第53話 Preparation Twister part 3
「か、か、か、絡みってお前なあ」
突拍子もないサツキの言葉に俺は焦り、うろたえる
さすがの園崎も顔を伏せ肩を震わせている
髪の間から覗く耳たぶが真っ赤になっているのは羞恥の為か、はたまた怒りの為か
そんな俺達の反応などお構いなしに、サツキはさらに言葉を続ける
「せっかく二人いるんだからサ、一人じゃ出来ないポーズをやって貰わないともったいないじゃないカ?いいだロ、減るもんじゃなシ」
「そ、そういう問題じゃないだろ!」
「でもお礼の分の先払いとして奢ったんだかラ、食べた分は働いて貰わないとネ?」
そう言うとサツキは返済を迫る悪徳金融業者のような非情な眼光でニンマリ笑った
やけに気前よく園崎の分も払ってるかと思ったら・・・コイツ最初からそのつもりだったな
「あのな!だからってハンバーガーの奢りくらいでそんな事・・・」
「・・・・・・・・・わかったよ」
園崎が伏せた顔のまま震える声でそう言った
「そ、園崎?」
サツキの理不尽とも思える理屈に怒りを表すと思っていたのに、園崎の声は意外なほど神妙だった
「食べた分は・・・ちゃんと働かないと・・・な・・・」
「キヒ・・・それでこそゆずっちダ。快く引き受けてくれてよかったヨ」
サツキが満足げに口の端を上げる
コイツ・・・なんて奴だ
俺はサツキの放つ悪のオーラに言葉を失う
でも・・・本当にいいのか?
園崎は場の空気に呑まれ、承諾しそうになってる
ここは俺が頑として断らなきゃ・・・よし!
そう決意し口を開くが、俺が言葉を発する前に園崎の口から弱々しい声が漏れる
「わかったから・・・やるから・・・その前に・・・・・」
「ン?なんだイ」
「・・・・・シャワー・・・・浴びさせて・・・・・・」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「えっト・・・あのサ・・・ゆずっち?・・・・・・僕は別ニ・・・裸で絡めって言ってるわけじゃ、ないからネ?」
サツキが微妙な苦笑いでそう言うと園崎の顔が瞬時に深紅に染まる
「な!?あ、あ、あああああああ当たり前だ!きょ、今日は汗いっぱいかいたから・・・エチケットだ!エチケット!」
サツキの冷めたツッコミに園崎が真っ赤な顔で言い返す
「まア、いいけどネ・・・・・・ん?どうしたんだイ?」
無言で身を震わせていた俺にサツキが不思議そうな視線を寄越す
「・・・・いや、なんでも、ない」
俺はそれだけ言うのがやっとだった
・・・破壊力ありすぎだっての
男にとって好きな女の子にいつかは言わせてみたい憧れのセリフ・・・
それを不意打ち同然に・・・・
俺は不覚にも耳に残ったその甘美な言葉の余韻に意識を奪われた
我に返った時には、もうやる方向で話が進んでおり・・・園崎はバスルームへと消えていた
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「どうゾ」
ソファーに座る俺の前に湯気の立ち昇るコーヒーカップが置かれる
軽い既視感・・・
前にも何度かこんな状況になった気がする
「・・・てゆーか、お前これさ・・・」
俺はサツキの置いたカップへと半眼を送る
白い湯気の昇るその黒い液体の表面では・・・細かい泡がパチパチと弾けていた
「ん?ホット・ドクトルピーパーだヨ。飲んだことないかイ?」
この独特の芳醇な香りはやはりそうか・・・
「いや、あるけどさ。でも普通、客には出さんだろ?」
家でよく姉さんが飲むから俺も飲んだことはあるが・・・
「キヒ・・・レンチンしか出来ない僕ニ、人に出せる飲み物はこれぐらいしかなくてネ」
そう言って苦笑するサツキ
だったらわざわざ温めないで冷たいまま出して欲しかった・・・
「キヒヒ・・・でもホント上手く事が運んでよかったヨ。だから言ったロ?僕はゆずっちの扱い方は心得てるっテ。ホント、実に素直で可愛い子だよネ」
サツキはそう言うと肩を揺すり、笑った
「お前なあ・・・。いつもあんな泣き落としみたいなやり方で園崎をいいように使ってるのか?」
俺はそう言ってサツキを軽く睨む
「ハンバーガー屋での事を言ってるのかイ?僕は嘘は言ってないヨ。漫画家を目指してるのは本当サ。ちょっと大袈裟に言っただけデ」
そう言って薄く笑いながらカップを傾けるサツキ
「そんな睨まないでくれヨ。本気で嫌な事だったらゆずっちだって頑として断るシ、僕だって無理強いはしなイ。それにこれハ・・・キミにとっても悪くない話しだロ?ゆずっちとの絡み、やりたく無いかイ?」
「・・・・・・。」
サツキの質問に俺は無言で返す
やりたくない・・・と言えば嘘になる
いや、やってみたいに決まってる
服を着たままとはいえ、女の子と性行為を表現する体勢になるんだ
男としちゃこんな刺激的で美味しい状況はない
狂喜するような神展開だが、少しでも嬉しがってるような態度を見せたらスケベ野郎と蔑まれることになるだろう・・・
「気が進まないかイ?せっかくなんだから『予行練習』だと思えばいいじゃないカ」
俺の態度にサツキはそんなことを言ってきた
「予行・・・練習?」
「あア・・・、ゆずっちとの・・・・・・セックスのネ」
「セッ!?」
サツキの赤裸々で直球過ぎるセリフに言葉を失う
「キミ・・・ドーテーなんじゃなイ?」
さらに破廉恥な質問を重ねてくるサツキ
なんで俺の周りの女どもはどいつもこいつも・・・
「ぐ・・・悪いか?」
苦々しい気分でそれを認める
見栄を張って嘘をついても見透かされるのがオチだ
俺は自慢じゃないがエッチはおろかキスすらしたことがない
女性経験など皆無だ
「別に悪いなんて言わないヨ・・・むしろゆずっち的には高ポイントなんじゃないかナ?あの子の独占欲の高さと嫉妬深さは度を超えてるからネ・・・未使用品なら申し分ないプレミアム性だヨ」
「・・・俺は物かよ」
何故か緩みそうになる頬に複雑な気分のまま憮然としたセリフを吐く
・・・別に嬉しくなんかねえぞ
「キヒヒ・・・、でも初めて同士だとスムーズにいかなくて失敗するって言うしネ。この機会に練習しときなヨ。ゆずっちもムッツリスケベで色々知識だけはあるけド・・・所詮バージンだからネ」
「ムッツリって、お前な・・・」
「探究心旺盛と言い換えようカ?ああそうそウ・・・前にイタズラのつもりでアレを送りつけた時なんかケッサクだったんダ・・・ぶふッ」
そう言うと自分で耐え切れなくなったのか、身体を曲げ腹を抱え笑い出した
アレ?
「・・・お前、一体なに送りつけたんだ?」
「んー?それはネ、ネット通販で購入したピン・・・」
サツキは何か言いかけるがハッとした表情になると、その口をとっさに片手で被った
「ピン?」
「・・・おっと危なイ、お喋りが過ぎたネ。さすがにあんなこと話してバレたらマジで殺されかねないヨ・・・忘れてくレ」
「・・・なんだよそれ。スゲエ気になるじゃねえか」
しかしサツキは本当にそれ以上話すつもりは無いようだ
俺はモヤモヤした気分でカップの液体を口に含む
「まア、それは置いといテ・・・僕らの利害は一致するんじゃないかナ?僕は『マンガのデッサン』が出来ル。君は『セックスの予行練習』が出来ル・・・お互いウィンウィンの状況ダ」
「ま、待てよ。それじゃまるで俺達二人が共謀して園崎を騙すみたいじゃ・・・」
ガチャリ
俺はサツキに言い募るがその言葉は開いたドアの音に遮られた
「え?」
ドアを開け、入ってきたのは園崎・・・に、よく似た美少年だった
「え?あれ?」
俺は状況が理解出来ず困惑する
「・・・ま、待たせたな」
僅かに上擦った声
だがその声は確かに園崎だ
「んー、よく似合ってるじゃないカ、ゆずっち。どこに出しても恥ずかしくない美少年だヨ」
サツキがニンマリ笑い満足げに頷く
園崎の格好は先ほどまでのウチの学校の女子の制服ではなく・・・
どこのかはわからないが・・・ワイシャツにネクタイ、チェック柄のスラックスという男子生徒の格好だった
髪も後ろで束ねていて、前から見れば短髪に見える
「さすがの僕でもスカートのままで絡め、なんて外道な事は言わないサ。雰囲気を出すために男装して貰ったんだ。残念だったかイ?」
園崎の意外な姿に思わず呆けたような表情をしてしまった俺に、サツキがからかうようなそんなセリフを投げ掛けてくる
「なっ・・・!?ちょ・・・ちょっと意表を突かれただけだ!」
俺はサツキの失礼な勘ぐりにそう叫ぶが・・・
「あ!そうカ。ベタな感じに『体操服にブルマ』とかを期待してたんだネ?すまなイ、それは持ってないんダ」
さらなる失礼発言を返してきた
「だから・・・なんでそうなる!?」
サツキに対し俺の口は骨髄反射的にツッコミの言葉を放つ
しかし脳は勝手に並列処理でその言葉の映像変換を始めた
体操服にブルマ姿の園崎・・・
胸には『そのさき』とひらがなで書かれたゼッケン・・・
無理に押し込めた内側の膨らみのせいで、その文字は歪み形を変えている
開脚の姿勢で床に座り、上目遣いに見上げてくる園崎・・・
『けーご先輩・・・ボクの柔軟、手伝って下さいませんか?』
って、なんで後輩設定!?
大丈夫か、俺!?
俺は自らのマニアックで無茶な状況設定に戦慄を覚える
―――だって部活の後輩とか・・・萌える設定だろ?
耳元にそんな幻聴が聞こえてくる
ぐ・・・これは・・・悪魔俺!?
久しぶりに現れやがった!
―――園崎には・・・運動部だとなに部がいいだろうな?テニス部?バレー部?
うぐ
―――・・・なわとび部だな
なんだとおおおおおおお!!!!????
―――前代未聞の部活キターーー!!!!!
共に驚き、振り返る俺と悪魔俺
無駄にニヒルな笑みを浮かべそこに浮いていたのは・・・
お前は・・・『堕天使俺』!
―――なわとびって・・・どんな部活だよ、それ!
―――フッ・・・想像してみろ・・・可愛らしくぴょんぴょんとなわを跳ぶ園崎・・・我が儘に跳ね回る二つの膨らみ・・・
ぐっ・・・
―――ユニフォームはそうだな・・・強制的にマイクロビキニ指定としよう・・・
なにい!?
―――そ、そんな格好でなわとびなんかしたら・・・
―――フッ・・・ブラウン運動を続けるたわわに実った果実がそんな小さな布地の中に収まり続けている訳はないだろうな
ニヤリと笑う堕天使俺の言葉に、俺と悪魔俺は打ち震えながらその場面を想像する
ぽろり
ゆさっゆさっ
解放され自由になった甘く熟れた二つの果実はランダムに動きまわる
しかし、それによりバランスを崩した園崎はなわに足を取られ転んでしまう
『ひゃうっ!?』
どさっ
だ、大丈夫か?園崎・・・!?
『せ、先輩・・・。なわが絡みついて・・・動けません・・・』
何故か絡みついたなわは亀甲縛り状になり、その見事な膨らみを絞り上げていた
待ってろ・・・今・・・助ける・・・から・・・じっとして・・・全部俺に任せて・・・身を・・・委ねるんだ・・・
俺は園崎にそう語りかけながら・・・その身体の上へと・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
「けーご!大丈夫か?けーご!!」
「うっ!?・・・お、俺は・・・!?」
園崎の声に俺は意識を現実に引き戻す
気付くと心配げな表情の園崎が、俺の両肩を掴んで揺さぶっていた
「気がついたか経吾・・・どうしたんだ?急にうわごとみたいな事をブツブツと」
「あ、ああ・・・す、すまん園崎。もう・・・大丈夫だ」
俺は額の汗を拭いながら園崎にそう答える
「・・・危なかった・・・俺はもう少しで自分を・・・見失うところだった・・・あんなのは本当の俺じゃない・・・はずだ」
俺の喘ぐような呟きに園崎が驚愕したように目を見開く
「経吾!?まさかまた・・・・もう一人の人格、〈ファング〉が!?」
「へ?」
あ、そういやそんな設定あったんだっけ?
「まさかこんな時にまた・・・目覚めようとしているのか!?」
「えーと・・・」
どう返したものか・・・言葉がとっさに見つからない
「キミらさア・・・急に寸劇始める時あるよネ?それどういう遊ビ?よくやってんノ?」
そんな俺達のやり取りに対し、サツキが半眼をこちらに送っていた
痛い奴に痛い物を見る目で見られた!?
「あ、遊びとはなんだサツキ!これは・・・」
園崎がサツキへと振り向きながら抗議の声を上げる
「!?」
その時、俺はやっとそのことに気付いた
ずっと感じていた違和感の正体
園崎がドアを開け現れた時に、美少年と見違えた最大の理由
いくら『僕は本当は男だ』などとうそぶき、男言葉で話し、男ぶってみせようとも全力で『女』を主張していた二つの膨らみ
俺の愛し求めてやまないその甘美なる禁断の果実が・・・消え失せていた
少なくとも・・・シャツの上からは『ぺったんこ』に見えた
「え?・・・・・・園崎・・・それ・・・・」
震える声と指先でそれを指し示し、問い掛ける
「ん?・・・ああこれか?実はサツキの指示でな・・・」
「サラシを巻いて貰ったんだヨ。ゆずっちのは無駄にでかいからネ、デッサンの邪魔になル」
「悪かったな、無駄にでかくて。・・・?どうした?経吾」
俺の胸に言葉にならない感情が渦巻き始める
それは沸々と沸き立つ・・・怒り
「ふざ・・・けるなよ・・・・・・・」
俺の押し殺した声に二人が訝しむ
「ふざけんなよサツキぃぃぃぃ!!!!サラシを巻かせた!?だと!?そんなことして園崎の芸術的なまでに美しい胸の形が崩れたらどうすんだ!!!!!?お前責任取れんのか!?ああ!!!!!??????」
俺は血を吐くような渾身の叫びを上げる
・・・部屋の中に静寂が満ちた・・・・
ハッと我に返った時にはもう遅かった
突然の俺の激昂に女子二人がドン引きしている
「あ、いや、その・・・・」
なんとかごまかそうと思うものの、とっさに言い訳も思いつかない
「いヤ・・・うン・・・済まなかっタ・・・何て言うカ・・・申し訳なイ・・・。ゆずっちから君が巨乳フェチなのは聞いていたんだガ・・・ここまで重度のフェティシストだとは思ってもみなくテ・・・軽率だっタ・・・しゃ、謝罪しよウ・・・」
腫れ物に触るようにそう言って深々と頭を下げてくるサツキ
「こ、これが〈ファング〉の人格!?・・・恐ろしい・・・まるで、ケダモノ・・・」
両肩を抱くようにして恐れおののく園崎
俺は・・・また一つ消せない痕を刻んでしまったようだ・・・
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「じゃア、そろそろ始めよウ。二人とも僕の指示通りのポーズをとってくれヨ」
「ちょ、ちょっと待てサツキ!お前なにを持ってる!?」
開始を告げるサツキに対し、園崎が待ったをかける
「ん?なにっテ・・・デジカメ」
サツキはきょとんとした顔で返す
手にしていたのはコンパクトサイズのデジタルカメラだった
「ダメだダメだダメだ!撮影する気ならこの話はナシにする!」
園崎がサツキに現状での開始に異を唱えた
「えー?別にデッサン以外に変な事には使わないヨ」
サツキは口を尖らせ、そう訴えるが園崎は断固拒否する構えだ
「だとしても・・・データ化してパソコンに入れるんだろ?・・・・だいたいサツキはデータの管理だってズボラだ!デジカメ画像のファイル名はいつもデフォルトのままだし適当なフォルダに入れたまま、どこにやったか分からなくしたりしてるじゃないか。メールの添付ファイルを間違えて送ってきたことだって一度や二度じゃないし、アドレス自体間違えて他の奴宛てのメールを送ってきたことすらあっただろう?・・・・そのうちウイルスに感染してネット流出とかマジでありえそうだ!!」
「わ、わかっタ。わかったってバ・・・。やれやレ・・・とりあえずいっぱい撮影しといて後でゆっくり画面を見ながら描こうと思ってたのニ・・・」
サツキはそうぼやきながらデジカメを仕舞いに行くと、代わりにスケッチブックと鉛筆を手に戻ってきた
「そのかわり時間かかるからネ?僕が描き終えるまデ、ずっと同じくポーズしてて貰うけド、それでもいいんだネ?」
「画像がネット流出して全世界に晒されるよりはるかにマシだ」
サツキのそんな念押しの言葉にも園崎は取り付く島もない
「やれやレ・・・信用ないなア・・・」
「信用はしている。信頼していないだけだ」
肩を竦めるサツキに園崎がそう言って目を細めた
そんな一悶着のあと・・・いよいよ俺達がモデルとなるデッサンが始まることとなった
「じゃア、気を取り直しテ・・・いいかげん本気で始めるからよろしク・・・あ、そうだ、よっしぃ」
「・・・なんだよ。てか、その『よっしぃ』ってのはやめろ」
「キミの表情についてなんだけどサ・・・」
・・・俺の話聞いてねえ
「圭人はサディスティックな薄笑いがデフォルトなんでよろしク」
「ちょっと待て、ポーズモデルに表情は必要ないだろ?」
サツキの注文に対し俺はそう異議を唱える
「雰囲気は大事だロ?なにもセリフまで喋れなんて言わないかラ」
俺の異議に尤もらしい理屈で返してくるサツキ
「はあ・・・『俺の出来る範囲』で、だからな?・・・・こんな感じか?」
俺は片頬を僅かに上げた薄い笑みを作る
「おオ・・・さすがだネ。いい感じじゃないカ。普段は心の奥底に隠し持ってる病的なまでの嗜虐性が滲み出た感じがよく出てるヨ」
「・・・けーご・・・カッコイイ・・・・」
サツキが満足げに頷き、園崎がうっとりと顔を赤らめた
素直に喜べん・・・
俺は複雑な心境で溜め息をついた
「じゃあまずハ・・・二人とも壁際に来てくレ」
サツキの指示に従い、俺達は壁の方へと移動する
その間にもチラチラと園崎が上目遣いに視線を向けて来て、俺は妙にドギマギする
「始める前に言っとくけど・・・園崎が嫌がったら、そこで終わりにするからな?」
俺はサツキへとそう確認を取る
フリとはいえ恋人でもない男と性的な行為を表す体勢を取るのは、園崎にも堪えられる限界があるだろう
「んー、そうかイ?わかっタ。いいだろウ、約束するヨ」
俺の言葉にサツキは意外にも、すんなり了承するとニンマリと笑った
「聞いたかイ?ゆずっち。君が『イヤ』って言ったらそこでおしまいだっテ。わかっタ?」
サツキがニヤニヤ笑いのままそう園崎に確認をとる
「『イヤ』って言ったら・・・おしまい?・・・・・・わかった」
園崎が微かに揺らぐ声で了承した
よし、これで園崎の意思でいつでも中止することが出来る
「その代わりよっしぃにはゆずっちが嫌だって言うまでは続けて貰うからネ?」
「え?・・・ああ、わかった」
サツキの確認に俺は同意して頷く
「キヒ・・・わざとなのかそうでないのカ・・・キミもなかなか意地悪な男だネ」
サツキはそんな意味ありげなセリフとともにニンマリと笑った
「どういう意味だ?」
「さあネ?・・・じゃ、始めるよ」
サツキは俺の問い掛けをはぐらかし、開始を告げた
「まずゆずっちは壁に背中をつけた体勢で立っテ・・・向かい合わせによっしぃ・・・うん、そウ」
・・・これは・・・壁際に追い詰めたような状況なのか?
「よっしぃ、ゆずっちの左手・・・・手首辺りを掴んデ・・・そうそウ・・・それを壁に押し付けて拘束」
言われた通りに俺は園崎の細い手首を掴む
なめらかな肌・・・細く華奢なのに、ふにふにとした柔らかな感触・・・
どうしてこう女の子のカラダってのはどこもかしこも柔らかいんだ?
その腕を取り、壁へと当て・・・軽く押し付ける
「そ、園崎。痛くないか?」
「うん・・・へーき、だよ」
小声で園崎に確認すると彼女は僅かに上擦った声で答える
「んー、いいねいいネ。次に左手をゆずっちの頬っぺたに当てテ」
「わかっ・・・た」
指示されるまま手の平を園崎の頬へと・・・
ここも・・・すげぇ柔らかい
しっとりして・・・もちもちした手触りが心地好い
「ひゃんっ!?」
園崎が吐息と共に微かに身を弾かせる
俺の指先が・・・園崎の耳たぶに触れた瞬間だった
「ご、ごめん。園崎・・・」
「んーん、ちょ、ちょっとくすぐったかっただけ・・・だから」
そう言って微笑む園崎に微かな罪悪感を覚える
今のは・・・わざとやった事だ
園崎・・・やっぱり耳とかも感じやすいんだな・・・
サツキの言葉にそそのかされたわけじゃないが・・・俺はこの機会を利用させてもらうことにした
うなじの時みたいに・・・園崎のカラダに俺の手による快感を与え・・・覚えさせる
俺が触れることが・・・気持ちいいと錯覚させる・・・
そのためには多少際どいコトも・・・
園崎が嫌がったら止める・・・っていう条件も、ある意味俺自身の為のものだ
夢中になってやり過ぎないための、リミッターとしての働きを考慮した条件
「じゃあよっしぃ、そのまま親指をゆずっちの口にねじ込んデ」
「はあ!?」
予想以上の指示が来た
「ちょ、ちょっと待てサツキ、それはいくらなんでも・・・」
俺はサツキの言葉に慌てて抗議する
園崎にどさくさ紛れに色々してやろうとは企んではいたが、それはせいぜい肌の表面を撫でたりといった・・・ソフトな愛撫程度のものを考えていた
口に指を突っ込むとか、いきなりハード過ぎるっての!
しかしサツキは俺の抗議の言葉には答えず無言で視線を園崎に向ける
その視線を受けた園崎は微かに逡巡するように瞳を揺らめかせ・・・
「け、けーご・・・ボ、ボクなら・・・平気・・・」
僅かに震える声でそう言った
「そ、園崎・・・」
「ゆずっちが『イヤ』って言うまでは続ける約束だロ?」
園崎の返事を聞いたサツキが先ほどの条件を念押しするように繰り返し口にした
「わ、わかったよ・・・・・・・・ご、ゴメンな園崎」
「んーん、謝らないで。けーごは悪くないんだから。サツキの指示なんだもんね・・・」
そう言って健気に微笑む園崎
「でもこのシナリオ書いたのは僕じゃないんだけどネー」
サツキのわざとらしい独り言に園崎の顔が朱に染まる
えっと・・・・、やっぱりこのシナリオも園崎が書いた物なのかな
サツキの分析を鵜呑みにするわけじゃないが、これにも園崎の願望が反映されてるんだろうか?
『したい』という願望か・・・それとも『されたい』というものなのか・・・
「あ、よっしぃ。無理矢理こじ開けて突っ込む感じでネー」
サツキが軽いノリで非道な注文をしてくる
わずかな躊躇いのあと、俺は指示通りの行動に移った
愛らしい形の唇を・・・親指で無理にねじ開ける
湿り気を帯びたピンク色の花弁がいびつに歪むさまに興奮が背中を駆け上がる
ゆっくりと指先を入れると・・・そこに触れる固い歯の感触・・・・
それが指の挿入に合わせ・・・力無く開いていく
園崎は無抵抗のまま・・・・俺の指の侵入を許す
俺は難無く根元までの挿入を果たした
初めて感じる園崎の中・・・
親指を包み込む・・・・あったかくて・・・・ヌルヌルとした感触・・・・
めちゃくちゃ・・・気持ちいい
「・・・う、わ・・・」
親指から伝わる快感に思わず声が漏れた
園崎の愛らしい顔が俺の指で不自然に歪む
胸の奥に沸き起こる罪悪感と・・・・それを上回る嗜虐的な愉悦感
触覚・・・視覚・・・それぞれから伝わる園崎のカラダが生み出す快感・・・
それは痺れるくらい堪らなく甘露で・・・・俺の精神を歪んだ悦びの感情で満たすに十分なものだった
(つづく)
【あとがき】
いつもお読み頂きありがとうございます
気がつけばもう連載一周年です
第1話を投稿した時は、まさかこんなに続くとは…自分でも思ってもみませんでした
書きためていた分の貯金は3話くらいで早々に使い果たし、それ以後は毎回悪戦苦闘して文章を捻り出し、なんとかここまで来ました
あとどれくらい続けられるか自分でもわかりませんが、これからもどうかよろしくお願いします
今回は終盤が結構際どい感じだったかもしれませんが…まだまだR15タグつけるほどじゃないですよね?
『俺はためらいながらもサツキの指示に従い、園崎の口へと親指をさし入れた』
って内容の文章をちょっと長めに書いただけですし
というわけで次回もちょいエロな展開です
えっちぃ文章は書いててスゲー楽しいんですが、あまりノリで書き過ぎるとR15どころか、ただの18禁エロになってしまうので気をつけるようにいたします・・・




