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第二話 書くたび、修羅場

カチャ。


ドアが開く。


「まだ起きてる?」

パジャマ姿の凛が顔を出す。


なぜいる。


そうだ。さっき書いたんだ。


『午後六時、幼なじみの佐伯凛が家に来た』


帰る描写を書いていない。


つまり――


イベント継続中。


「ちょっとあんた、さっきから挙動不審すぎ」


「い、いやなんでも」


俺はノートを閉じようとする。


が。


凛がじっとこちらを見る。


「……なんか隠してない?」


怖い。


この能力、バレたら人生終わる。



俺は布団の中でこっそり続きを書いた。


『凛は主人公に対して、昔から特別な感情を抱いている』


沈黙。


何も起きない。


……あれ?

成立してない?


抽象的すぎるのか?

なら、具体的に。


『凛は、俺のことが好きだと自覚している』

次の瞬間。


ガタッ。


凛が立ち上がった。


「ちょ、ちょっと外の空気吸ってくる!」


顔が真っ赤。

ドタドタと階段を駆け下りる音。


俺はゆっくりノートを見た。

成立した。


怖。



翌日、学校。


凛の様子がおかしい。

目が合うと逸らす。

近づくと距離を取る。

なのに、俺が他の女子と話すと睨む。


完全に“好きな幼なじみ”ムーブ。


「お前らなんかあった?」

とクラスメイト。


「いや、何も」


俺は笑う。

笑いながら思う。

俺が書いた。

俺が作った。


これ、恋愛って言えるのか?



昼休み。


編集からメッセージ。


《恋のライバルも欲しいですね!売れます!》


やめろ。


そんな危険ワード。


俺はノートを睨む。


……実験だ。


『主人公の前に、完璧な転校生が現れる』


キーンコーンカーンコーン。


五時間目開始。


担任が入ってくる。


「今日から転校生が来る」


早すぎる。朝やれよ。


ドアが開く。


黒髪、長身、整った顔。


非の打ち所がない。


「白石蒼です。よろしく」


女子ざわつき。


男子沈黙。


凛が俺を見る。

俺も見る。


完全にやらかした。



放課後。


蒼が俺の席に来る。


「君、作家なんだって?」


笑顔が眩しい。


「まあ、一応」


「へえ。面白いね」


距離が近い。

おい。

書いてないぞそれ。


ノート確認。


『転校生は主人公に強く興味を持つ』


書いてた。

俺のバカ。


凛が間に割って入る。


「ちょっと、何の用?」


空気がピリつく。


俺は理解する。


恋愛小説を書くたび、現実が濃くなる。


三角関係、成立。



その夜。


机に向かう。

このままだと修羅場一直線。


なら、穏やかにまとめればいい。


『三人は落ち着いて話し合うことにした』


翌日。


なぜか放課後、人気のない教室。

三人着席。


沈黙。


話し合い開始。


え、強制イベント?


凛が口を開く。

「私は……」


蒼が続ける。

「僕も……」


待て待て待て。


俺はノートに慌てて書く。


『まだ告白はしない』


二人、同時に口を閉じる。

助かった。


が。


蒼がにこりと笑う。

「じゃあ、フェアにいこう」


凛が睨む。

「望むところよ」


俺を見る二人。


「どっちを選ぶの?」


書いてない。

これ書いてない。


なんで自発的に進化してるんだよこの物語。

俺の心臓がうるさい。

能力は恋を生む。


でも。


選ぶのは――俺?


ノートの白紙が、やけに重い。


ペン先が震える。


『主人公は――』


そこでインクが止まる。


書いたら、確定する。


俺はごくりと唾を飲み込んだ。


この能力。

便利だけど、


めちゃくちゃ怖い。


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