第21話 不純異性交遊反対
ちょっとシリアス気味です、はい。あまりコメディっぽくないです。特に前半。すいません(-.-;)
◆第21話 美しい花には刺でも毒でもなく電波があった
放課後、朱鳥の目を盗みひとりで帰ることに成功した私。ついでに姫乃は委員会の仕事。
「後で朱鳥に怒られるかな…」
まぁ、最近は扱い慣れてきたから別にいいんだけど。
むしろ銀のほうが厄介。無駄に美形だし、エロいし、いつも余裕だし、変態だし、なんか一枚上手だし、時々キモいし。
………悪口か、これ。いやでも、本当のことだし。
「沙良?」
ひとり悩んでいたら、不意に背後から肩を触られた。首をめぐらせる。
「…純。」
「今帰り?なんなら一緒に帰ろう。」
「いいよ。」
了解の返事をすると、純は表情を輝かせ私の隣につく。
嬉しそうに見えるのは、私の気のせい?
(願望なのかも)
──いや、それはない。もうふっきったんだ。いつまでも未練タラタラなんて、私は嫌。
『好きだから、別れて』
そう告げられた時から。私は成長してる?強くなれた?
嫌いになれない。だけど、昔みたいなあの感情はないの。愛し続けるには少し、傷付きすぎた。
「沙良?」
彼の声にハッとする。
「あ…ごめん。」
「いや、俺はいいけど。大丈夫?ぼーっとしてたよ。」
「ちょっと考え事」
そう答えると、純はそっかと一言こぼし、また前を向いた。
考えている内容は聞かないんだね。平気、悲しいなんて思わないよ。
だってこれは、貴方が望んだことだから。
帰り道が、やけに長く感じた。
「じゃあ、バイバイ」
マンションに着き、お互い違う部屋へ入る。私は微笑む彼に、小さく手を振った。閉まる扉の音が、哀しく響く。
私は昔も今も、純が好きです。けれどそれは、大切な幼なじみとして。
またあの関係に戻りたいなんて、もう言わないよ。
「沙良ちゃんおかえりー♪」
扉を開けてすぐ現れた朱鳥。
「って、沙良ちゃん!なんでドア閉めるの!?」
ああいけない。つい反射的に。
っていうか、この子いつのまに帰ってたんだ?相変わらず謎が多い。
べたべた触れてくる朱鳥をスルーし、私は自室へ向かった。
腕を絡ませてくる朱鳥を強引にひき剥がし、部屋から追い出す。
「ちょ、沙良ちゃん!そこは朱鳥たちの愛の巣じゃない!なんで追い出すの!?」
無視無視。
私はふうっとため息をつき、制服を脱いだ。空気にさらされる素肌。涼しく感じる。スカートに手をかけたとき、
「ねぇ沙良ちゃん。」
ドア越しに、朱鳥が声をかけてきた。
「……なに?」
返事をしつつも、手は止めない。ホックをはずした。
「今日純くんと一緒に帰ったでしょ。」
――知っていたんだ。どこで見たんだろう。
「…純くんと沙良ちゃんって、どういう関係?」
スカートがパサリと落ち、床に広がる。
聞いてどうするのと言ったところで、この変態のことだ。まともな返事は期待できない。
ならば、正直に言えばいいんでしょう?
私はスカートを拾い、ハンガーで挟んだ。
「幼なじみだよ」
そう呟いて。
「それで、元カレ」
小さく付け加えた言葉に、朱鳥の反応はない。聞こえなかったのだろうか。
クローゼットを開けて、適当に服を選ぶ。
バンッ!
大きな音に驚いて振り返れば、目を見開いた朱鳥と視線が絡んだ。
「……元カレ?」
わたしは何も言わない。
「モト●樹の彼氏じゃなくて?」
「んなわけないだろ」
あ、ついツッコんでしまった。ヤバイな私、ツッコミ道まっしぐらだ。
「元の彼氏……?」
うるんだ瞳で見上げてくる。ちょっと、だからその上目使い反則だって。なんかものすごい罪悪感に襲われる。
「あの、朱───「どこまでいったの!?」
………は?
「A?B?ま、まさかCなの……!?」
古いよ。そしてキモいよ。変態にも程がある。
「なんであんたにそんな事言わないといけないの」
「い、言えないの!?言えないような事しちゃったの!?」
「やかましいッ!」
「いやぁぁぁぁ!否定してくれないー!」
ああもう!いちいちうるさい子だなぁ。人の傷をえぐるなって。
「……で、実際どこまでやったの?」
どこから取り出したのか、マイクを私にむけてくる。マスコミかお前は。
「どこまでも何も、その頃わたし達中学生だから」
あくまでクールに答える。
「バカにしちゃ駄目だよ沙良ちゃん。今時の中学生は進んでるんだから!」
「近い近い。顔近いって朱鳥」
「不純異性交遊反対!
ってことで───」
ボスンッ
……は?なにこの状況。
なんで押し倒されてんの私。
「ど、どきなさいよ」
「い・や☆沙良ちゃんの下着姿かなりそそられるんだもん」
ハッ、そう言えば……!
「不純異性交遊反対じゃなかったの!?」
乗しかかってくる朱鳥を押し返しながら抗議する。だけど変態にはきかないらしい。
「大丈夫。コレ不純同性交遊だから♪」
「大丈夫言わないそれェェェェェ!!」
その後わたしは、脱ぎ出す朱鳥の顔面に鉄拳を浴びせ、操をなんとか死守した。