表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/22

第17話 倒錯の世界?


誰か私を助けて……。






◆第17話 前回同様、状況確認してみよう




それは休日の昼下がりの事──



「ねー沙良ちゃ〜ん」


ベッドに寝転がり、本を読む私をつつく朱鳥。返事するのが面倒で無視してたら、沙良ちゃん沙良ちゃんとしつこく私を揺さぶる。


「……なによ?」


さすがに鬱陶しくなって、上体を起こし、床にぺたりと座りこむ朱鳥に尋ねた。


相手にされたのが嬉しかったのか、朱鳥はパッと表情を輝かせる。


そして放った言葉はコレ。


「ひ・ま」


「…………」


「あぁ、シカトしないで!」


再び本を読み始めた私に焦る朱鳥。それさえも無視してると、本を取り上げられた。


(もうっ、良いところだったのに!)


渋々私はうるさい彼女の方へ向く。


「暇なら翠くんと遊んでくれば?」


「翠は買い物。今日はタイムセールなんだって」


……どこまであの子は家庭的なんだ。

家事もほとんどやってくれるし。嬉しいけど、私の料理の腕落ちそうだな。


「ね、だから沙良ちゃん一緒に遊ぼ?」


濡れた瞳で上目使い。演技と理性では分かってるんだけど、ぐっとくる。

可愛いなぁ……。


「聞いてる?沙良ちゃん」


首をかしげ、顔を近付けてきた。だから、あんたのアップはヤバイんだって!


「沙良ちゃん、顔赤い」


赤くもなるでしょうが!猩色族だかなんだか知らないけど、なんでそんな無駄に美少女なの!?


「いやん、それほどでも♪」


!? 心読まれたっ!



「ふふ。ね、遊ぼう……?」


いつもより数倍甘い声で耳元に囁かれる。体がゾクリと跳ねた。


朱鳥がベッドに乗り上げ、ゆっくりと私の肩を押してゆく。背中が柔らかい布団に触れて。朱鳥は私の足を跨ぐように四つん這い。


「ちょっ──」


上から見下ろされ、心臓が高鳴る。慣れない角度。


(いや、何この状態。なんで私朱鳥に押し倒されてるわけ?)


思考が上手く回らない。

彼女の綺麗な微笑に、背筋がゾクゾクする。そして、次第に朱鳥の顔が近付いてきて────。


「って、ストップストップ!アンタ何しようとしてんのよ!?」


「そんな野暮な事聞かないでvV」


私は本能的に身の危険を感じた。


(お、犯されるぅぅぅぅ!!)


「いやぁー!翠くん助けてぇぇぇぇ!」


「翠は買い物中」


「主婦かあの子はぁっ!!」


なんで肝心な時にタイムセール!?誰かコイツを止めて!


朱鳥は慌てふためく私を見て、クスクスと笑う。チクショー殴りたい。だいたいこの変態、なんかやけに怪力なんだけど?


「沙良ちゃん、可愛い」


そう言って、朱鳥は私の頬にチュッと音をたてて軽くキスする。


「……ッ」


一瞬のその感触に、肩が揺れてしまった。


(私、ノーマルなのにぃっ)


そっちの趣味はない。


そもそも、今まで手を出された事はなかったのに、なんでいきなり……。過去最高のセクハラも、言葉だけだった。いや、アレとかソレとかは銀だったし。


あり?もしかして銀の時のほうが変態度アップしてる?



「って、結局はどっちも変態じゃん!」


私はそう叫び、朱鳥の顔を押し返す。


「おとなしくして沙良ちゃん」


「できるか!──あっ」


振り回した腕が、朱鳥の手によってベッドに縫い付けられた。布団が乱れ、シーツに皺ができる。


(え、何コレ。そういう展開?そういう展開なの!?)


汗ダラダラの私とは対照的に、笑顔満面の朱鳥。なぜそんな楽しそうなわけ?


「あ、朱鳥……待って」


「い・や♪」


こっちが嫌じゃボケェェェ!


心の中でツッコミを入れている間にも、朱鳥の顔が再び下りてくる。


「いただきまぁ〜す」


「───ッ」


もうダメだ、そう思ってきつく目を瞑った瞬間


ガラッ


「沙良〜、入るよぉ?」


扉の開く音と、ゆったりとした緩いソプラノが顔を出した。


「ひ、姫乃」


「あ……、おとりこみ中だった?」


私達を見て、扉を閉める仕草をする姫乃に向原私は必死に首を振る。よく分からないけど、こんなにもグッドタイミングなんだ。去ってもらっては困る。っていうか、この変態と二人きりは嫌だ。


「ほ、ほら朱鳥!姫乃来たから退いてっ」


「え?自分は見られてても気にしな──ぐはぁ!」


危険なことをほざく朱鳥の腹に、蹴りをかましてやる。かなりの力を込めたからか、朱鳥はお腹を押さえてのたうちまわった。


(調子乗りすぎだバカ)


涙目の彼女を横目で睨み、私は体を起こす。

きょとん、とした表情をしてる姫乃を手招きした。


「相変わらず愛されてるね」


姫乃はストン、とベッドの上、私の隣に座りながらそんなことを言ってのける。私はため息混じりに


「からかわれてるだけよ」


と返した。


だってこんな変態、どうせ私じゃなくてもいいんだよ。人をおちょくるのが好きなだけ。


(そんなのに巻き込むなっつーの)


生憎、倒錯の世界に興味はない。いや、銀ならいいって訳じゃないよ?


「酷いよ沙良ちゃ〜ん」


私のふくらはぎに腕を回し、膝に頬をすり寄せてくる。

チッ、もう復活したか。治癒力高ぇな。



「ところで姫乃。なんで私の家に?」


気になってた事を聞く。いや、迷惑なんかじゃないけど。むしろナイス。


「えっと、ケーキ焼いたから食べてもらおうと思って」


そう答え、持っていた箱を私に渡す。う〜ん、ケーキ焼くなんて女の子らしい。本当かわいいわこの娘。


ありがとう、とお礼し、私は箱を開けた。中にあったのは、美味しそうなベリーパイ。色鮮やかで、キラキラした光がとっても綺麗。


「わぁ、すごい。早速食べよ!」


私が立とうとした時、


「ただいまです」


ガチャッ、という音と共に玄関から聞こえてきた。


「あ、翠帰ってきた〜」


そう言って、朱鳥はパタパタと彼のもとに走っていく。ああ、やっとタイムセールから帰ってきたのね。夕飯、なんだろう。


「沙良、ミドリって誰?」


首を傾げる姫乃。

……また説明しなきゃ駄目?







あーなってこーなってこーなったのォォォ!

ちょっとお色気♪前回とは打って変わって、朱鳥攻め攻めです。次回に続きますよ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ