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婚約破棄された公爵令嬢は、無能扱いの第二王子の政務を支えることになりました ~捨てた第一王子が後悔しても、もう遅いです~  作者: 藤宮レイ


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第18話 同じ監査、違う結果

 第一王子アルノルト殿下の管轄に、監察官が入ったのは翌日のことだった。


 王宮内でも指折りの広さを誇る執務区画。

 人員も多く、帳簿も揃っている。


 形式だけを見れば、何の問題もない。


「こちらが、昨年度分の管理報告です」


 第一王子派の財務補佐官、ヴェルナー・シュタインが前に出た。

 落ち着いた所作。無駄のない説明。


 有能な官僚だと、一目で分かる。


 アーデルハイト監察官は、例によって無言で帳簿を受け取った。

 ページをめくる速度は、昨日と変わらない。


 沈黙。


 だが、その空気は、どこか違っていた。


「……数値は、基準内です」


 しばらくして、監察官が口を開く。


 ヴェルナーは、わずかに頷いた。


「当然です。問題があれば、既に是正されています」


 それは事実だった。

 ミスは、起きている。

 だが、致命的なものはない。


 ――ただし。


「是正の経緯を」


 アーデルハイトの声は、変わらない。


 ヴェルナーは、一瞬だけ言葉を選んだ。


「……その都度、担当者に指示を出しています」


「その都度、ですか」


「はい」


 監察官は、帳簿に視線を落とす。


「記録上、修正の内容が統一されていない」


 淡々とした指摘。


「同じ種類のミスに、異なる対応がされています」


 ヴェルナーは、すぐに答えた。


「状況に応じた柔軟な判断です」


「柔軟、ですか」


 アーデルハイトは、否定も肯定もしない。


 ただ、書記官リヒャルトが静かに記す。


 《対応:属人的》


 その一行が、紙の上に残る。


 第一王子アルノルト殿下は、黙ってやり取りを見ていた。


 苛立ちを表に出さないのは、彼なりの矜持だ。


「問題は、ないのだろう?」


 殿下が、低く問う。


「はい」


 ヴェルナーは、即答した。


「現時点では」


 その“現時点では”が、空気に引っかかる。


 アーデルハイトは、帳簿を閉じた。


「確かに、即座に是正されています」


 一瞬、場が緩む。


 だが、次の言葉が続いた。


「しかし、再発防止の痕跡が薄い」


 静かな断定。


「人が変われば、同じ問題が起きる」


 それは、責めでも非難でもなかった。


 ただの、観察結果。


 書記官のペンが、止まらない。


 《再発防止策:未整理》


 ヴェルナーは、内心で息を呑んだ。


 ――同じ監査だ。


 だが、昨日とは、まるで違う。


 監察官は、最後に一言だけ告げた。


「現状維持は、評価できません」


 それ以上は、何も言わなかった。


 監査が終わり、部屋に重い沈黙が残る。


 アルノルト殿下は、しばらくして口を開いた。


「……細かすぎる」


 ヴェルナーは、慎重に答える。


「制度を見る者には、重要な点かと」


「だが、結果は出ている」


 殿下は、そう言い切った。


「今まで、問題なく回ってきた」


 その言葉に、ヴェルナーは何も返せなかった。


 一方、その頃。


 私は、自分の執務室で、いつも通り資料を整えていた。


 第一王子側の監査結果は、まだ伝えられていない。

 だが、空気で分かる。


 ――同じではない。


 やり方が違えば、

 見えるものも、残るものも違う。


 私は、ペンを置き、静かに思う。


 比較されることを、もう恐れていない自分がいる。


 同じ監査。

 違う結果。


 その差は、

 これから、さらに広がっていく。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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