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婚約破棄された公爵令嬢は、無能扱いの第二王子の政務を支えることになりました ~捨てた第一王子が後悔しても、もう遅いです~  作者: 藤宮レイ


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第20話 第一王子の選択

 第一王子アルノルト殿下は、不機嫌そうに執務机を指で叩いていた。


「……つまり」


 低い声が、室内に響く。


「第二王子のところは、“思想”まで評価されたということか」


 側近たちは、即答できなかった。


 事実としては、その通りだ。

 だが、それをそのまま口にするのは、躊躇われる。


「評価というより……記録です」


 ようやく、ヴェルナー・シュタインが口を開いた。


「監察官は、善悪を裁いてはいません。ただ、残しただけです」


「同じことだ」


 アルノルト殿下は、吐き捨てるように言った。


「記録は、後で“評価”に変わる」


 それを、彼自身がよく分かっている。


「なぜ、今になってだ」


 問いは、誰に向けられたものでもなかった。


「これまで、何も問題はなかったはずだ」


 ヴェルナーは、慎重に言葉を選ぶ。


「問題は……起きてから処理されていました」


「処理できていたなら、十分だ」


「殿下」


 ヴェルナーは、一歩踏み出した。


「もし、今からでも――」


「ならぬ」


 即座に、遮られる。


 アルノルト殿下は、椅子から立ち上がった。


「第二王子のやり方を真似ろと?」


「いいえ」


 ヴェルナーは、首を振る。


「思想ではなく、仕組みの部分だけでも」


「それが問題だ」


 アルノルト殿下は、苛立ちを隠さなかった。


「仕組みを変えるということは、今までのやり方を否定することになる」


 彼の言葉は、半分は正しい。


 そして、半分は――恐れだった。


「私は、間違っていない」


 その声は、どこか自分に言い聞かせるようだった。


「これまで国は回ってきた。私のやり方で」


 ヴェルナーは、拳を握りしめた。


 ――ここが、分岐点だ。


 そう、分かっている。


「……殿下」


 それでも、最後の忠告を口にする。


「監察官は、今後も記録を続けます。今からでも――」


「十分だと言っている」


 アルノルト殿下は、背を向けた。


「余計なことはするな」


 その一言で、すべてが決まった。


 ヴェルナーは、それ以上何も言えなかった。


 同じ頃。


 第二王子殿下の執務室では、静かな時間が流れていた。


「第一王兄は、変えない」


 殿下は、報告を聞き、そう言った。


「はい」


 私は、短く答える。


「なら、こちらも変えない」


 殿下の視線が、私に向く。


「君のやり方で行く」


 その言葉は、信頼だった。


 同時に、覚悟でもある。


 私は、静かに頷いた。


「……いずれ、差は広がります」


「分かっている」


 殿下は、穏やかに言う。


「だからこそ、焦らない」


 その落ち着きが、今は頼もしい。


 一方、第一王子の執務室では、重い空気が残っていた。


 アルノルト殿下は、窓の外を見つめている。


 王都は、変わらずに動いている。


 ――自分が、正しい。


 そう信じたい。


 だが、その背中には、

 静かに“選択の重み”がのしかかっていた。


 この日、第一王子は選んだ。


 変わらないことを。


 そしてそれは、

 最も危険な選択でもあった。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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