脳裏に先刻の親指を這う舌の感触が蘇ってくる
それが目の前の映像と組み合い・・・幻惑的な陶酔感が広がっていった
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「オーケー、もういいヨ。実に満足のいく、いい構図だったヨ」
サツキの言葉に俺は意識を現実へと戻した
「うわっ・・・と、そ、園崎ゴメン。痛くなかったか?」
俺はいつの間にか力を込めて掴んでいた園崎の頭から慌てて手を離した
しかし園崎の方はまだどこか恍惚とした表情で・・・口を半開きにしたまま俺を見上げている
「あー・・・・・・・・ゆずっちも、もうエアチ●ポしゃぶるの止めていいヨ」
「なっ!?・・・・・ななななななななななな何言ってんだサツキ!?」
サツキの下品なセリフに我に返った園崎が真っ赤な顔で吠える
・・・・・・・。
でも・・・さっきちらりと見えた園崎の半開きになった口の奥
その舌が艶めかしく蠢いていたように見えたのは・・・俺の見間違いだったろうか
(つづく)
【あとがき】
いつもお読み頂きありがとうございます
前回より更新が大幅に遅れてしまい申し訳ありません
主な原因は仕事が急に忙しくなったのと睡魔に抗えない自分の弱い意思です
そして先に謝っておきますが、たぶん次回も遅れると思います
10月半ばの連休明けくらいに更新できればいいなあ…
今回の話ですが前回に続きまして〈微エロ〉な内容となっております
アクセス解析ページをみると7時とか12時に読んでる方が多いみたいですが通勤・通学途中や昼休みに、という事でしょうか?
すみませんこんな内容で…
夜間の講読を推奨します
今回のエピソード、当初は1話分でサラっと済ませるつもりだったんですがキリが悪くなったので、申し訳ありませんが次回も引き続き〈微エロ〉です
でも、『本番』はもちろん、脱いでもいませんしR15タグ無しでもセーフですよね?




