第33話 Peach & Gummi (ハクトウ ト グミ)
「そうゆうわけで、ボディーガード。お願いね?」
ブツッ・・・・ツーーー・・・・・
言うだけ言うと、その電話は一方的に切られた
相手の返事を待たないのはさすが姉妹だ
えーと・・・・なんだって?
ノーパン?
思春期男子には刺激的な単語がサラっと出て来たぞ
「経吾?」
「うわぅ!?」
いきなり声をかけられた俺は思わず飛び上がる
そんな俺を園崎が怪訝そうな目で見ていた
「電話、姉からだったんだろ?なんだって?・・・大体いつの間にケータイの番号など・・・っ!・・・そうか、僕が最初に経吾から借りてかけたからその履歴で・・・僕としたことが、なんて迂闊な・・・」
そう言いながら親指の爪を噛む
「ちょっと貸せ!経吾」
そして俺の手から奪うようにケータイを引ったくった
ボタンを操作し今の2件の着信履歴、そして最初かけた時の発信履歴を削除すると、ふうと息を吐いた
「わ、悪かったな。ほら」
それを終えるとバツが悪そうに突き返してくる
まあ、俺のケータイの履歴を消したところで向こうには残ったままなのだから何の解決にもなってないのだが・・・それは言わないでおいた
少なくとも俺からかけることは出来なくなったことは確かだ
・・・もっとも俺からかける用事なんて別に無いけど
「えと・・・・、もう暗いからお前のこと、家までちゃんと送ってくれって頼まれた。心配してたぜ?」
園崎がノーパンであることを俺が知らされたことは伏せておくことにしよう
変に気まずくなるのも困るし・・・
俺の返答に園崎は意外そうに目をぱちくりとさせる
「家、まで?」
「ああ、送ってくよ」
「そか、・・・でもいいのか?」
「大丈夫だ。それに俺も・・・心配だし」
下着をつけてない園崎が、万が一盗撮とか痴漢なんかされたらと考えたら気が気じゃない
「心配・・・してくれるの?アリガト、経吾」
俺の言葉に園崎がそう言って、嬉しそうに微笑んだ
「じゃ、行こうぜ」
俺は熱くなる頬に平静を装いつつ、そう言うと再び駅へと向かい歩を進める
しかし・・・ノーパン?
マジか?
昨日に続いて再び?
しかも今日は屋外だと?
・・・いかん、ダメだと思ってもついつい下半身に目が行ってしまう
透けて見える筈なんかないのに、穿いてないという事実を知った瞬間から妙な興奮が抑えられない
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
駅前に着くと週末という事もあり、かなり人が多かった
俺は園崎の近くに変な奴が近付かないように気を配って歩く
まあ、そうそう盗撮するような輩はいないとは思うが、被害にあってる人達も実際にいるのだから用心に越した事はない
鞄なんかにカメラを仕掛けた、最初から盗撮目的の人間なんかはめったにいないだろう
しかし、ケータイやスマホにはカメラ機能が付いている
可愛い子を見て、つい出来心で・・・っていう人間も中にはいないとも限らない
そう考えると周りを歩く男達全員が監視対象だ
俺は園崎より斜め後ろの位置について歩きながら周囲に注意を払う
駅舎に着き改札に続く階段に差し掛かった
こういう階段やエスカレーターが一番狙われやすい場所だと聞く
ここはさらなる注意が必要だな
俺は園崎を前に、その後ろをガードすべく2、3段下を続いて上る
この位置を俺が塞いでいれば大丈夫だろう
盗撮するならばベストポジションのはずだからな
前を上る園崎のお尻がちょうど目の高さにある
うん、素晴らしいベストポジションだ
タイトなスカートにより、その形のいい丸みがよくわかる
その美しい曲面上に下着のラインは無い
やはりノーパンは間違いないようだ
そんな美しい曲面が階段を一段上る度にむにむにとなまめかしく形を変える
ああ・・・これを思うがままに揉みしだいたら、どんな感触を味わえるだろうか・・・
その弾力感はさぞや甘美なものだろう・・・って、俺が痴漢になってどうする!?
『駄目だ、静まれ!俺の右手!!今はまだその時じゃない!!!』
だからなんで俺は頭の中で中二的セリフを吐いてんだ!
園崎に毒され過ぎだろ!?
大体その時っていつだよ!?そんな予定ねえよ!
俺は自らの煩悩と戦いながらなんとか階段を上りきる
だが、いま自分の身を持ってハッキリと確信した
あんな蠱惑的なものを見せられたら大概の男なら触りたくもなるだろう
それが仕事後の疲労とか飲酒などで判断力が低下している時だったら・・・、つい出来心で不埒を働いてしまうという事は十分考えられる
俺がしっかりガードしないと・・・
他人になど・・・絶対触れさせるものか
あれは俺のも・・・・ごふんごふん・・・いや、なんでもない
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
夜の風を巻き込みながらホームに列車が滑り込んでくる
開いたドアから車内に入ると中は結構な混み具合だった
通勤ラッシュ時とまではいかないものの、少なくとも座れる席は無い
「園崎」
俺はそう呼びかけ園崎の二の腕を掴むと、少し強引に乗ったのと反対側のドアに導く
「え、と・・・、経吾?」
園崎は少し戸惑いながらも俺に従う
そんな園崎を俺はドアを背に立たせ自分はその前に
そして右手をポールに
ちょうど園崎の身体はドアと座席のコーナーに収まり、俺の身体と腕で完全に守る形になった
こうすれば誰も園崎には近付けないだろう
こちら側のドアはしばらく開かないし
「わ、わ、追い詰められちゃった・・・、やだ、どうしよ・・・あたし、逃げられない・・・」
園崎が何かぶつぶつと呟きながら顔を真っ赤にさせて口元を緩ませていたが、車内の騒音で俺にはよく聞き取れなかった
列車は途中、数駅に停まりその度に何人かの出入りがあった
その都度、俺は注意を払うが特に怪しい人間は現れることはなく、俺の家がある駅に着く頃には車両の中はだいぶ人がまばらになっていた
「園崎、座るか?」
「・・・ほら挿れ…す…ように片…を上…ろよ・・・・ふあ、そ…な…た、立っ…ま…なん…・・・・くく・・・俺の…欲し…ん…ろ?だった…ちゃ…とそう…うふ…にお…だりして…ろよ・・・・ふぁい・・・…かり…した・・・」
「・・・園崎?」
「ふあっ!?・・・なに?けーご呼んだ?」
「あ、ああ・・・」
俺が声をかけると園崎は全身をびくんと震わせ、我に返った
園崎はたまにこんなふうに自分の世界に入ってぶつぶつ呟きを漏らしてることがある
まあ、たぶん中二的な妄想に耽ってるんだと思うが・・・
でもこんな時の園崎の表情はどこか色っぽくて、その顔を見てると性的な欲望が頭をもたげてくる
なんというか・・・そそる顔なのだ
「えっと・・・ほら、席あいてきたし座ろうぜ」
「あ、うん・・・そっか、そだね」
取り繕うようにごまかし笑いをする園崎は、また微妙にキャラ振れしていた
それともこれが素なのだろうか?
横座りの座席に二人並んで座る
俺の左側に園崎
二の腕が密着して、その体温に心臓の動悸が早まる
スペースは十分空いてるんだから、こんなにくっついて座る必要はないんだが・・・
とは言え『離れろよ』と言うのもなんだし、俺から身を離すのも惜しまれる
せっかくだから適度にこの感触を楽しむことにしよう
あくまでも適度に、だ
列車の振動に合わせ、揺れのせいを装いスリスリする程度で・・・
って、だから俺が痴漢になってどうする!?
また変なところに血液が集中してきた
いかんいかん
落ち着け俺
深呼吸、深呼吸・・・・
すはーすはー
・・・・。
隣からイイ匂いがしてきて余計に興奮してきた!
やがて列車は次の駅へ
残っていた乗客は全員降りて、乗ってくる客もいなかったのでこの車両は俺達だけとなった
・・・ふう、これで一安心だな
園崎の家は次の駅だ
電車の中は大丈夫だったから、あとは駅の中の人ごみを抜ければ盗撮や痴漢の心配は無いだろう
それにしてもノーパンだって知らされた時は耳を疑った
昨日もそうだが外見は何も変わらないのに、下にパンツを穿いてないというのは妙に興奮する
ズボンと違ってスカートだからか?
下から覗いた時に見えるであろう景色に想像を巡らし、夢が膨らむからな・・・
そんな事を思いながら隣に目をやると、俺の顔を覗き込んでいる園崎と目が合った
いつからそうしていたんだろう
睨むような疑うような目で俺の顔を見ている
まさか俺がやらしい事を考えてるのがバレた!?
その、どこか冷たい視線に心臓が縮こまる
「経吾・・・」
「はい、なんでしょう?」
思わず背がピンとなる
「お前・・・姉のマンションを出てからずっとそわそわして・・・心ここにあらずって感じじゃないか?・・・・なぜだ?」
「え?そんなこと、ないだろ」
俺はたどたどしい言葉を返すが園崎の目は細められたままだ
背中に冷たい汗が伝う
「まさかとは思うが、お前・・・・・・・・姉に惚れたんじゃないだろうな!?」
・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
「・・・・・・・・・・・・・・は?」
俺は園崎の発した予想外のセリフにポカンとする
なんでここでお姉さんが出てくるんだ?
俺は困惑して言葉に詰まる
「やはりそうなのか!?ダ、ダメだぞ。姉は!・・・た、確かに姉は美人だしスタイルだっていい。男を悦こばす術も知り尽くしている。・・・オスならば本能的にその魅力に惹かれるのは仕方ないと思う。それでも、ダメだ!・・・姉は本気になんかならないぞ。遊ばれて、捨てられるのがオチだ!」
「な、なに言ってんだオマエ?俺は別にそんなこと・・・」
「そんなこと構わないと!?遊びと割り切って、ただ快楽に溺れたいと!?そうなのか!?」
園崎は相変わらず人の話を聞かない上に思い込みが激しい
「いや、だから違うって。そんな訳ないだろ?」
園崎の剣幕に俺は当惑しつつ否定した
「本当か!?嘘じゃないだろうな!!」
そう言って詰め寄る園崎に気圧され、俺は身体をのけ反らせた
思い詰めたような、切なげに眉を寄せるその表情に妙な興奮を覚える
白い喉から首筋のラインが色っぽい
その下では前屈みの体勢により、大きく開いた襟ぐりの中が見えた
ついついそこに視線が引き寄せられる
たわわに実った二つの大きな膨らみ
それが前傾姿勢と両側からの腕の圧迫により凄いことになっていた
色といい大きさといい、まるで見事な白桃のようだ
薄桃色の柔らかそうな膨らみ
そしてその先端にある濃桃色の・・・・
・・・・。
・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・って!?
なあああああああああああ!!!!!??!!??
ち、ち、ち、ち・・・・!?
そうか!
下着をつけてないって、上もか!?
ノーパンに気を取られ過ぎてて、そちらは考えてもみなかった
それは生まれて初めて見る女の子のナマの・・・
その映像は鮮烈に俺の網膜と脳細胞へと刻み付く
激しく動揺した俺は思わず座席から腰を浮かす
その瞬間、列車がガタンと大きく揺れた
「う、・・・わっ!?」
俺の身体はバランスを崩し床の方向へと
そうか、ここはいつもの揺れる場所
「経吾っ!?」
園崎が慌てた声と共に俺に手を伸ばす
そして俺の腕を掴んで・・・引き寄せた
俺の身体は大きく軌道を変え園崎の身体の方へと・・・
ふか・・・むにゅ
顔全体が今までに感じたことのない柔らかい感触に包まれる
俺が顔を埋めたのは、もしかしなくても、いましがた目に焼き付いた部位だ
視覚に続き、触覚にも強烈な刺激を受けた俺は軽く目眩を覚える
へ、ヘブン?
・・・ああ、なんかこのまま死んでもいいかも・・・
いやいやいや!
死ぬのはまずいだろ?
でも・・・・スゲェ気持ちイイ・・・・・・・・え!?あれ!?
ちょ?待て!?息が!?
口と鼻が圧迫されて呼吸が出来ない!?
俺は慌てて顔を引きはがそうとするが何故か離れない
園崎が俺の後頭部に腕を回し、両腕で抱きかかえるようにして拘束していた
いや、これホントマジで死ぬから
このままでは本当のヘブンへと召されてしまう
この状況は嬉しいがまだ死ぬ訳にはいかない!
「・・・僕の、物だ・・・誰にも・・・渡さない・・・」
園崎が何か呟いているがそれを聞いている余裕はなかった
俺は園崎に頭の解放を求め必死に口を動かした
「モガガガ、ムガガ、モガガガ(園崎、頼む、離して!)」
「ひう!?・・・あぅン!!」
園崎が色っぽい声を上げ、腕の力が弱まる
密着した部分に空間が生まれ、俺は慌てて息を吸い込んだ
急速に酸素と共に園崎の甘い香りが肺の中に満ちる
豊満な胸の谷間から立ち上るその甘やかな香りはこれまでになく濃厚で俺は軽い目眩を覚えた
荒い息をつきながら改めて園崎を見ると彼女は真っ赤な顔で片手をその右胸の頂きに添えていた
・・・あれ?
いま必死で口を動かした時、布越しに感じた感触
唇に引っ掛かるように感じた、柔らかさの中心にあった僅かに固いグミのような感触って・・・まさか?
それを唇で弾いた瞬間上がった色っぽい喘ぎ・・・
視覚、触覚、聴覚、嗅覚と立て続けに強烈な刺激を受け、五感の全てを園崎に満たされた俺は軽い酩酊状態に陥った
五感の全て?
・・・いや、まだ足りない
味覚
俺は園崎の『味』をまだ知らない
目の前に少し濡れたように潤んだ愛らしい唇がある
その味が・・・知りたい
軽く開いたその隙間から僅かに熱を帯びた吐息が漏れるのを感じた時、俺は何かに突き動かされるように園崎の両肩を掴んでいた
園崎の瞳が驚いたように見開かれる
そして・・・ゆっくりと閉じられた
それを『肯定』と自分勝手に解釈した俺は園崎の顔へと己のそれを近付け・・・
『ぷしゅーーーー』
・・・ようとした時、車両のドアが排気音を立てて開いた
俺たちを乗せた列車はいつの間にか駅に着いていた
その事に気付いた俺達はハッと我に返り、慌ててお互いの身を離したのだった
(つづく)




