表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
プロミステイク ~俺と彼女の中二病的恋愛遊戯~  作者: 阿津沼一成
第1章 スプリング×ビギニング
35/90

第35話 K-Yaku

園崎をソファーに待機させ、一人で玄関へ行くとパンプスを脱ごうとしている姉さんがいた


「お帰り、姉さ・・・」


かけた声が思わず途中で途切れる

何故か姉さんは金属製と思われるL字型の棒を持っていた


「えーと・・・、姉さん?なんで『バールの様な物』を持ってるの?」

「え?・・・あ、いけない。持って来ちゃった」


俺が指摘すると姉さんは初めて気が付いたような反応を見せた


持って来たって、どこから!?


「にゃはははははははははははははは、けーくん。これは『バールの様な物』じゃなくて『バール』だよ」


姉さんはそう言って笑うと手にしていたそれを無造作に傘立てへと突っ込んだ


・・・・・スゲえシュールな絵面だ


「・・・なんでバール?」

「ほらぁ、宝箱とか見つけたりすることってあるじゃない?でも鍵が見つかるとは限らないわけよ。そんな時に便利なのがバール。てこの原理って素晴らしいよね?」


宝箱ってそんなに頻繁に発見する物なのか?

俺は一度もないが・・・


まあいい、これ以上気にしない事にしよう・・・

気にしたら負けな気がする

それよりも・・・・


「えーと、姉さん。・・・酔ってる?」

「にゃははははははははははははははははは、酔ってなんかないわよお。ちょっと酩酊してるだけ」

「酔ってんじゃん!?」


最悪のパターンだ

酔っ払った姉さんはタチが悪い


色々なタガが外れて本能のまま行動する上、そのほとんどを覚えていない


「結局仕事が徹夜になっちゃってねえ。明け方までかかっちゃたから、その後ボスに奢らせてさっきまで呑んでたんだよお」

「さっきまでって・・・」


もう10時近いぞ


「姉さんクルマは?置いてきたの?」

「安心しなさい乗ってきたから」


事も無げに姉さんがそう言う


「の、乗ってきたって・・・飲酒運転!?」

「やーね、代行よ代行。払いはボスでね」


ここで知らない方の為に少し説明すると代行とは運転代行業者のことだ

飲酒して運転出来なくなったとき利用するもので・・・・その業態の詳細な説明は割愛させていただく


「おっとっと・・・」


立ち上がり歩き出そうとした姉さんがよろける


「だ、大丈夫かよ姉さん?」

「んー?さすがに徹夜してから呑んだから眠いわあ・・・」


そう言って姉さんは欠伸を噛み殺す

よし、それなら好都合だ


「へ、部屋で少し寝なよ、姉さん。俺、支えるから・・・階段上がれる?」

「アリガトけーくん。でも一人で上がれるからへーきよ。おやぷみー」


姉さんはそう言うと階段の手摺りへと手をかけた

俺は密かに安堵の吐息を漏らす


姉さんと園崎を会わせるのは悪い予感しかしない

出来れば接触は避けたい


「あ、その前に水飲むー」


姉さんがいきなり方向転換して俺は慌てる


「み、水なら俺がコップで持ってってやるから、部屋で待ってなよ」

「・・・・わかってないなあ、けーくん。こうゆうときは蛇口から流れ落ちる水にちょくせつ口をつけて口元をびちゃびちゃにしながら飲むのが正式な作法なんだよ」


姉さんはそんな訳の判らない事を言いつつリビングへのドアに手をかけた

どうやら覚悟を決めねばならないようだ


俺は溜息をつきつつ姉さんの後に続いてドアをくぐった


「おっ水、おっみずぅ、おっみっ・・・・」


鼻歌混じりにドアを開けた姉さんの動きが止まった

視線はソファーに座る園崎に釘付けになっている


園崎の方はというと・・・・

相変わらず初対面の人物に対してガチガチに身を強張らせていた


「えーと姉さん、この子は・・・」


俺が園崎を紹介しようと口を開く

しかし、ぐりんと振り向いた謎の迫力を張り付かせた表情の姉さんに言葉が途切れる


「けーくん、あなたとうとう・・・・・買ってしまったの!?購入してしまったというの!!?」

「は?姉さん、なに言って・・・・」


「これ!ラ●ドールってやつでしょ!?すごぉい!可愛いぃぃ!!超リアルぅぅ!!!」


姉さんの想像以上に斜め上過ぎる残念なセリフに、俺の全身を激しい虚脱感が襲う


さすがの園崎も困惑して表情を強張らせていたが、


「あの・・・えと・・・・ハジメマシテ・・・・」


たどたどしく、そう挨拶の言葉を口にした


「わ!動いた!!喋った!!スゲェェェ!!オ●エント工業スゲェェェェェェェ!!!」


「姉さん・・・頼む・・・・お願いだからそれ以上喋らないでくれ・・・」


床に両手をついた俺はそう姉さんに懇願するが姉さんの妄想の暴走は止まらない


「肌の綺麗な質感とか人間以上じゃない!?ヤッベェ!日本の技術力マジヤベェェェェェェ!!!!!!」


マジヤベェのは姉さんの脳だよ・・・


「えっとですね・・・僕はラ●ドールとかでなく・・・・」

「ウホッ!?ボクっ娘設定?そっかぁ、けーくんボクっ娘大好物だもんねえ」


「なあ!?姉さん、勝手にデタラメなこと言うなよ!?」

「・・・・・・・経吾、ボクっ娘が好み、なの?」

「本気にするなよ!?園崎、姉さんのデタラメ発言をマジに取るな!!」


「け、けーくんのツッコミと息ピッタリ!?ご主人様を呼び捨てとか・・・ツンデレ小生意気系?せ、性格も自分好みにカスタマイズできるなんて・・・」

「姉さん、日本の技術はそこまで発展してねえよ!自分の脳内妄想とごっちゃにするな!!」


俺は必死に訂正ツッコミを繰り返すが姉さんは聞いちゃいない


「ずるいゾ、けーくん!こんな可愛い子のことお姉ちゃんに黙ってるなんて!自分一人でこの子にペロペロしたりクンカクンカしたりしてたのね!!」

「な!?ぺ、ペロペロなんかしてねえよ!!」

「・・・・・クンカクンカは否定しないんだ?」


うぐ!


「まあいいわ、とにかく独り占めは許しません!お姉ちゃんにも貸しなさい」

「か、貸すって・・・・。な、何する気なんだよ」


「そおねえ、手始めになにから堪能しようかしら・・・・」


姉さんがそう言ってニンマリ笑い舌なめずりする

・・・と同時に眼鏡が曇った

興奮状態がよく判る姉さんの特徴だ


「フフ・・・こんな愛らしい人形を愛でられるなんて・・・・ワクワクするわね」

「な、なに勝手に話を進めてるんだ!ボクはお前の言うことなんかきかないぞ!」


「くふ、吠えるわねえ。人形が」

「ボクは・・・〈ドール〉は人形なんかじゃない!!」


・・・・おい、なんか寸劇が始まったぞ


「いいえ、人形よ。そもそも貴女、マスターと契約〈マリッジ〉してるの?」

「う、それは・・・」

「ふふ、やっぱり契約〈マリッジ〉はまだなのね。ならドールとはいえないわ。やっぱり・・・人形ね」


なんか二人ともノリノリだな

俺の知らないマンガかアニメのネタか?


園崎もキャラに入り込むと途端に饒舌になるし・・・

置いてきぼり感ハンパねえ・・・・


・・・・別に寂しくなんかねえぞ


「だ、だが仮契約〈エンゲージ〉は済んでいる!・・・こ、これがボクの魔装具〈ティアラ〉だ!!」


そう言って・・・頭の十字架型ヘアピンを指し示した

えっと、あれは昨日俺があげたやつ・・・


「契約〈マリッジ〉はまだだが・・・マスターならちゃんといる!ボクのマスターは・・・・経吾だ!・・・・そうだろう?経吾」


うわ、いきなりこっち振られても・・・元ネタ知らねえぞ!?


「俺、が・・・・マスター?」

「うん、経吾がボクの・・・・マスターになって?」


しょうがないな・・・なんとか合わせるしかないか


「でも・・・俺なんかがマスターで、いいのか?」

「経吾がいい!・・・んーん、経吾じゃなきゃダメなの!!」

「わかった・・・・俺がオマエのマスターになってやるよ」


・・・・ヤベエな俺。アドリブでスラスラ台詞が出てくるぞ


「じゃあ・・・ボクに契約〈マリッジ〉の術式を・・・・して」

「それは・・・どうすればいいんだ?」


「仮契約〈エンゲージ〉はもう済んでるから・・・あとは・・・ボクの〈絶対領域〉に口づけしてくれれば、契約〈マリッジ〉は完了する」

「そうか、わかった・・・・・って!?」


絶対領域って、あの絶対領域ですか!?


「それじゃ・・・・・お願いします、マスター」


動揺する俺の前で再びソファーに腰掛けた園崎は・・・・そのスカートをゆっくりとたくし上げていく


やっぱりその絶対領域かよ!?設定考えたヤツ誰だよ!?


うろたえる俺の前で園崎はその綺麗な生足を露出していく


今日の園崎はお嬢様ぽい清楚な装いに合わせ、ニーソではなくくるぶし丈のソックスなのだが・・・その場合も絶対領域っていうのか?


膝下丈のロングフレアスカートをたくしあげ、そこから左の片足のみを晒け出していく園崎


ふとももの根元、下着が見えないギリギリの位置まで捲くり上げるとその足を大きく真横に開いた


物凄い淫靡な構図だ


露わになったふとももの内側・・・そこは真っ白でシミひとつ無い


「マ、マスタぁ・・・、は、早く・・・」


真っ赤な顔でそう懇願してくる園崎の姿に抑えようのない征服欲が沸きたつ


園崎はいつも片眉を吊り上げるようにして不敵な表情を作り、キツい印象を演出してるが・・・・・実は目の形はタレ目気味なのだ


だからこういう時の表情はとても気弱そうに見えて嗜虐心がくすぐられる


俺はソファーに座る園崎の前に跪きそこに顔を寄せた


いいのか?


さすがにこれはマズイだろ?


軽はずみな事はしないって決めたんじゃなかったのか?


僅かに残った自制心が問い掛けてくる


「どう・・・したの?経吾。やっぱりボクなんかのマスターは、いや?」


潤んだ瞳でそう問い掛けてくる園崎の姿に俺の中で何かが弾け飛んだ


そうだ、これは俺の欲望を満たす為の行為じゃない

園崎の望みだ


いつもの屋上での、ごっこ遊びの延長じゃないか


都合のいい言い訳で自分をごまかした俺は、


ゆっくりと、


そのなめらかな素肌へと、


唇を、


・・・・触れた


「んっ!」


その瞬間、園崎が鼻にかかった吐息と共にその身体をぴくんと震わす


ここまでだ


これでお終いだ


名残惜しい気持ちを振り払いそこから唇を離す


よし、大丈夫だ

俺の自制心はちゃんと機能してる


「お、終わったぞ」


掠れる声でそう告げる


「ダメ・・・だよ。〈契約の刻印〉が・・・・刻まれて、ない」

「刻・・・印?」


「うん。そうしないと契約〈マリッジ〉は完了しないの。ちゃんと刻印が刻まれるように・・・・強く吸って」


喘ぐような声で園崎は言った


えーと・・・つまり?


キスマークつけろってことか!?


「お願い・・・・します、マスタぁ・・・。ボクに・・・ボクがマスターの所有物である証を・・・・刻み付けて下さい」


嗜虐心を煽るその声音に脳が痺れる


俺は再びその白くなめらかな内モモへと唇を張り付かせた


そして、


ちゅぅぅ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぽんっ

十分に吸引して・・・・放した


僅かに唾液が付着したその部分に、赤い小さなアザが残る


さっきまでシミひとつなかった無垢なその部分に・・・・俺が痕をつけた


取り返しのつかないことをしてしまったという悔恨の思いと同時に歪んだ征服感が心に満ちる


それはちょうど、降り積もった白い雪に最初の足跡をつける時に感じる、子供じみた満足感にも似ている


「これでもうボクは経吾の・・・・経吾だけのモノだよ」


園崎のセリフに脳が蕩けそうになる


胸の中に多幸感が満ちていく


園崎はそんな俺の前ですくっと立ち上がると


「こ、これでボクはドールになった!もう・・・人形なんて呼ばせない!!」


そう姉さんに向けて高らかに宣言した


・・・・・・・・・・。


・・・・・・・・・・・・・・・・・。


そうだよ!姉さんいたんだよ!!

すっかり忘れてた!


俺、姉さんの前でなんてこと・・・・・


何が自制がきいてるだ

姉さんがいることも忘れて園崎にのめり込んでたじゃないか!?


俺は頭から冷水を被ったような気分で恐る恐る後ろを振り返った


「くー・・・・・・すぴゅー・・・・・・・・・くー・・・・・」


向かい側のソファーの上

身体を横たえた姉さんは・・・安らかな寝息を立てていた


気が抜けた俺は安堵の吐息と共にその場へとへたりこんだ


(つづく)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ