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プロミステイク ~俺と彼女の中二病的恋愛遊戯~  作者: 阿津沼一成
第1章 スプリング×ビギニング
22/90

第22話 ヤクソク ト チカイ

「経吾、昔の事に懲りてるなら・・・告白する前にはちゃんと誰かに相談するんだぞ」


園崎が俺の肩に頬を当てた体勢のまま語りかけてくる

ゆっくりとしたその言葉が肩から俺の身体へ染みこんでいくようだ


「・・・ああ、判ったよ」

俺は園崎の忠告を素直に受け入れた


「そしてその『誰か』は真友であるこの僕以外には無い・・・解るな?」

「・・・ああ」


「僕に黙って勝手に誰かに告白したりするんじゃないぞ?」

「ああ・・・しない」


「・・・よし、約束だからな」

俺の言葉に園崎は満足したように安堵の吐息を漏らす


・・・・・


・・・・・・・


園崎と抱き合ったまま、ゆったりとした時間が流れる

不思議と今度は性的な欲望は湧いてこない


なんだよ、やれば出来るじゃん、俺

そう思った矢先だった



「んあ!?や、あ、あ、ああああぁぁあああああん!」



突然園崎が悲鳴とも喘ぎともつかない声を上げた

その艶っぽい声音に反応し落ち着いていた肉体の一部が急激に硬化を始める


反射的に身を離した園崎が自分の右胸を押さえ真っ赤な顔をして俯いた


一体何が?

と困惑するが自分の胸ポケットでケータイが振動している事に気付いた


そうか、図書館でマナーモードにしてそのままだったから・・・


「ゴ、ゴメン、俺の、ケータイだ」

「あ、そか・・・、あは、び、びっくりして、お、大きな声出ちゃった、あは、あははは」


園崎が真っ赤な顔のままそう言った


・・・片方の胸の膨らみを押さえながら


慌てて目を逸らしながらケータイを取り出す

表示は家からだった


『あ、もしもし、経吾?』

「あ、ああ、俺」

思わず上擦った声が出てしまった

変に思われなかっただろうな


『アンタ今日夕飯は?友達と出掛けてるって聞いたんだけど?』

電話は母さんからだった


「大丈夫、夕飯までには、帰るから」

ばくばく鳴る心臓を押さえて途切れ途切れにそう言った


『・・・・・・・。』

「・・・・・・なに?」


『・・・・・・・・もしかして、友達ってこの前のあの子?やだ、邪魔しちゃった?』

「いえ、そんなことありませんよ」

『・・・・・・・。』


慌てて変な喋り方になった!


ブツッ


何か言われる前に通話を切った

ああ、帰ったら色々聞かれそうだ・・・


「あ、ウチからだった。ゴメンな。びっくりさせて」

「んーん、だ、大丈夫・・・。も、もう行こっか?」


園崎は気まずそうに赤面したまま立ち上がった


◆    ◆    ◆    ◆    ◆    ◆


お会計で提示された金額はやはり一般的なあんみつの約2倍だった

でも、注文したのは一つだし、仮に通常のサイズのものを二人分頼んでたとしても同じ金額になっていたはずだ


あの食べ方のことを思い出して見れば俺にとっては凄いお得だったといえる

俺から園崎へのお詫びというより園崎から俺へのご褒美みたいだった



支払いを済ませて店を出るときテーブルの一角、カップルの客が目に入った


あ、あれって


二人が食べているのは俺達が注文したのと同じもの・・・〈双月〉だろう

仲良く両側からそれぞれのスプーンでつつきあって食べている

あれはああやってカップルで食べるのが正しい食べ方なんじゃ・・・


「経吾?・・・・なに見て・・・・!こ、こら!他の客をジロジロ見るんじゃない!」

顔を赤くした園崎に怒られた俺は肘をつかまれ店から引っ張りだされた


◆    ◆    ◆    ◆    ◆    ◆


「はあぁぁ~」


夕食と風呂を済ませ自室へと入った俺はベッドに身を投げ出し深く息を吐いた


今夜は久しぶりに家族4人での食事となった

母さんは何か言いたげだったが、やはり姉さんの前では話題にする気はないらしく園崎のことを聞いてくることはなかった

ただ、ニンマリとした視線を向けてくるのはやめてほしい

早々に席を立ちたかったがせっかくの一家団欒に水を差すわけにもいかず俺は居心地の悪い時間を味わうことになった


仰向けになって蛍光灯の明かりを見つめる


今日は色々あったな・・・


脳裏にフラッシュバックのように映像が甦る


今日の園崎は・・・とても女性的な魅力に溢れる格好で


何度となく目に入ってきた・・・胸の谷間


こじんまりとした可愛らしい・・・手の平の感触


ストローやスプーンを介して感じた・・・舌と唇


抱き合った時の・・・温かくて柔らかい身体


そして・・・



『や、あ、あ、ああああぁぁあああああん!』



悲鳴にも似た喘ぐような・・・声


まだ耳の奥に残響している


『あの行為』の時も・・・

『あんな声』で鳴くんだろうか


もう一度あの声を聞いてみたい


自分の腕の中であの声で鳴く園崎が見てみたい


欲望が強烈に膨らんでいく


ダメだ!


園崎相手にそういう淫らな感情は持たないと誓ったんじゃないのか?

これじゃ、あの時の失敗を繰り返す事に・・・


あれ?

そういえば・・・


俺は今日、昔フラれた相手に偶然再会したんだった

その事は俺にとってかなりショッキングな出来事だったはずだ

フラれた時の気まずさの感覚を2年近くずっと引きずってたんだから


それなのについ今まで忘れていた

園崎との出来事のほうが強く印象に残ってたから・・・



誰か好きな相手が出来た時は隠さず教えろって園崎は言っていた

告白する前に必ず僕に相談しろ、とも・・・


もし、仮に・・・

あくまでも仮の話だが


俺の・・・


俺の好きな相手が・・・



園崎だった時は

俺はどうしたらいいんだ?


それって相談イコール告白って事になるよな


そのことをぐるぐると考えているうちに俺は眠りの中に落ちていった


(つづく)



ちょっと違う話も書いてみたくなって短編『僕のメイドは従わない』という作品も投稿してみました。

よろしかったらそちらも読んで頂けたら幸いです。

やっぱりヒロインに主人公が振り回される系の話なんですけどね・・・

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