第11話 満月のチカラ
悪夢どころか地獄だわ
◆第11話 休日って休む日って書くのに、平日より疲れたぞ
―事件は起こった
「…ねぇ。」
「何?沙良。」
「今11時だよ。」
「知ってるけど。」
「猩色族って、昼と夜で性別変わるんだよね?」
「うん。」
「じゃぁ、なんでまだ男なんだよー!!?」
そう、アス…じゃない、銀はもう昼近くになったというのに、今だに男なのだ。
話違うじゃん!
「ん?ああ、今日は満月だからね。一日この姿だよ。」
「嘘!?止めてよ冗談じゃない!」
「うん、冗談じゃないよ。」
「え、いや、まぁそうなんだけど…。」
何コイツ天然!?相手しにくいんだけどッッ。
「ところで昼食まだ?俺松坂牛がいいな。」
あはは♪テメェ独りで食ってこい。
「最近沙良の手作りも飽きてきたしな〜。」
殺っていい?殺っていい!?
「あ、そうだ!たまには外食しよう!」
―は?
「いいよな、沙良。」
ぐはっ!眩しい!笑顔が眩しいよ銀!直視できねェェェェェェェェェ!!
「って事で行こう!!」
「えっ、ちょっ…!」
私は腕を掴まれ、外へと引っ張られた。
(すごい力あるな。振りほどけない。…やっぱり男なんだ。)
改めてそう認識すると、頬が熱くなる。こんな美形に手を取られるって、思えばすごいじゃない。っていうか、これってアレ?デートってやつ?え、え、えぇぇぇぇぇぇぇぇ!!
カラン
私と銀は喫茶店に来た。いや、正しく言えば連れて来られた。
っていうか、いつまで手繋いでるのよ!!
「いらっしゃいませ。何め……」
現れたウェイトレスはお決まりの言葉を途切れさせ、真っ赤な顔して銀を見つめる。…みとれる、の方が合ってるか。まぁ、気持ちも分からなくないけど。
「二人。」
「あ、は、はい!」
銀の声で我に返ったらしく、席に案内という仕事をするウェイトレス。
私達が席に着いても、ウェイトレスはチラチラ見てくる。恥じらっちゃって、可愛いなぁ。ん?アレ?なんか親父くさい?
ってか、なんか視線感じるんだけど。ただでさえ変わった髪と瞳なのに、美形だから尚更見られるよ銀。
「こんなところクラスメイトに見られたら大変だわ…。」
「なんで?彼氏って紹介してよ。」
「誰がアンタみたいな奴、もとは女じゃない。」
そう冷たく吐き捨てると、銀はおや?と、首をかしげる。私別に変な事言ってないよね!?
「心外だなぁ。沙良はいつも俺の事、女と見てたのか?」
「そ、そんな事―」
っていうか、顔近い!だいたい普通食事するなら前後に座るんじゃないの!?なんでコイツは隣に座ってるッ!
「確かに俺はまた明日から女でいる時間が長いけど、本当は女とか男とかじゃないよ。」
「えっと……。」
「昼は女で夜は男。同一人物だけど、性別ははっきり区切られてるさ。」
そう言って銀は、顔を更に近付かせ私の耳もとで囁く。
「だからちゃんと男として見ろよ。」
「ッ!!」
あまりに熱っぽい声だから、体中の温度が上がる。きっと今の私の顔は、真っ赤なんだろう。
(銀と暮らすには、顔色を制御する術を覚えなきゃ…。)
我ながら情けない。でも、あの朱い瞳で見つめられると、頭がぽーとしてしまうのだ。
少し離れた銀を、チラリと見上げる。ニタニタと、人の悪い笑顔を浮かべてた。
「…何がおかしいのよ。」
「いや、可愛いなと思って。」
「はぁ!!?」
「で、俺の説明理解した?」
「―3分の1くらいなら。なんか私には難しい。」
ため息をつきながら言う。だっていまいち分からない。つまり銀は男なのよね?う〜ん、中途半端な奴。異界人だから仕方ないのかもしれないけど。
「ようは朱鳥は女で、銀は男なんだよ。簡単な事だろ?」
「……簡単だかなんだか知らないけど、この手は何?」
今の状況、銀に肩抱かれてます。しかも、もう片方の手は私のももに―…。朱鳥はともかく、アンタがやったら完全、犯罪だよ!猥褻行為で訴えるっちゅーの!!
「親睦を深める為には、スキンシップが1番。」
「アンタの場合、ただのセクハラよ!?」
「堅いこと言わずに♪」
「ちょっと、いい加減──!」
さすがに気持ち悪いので、水をぶっかけようとしたとき、
「沙良?」
私を呼ぶ声が。
クラスメイトだなぁ、とか
親しい奴だなぁ、とか
男子だよなぁ、とか
そんな考えがマッハで脳をかけ巡った。
銀朱鳥に私の幸運、吸い取られてない?
激甘ッッ!!しかもコメディーじゃないし!糖分多すぎました。虫歯になった人、ごめんなさいm(_ _)m
次回も恋愛要素多いかも……