プロローグ
―ここは異世界。
たくさんの特異種族が暮らしている。翼を持つ者、自然の力を司る者、何千年も生きる者など…。
そして、この世界の全ての住人が魔法を使えた。
その中には、猩色族という種族がいた。ある事件がきっかけで、今は数少ない種族である。また、この猩色族も例外なく、特異体質であった。
◆プロローグ◆
「朱鳥、何処行くんだ?」
「ちょっと月夜湖に。」
「じゃあ俺も…」
「ダメ。一人でランデブーするんだ♪」
「……。」
朱鳥と呼ばれた者は、朱色の髪を揺らし、スキップしながら外へと出ていく。外見からして、15、16歳ってところだ。
そんな朱鳥を冷ややかな眼で見ているのは、青い頭をした青年。見た目、さわやかフェイス。
「一人じゃランデブーにならないよ。」
コツン、と黄緑色した髪の少年が朱鳥の頭を軽く叩いた。
「あら、翠。」
「それに、もうすぐ夜になっちゃうし…。」
「あっ!それは危ない!かわいい私は襲われちゃうわvvキャー怖い!だから男って嫌。もう私に近付かないで。」
「なんでそうなるんだよ!」
「ぅわ、翠サイテー。」
「何こいつら!ムカつくんだけどぉ!」
無茶苦茶な言葉に、ツッコミをいれるのは彼女の弟、【紫音翠】。
そして冷めた目で翠を罵るのは、この二人の兄である、【黒夜青空】だ。
「まぁ、それはどうでもいいとして…」
「ヒドっ(涙)」
「じゃあ私行ってくるから〜。」
「無視!?」
――――――――――――――
太陽は沈みかけ、薄暗い空には星がいくつか光っていた。
「今日は月が明るいし…。狼男なんかに会ったらやだなぁ。」
朱鳥は湖の前に立って、中を覗いていた。
「ぅ〜ん…幻想的。」
(―これなら、あの伝説もあながち嘘じゃないかも。)
いつのまにか太陽は消え、西の空には満月が顔を出している。
「…そろそろかな。あぁもうっ!猩色族って面倒くさいィ!まぁ私は才色兼備だから文句言わないわvvぁあ、私って何ていい女なの♪」
自画自賛する朱鳥。ついでに才色兼備の意味を理解せずに言っている。
風が吹き、木々がざわつく。ふと、背後に気配を感じ振り向こうとした時、背中を思いきり押された。
「わっ!ちょっ…!」
大分近付いて覗いていた為、簡単に湖へと落ちる。
バシャンッ!
水しぶきが舞い、朱鳥はここから姿を消した。
「見極めなさい。」
突き落とした張本人はそう呟き、風と共に去っていった。
しかし、落とされた朱鳥はそんな事知るよしも無く、
(この朱鳥様を突き落とすなんて一体誰だ!無理心中でもする気かちくしょー!)
などと、遠のく意識の中思っていた…。
全ての物語は、ここから始まる