川の事故
小さい子供が3人、小石の岸の小川がある公園の砂場で遊んでいる。
一人は小学一年生の女の子でその女の子の横には2つ年下の男の子、女の子の前に同じクラスで同い年の男の子が砂の塔を公園の中にあるすぐ近くの小川から汲んできた水に砂を含ませた泥水で塗り固めながら作って遊んでいる。
女の子は少ない髪を肩より少し長く垂らしていて、どちらかというと落ち着きのある物静かな女の子でたびたび見せる笑顔がマシュマロのようだった。
目の前にいる男の子も落ち着きがあって、同級生の男の子たちよりも大人びていて
今時女子と遊ぶ男の子なんて珍しいのに、しょっちゅう目の前にいる女の子の家を訪問してはこうして連れ出し近くの公園やちょっと自転車を出せばすぐ行けるところの公園などで遊ぶのだった。
男の子の弟にはたくさん自分と同じ年くらいの男友達がいて女の子はからかって遊ぶ対象でしかなかったが、今日は暇を弄んでおり
しっかり者の兄に甘えたくてこうやって二人と一緒に遊んでいる。
「航平これ使っていい??」
「いいよ」
彼が砂場で使うのはいつも、兄が持ってきた道具だった。
「紅里ちゃん、膝小僧に傷があるけど大丈夫??」
「あ、あれ??全然気づかなかったよ」
紅里の膝にできた擦り傷に気が付いた航平がシャベルを持っている手を止めて声をかける。
紅里は半ズボンを履いており、膝の傷を確かめると、さらにひざ下の裏に5cmくらいの切り傷が見つかった。また、右腕にも2cmくらいの傷があるのが分かった。
その様子を見ていた男の子や弟もそのことに気が付いた。
「かまいたち??」
「かまいたちって何?」
「この前サッカーやってて怪我しちゃった時にかまいたちって言われた」
紅里という名前の女の子の友達の航平の弟、隼はよく公園で友達とサッカーをしていて、よく怪我を作っては家に帰ってきた。
傷が痛むのか悔しいことでもあったのかそのうち泣いて帰ってくる率が6割くらいあった。
「かまいたちっていうのは、鎌みたいな両手の爪を持った妖怪に、人が気が付かないうちに切りつけられるってこと」
「う~ん、もしかしたらさっき昆虫探ししている時に木の枝にやられたのかも、気が付かなかったけど」
「あそっか~、さっきのところ危ない枝とか堅い葉とか茎とかで一杯だったからね。バンドエード、バンドエードオーーっと……」
航平は砂場を出て近くの木の枝にかけてあったリュックサックの中を覗いて、バンドエードを探した。しかし内ポケットにも底にも死角にもまだ見つからない。
「こーへー、まだー??」
「うーん、いつもは用意してるのにうっかりしてた」
「隼、バンドエード持ってない?」
「持ってなーい」
「家近いから私取ってくるよ」
紅里はすっくと立ち上がり、歩いて行ける距離にある家に向かうことにした。
「こーへー、川でサッカーして遊ばない?オレビーチボール持ってきてる」
「あ、いいね、遊ぼう遊ぼう」
小川は砂場の位置から簡単に見える場所にあり、小川は公園の入り口兼出口に近い所にあったので紅里に気づかれない心配はなかった。隼は自分の、航平は自分と紅里の荷物を持って小川の川辺へと大移動していったのだった。
隼と航平の持っている虫かごからけたたましい蝉の声がした。
結局ビーチボールを膨らますのは否応なく航平の役割で航平はなんの不平も漏らさずに、ふーふー言いながらしわしわのスイカのビーチボールをふくらませた。
二人が小川で遊び始めて30分ほど経った頃だった。
「おかしいなぁ、そろそろ紅里ちゃん帰ってきてもいいころなのにな」
航平は隼から蹴ってよこされたビーチボールを両手に持ち上げてつぶやいた。
「オレ、ちょっと探してくるよ」
隼はそう言い残し家へと走って行った。
航平は川辺の辺りを散策してみることにした。
航平が5分ほど川辺を下っていた時のことだった。
出口の近くの、小川の渡り石の辺りに誰かの髪の毛が浮いているのが見えた。
ここは仕切られていて遊んではいけないくらいに川底が深いところでおおよそ1mくらいはあるはずだった。
「どうしよ・・・、僕まだ背が小さいから一緒に溺れちゃうかもしれない、もしかしたら傷を負った紅里ちゃんかもしれないのに・・・」
すると、そこに隼がやってきた。
「あれ、たぶん紅里お姉ちゃんだよ早く助けなきゃ!!」
隼は「すみませーんすみませーん」と大声を上げながら大人の助けを求めた。
すると、どこからともなく現れた、中年の背の高い優しそうな男性がなにも言わないまま、なにも脱がずに川に入り、
中で川に埋もれていた少女、やはり紅里であったその少女を救い上げ、
川辺に寝かせた。
おじさんが確認したところ、幸い呼吸しており、心拍も正常のようだった。
「紅里は危険にさらされているから、おじさんがこの子を引き取るよ」
おじさんは紅里をお姫様だっこし、そのまま公園を出て行った。
「今の人しってる??」
「知らないけど紅里ちゃんの親戚でしょ??名前知ってたし」
「ゆうかいはんじゃないよね??」
「お前誘拐犯なんて言葉よく知ってんな。俺もちょっと心配。あのおじさん追跡しようぜ」
「うん!」
二人がその不思議なおじさんの後をつけていったが、そのおじさんは、薬局に寄ってなにかのぬり薬や飲み薬を買ってから紅里の家に紅里を届けるだけだった。




