表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恭介くんの数奇な生活  作者: 熊海苔
第2章 新大陸侵攻
63/65

相手のいない愛 2

 猪の肉も食べ終わり、一息入れていた時である。

 レアスとフェスティアが会った時間も夕刻という事もあり、レアスが焚き火をしようとしたが、フェスティアが手でそれを制した。


「待って下さい」

「……あっ、そうか。追われる身だったな」

「はい。ここの近くに隠れ家があります。そこならば、日が暮れてからでも火をおこす事が可能です」

「じゃあ、そこに移動するとしよう」


 流石に寒いしな…と付け加えるとフェスティアに続く。暗い雲が月を隠し歩く道筋は暗く心許ない。

 サクサクと草を踏む音だけが耳へ響く。

 吹き荒ぶ風が、レアスの白い髪を弄ぶ。それを押さえながら、フェスティアの後ろを進んでいると大きな洞窟があった。

 風の流れを感じるため、出口のない洞窟という訳ではない様だ。つまり、この場所が見つかった場合でも逃げ道は確保済みなのだろう。

 なるほど、用意周到だな。口元が緩む。自覚はあるが、どうにも堪えられない。彼女は是非とも仲間に加えたい人材だ。おそらく、先日仲間に加えた涼は作戦などなく突っ込むの関の山だろう。だが、優秀な指揮官が居れば、そのような事も起こらなくる。さらに、優秀な指揮と一騎当千の旗本が居ればどうだろう?羊に率いられた千の獅子より、獅子が率いた千の羊の方が優秀な動きをし、敵に多大なる被害を与えるだろう。レアスは目の前に居る敵を薙ぎ倒す事のみに専念し、フェスティアが指揮。鬼に金棒だ。

 今後の事について考えを馳せさせていたレアスが視線を上げると、天井にぽっかりと開いた大穴から天へ天へと身を伸ばす巨木が立っていた。その根元ではすでに、フェスティアが焚き火を点け薪をくべ始めていた。どうも、レアスは考え込み過ぎて、着いたのすら気付いていなかったようである。


「おぉ、立派な木だな」

「ええ、でももう生きてはいませんよ。中が空洞でしたから」

「なおさら、すげぇな。外だけ腐らず残ってるんだろって……なんだ。生きてんじゃん」

「え?でも、中は……」

「そういう品種って事は考えられないのか?ありえるぞ」


 なるほど……と考え込むフェスティアを傍目にレアスはずかずかと巨木の中へと侵入を果たす。上の方まで空洞が続いているようで、梯子が中に点在している。梯子を登り切ると無理矢理開けたと思しき穴と、その先に見える寝所があった。大きな葉をベースに枯れ葉を敷き、さらに掛け布団代わりにまた大きな葉を被る簡単かつ寒さをしのぐ作りだ。

 遅れて登ってきたフェスティアが幹の割れ目からひょっこり顔を覗かせると、少し疑問気な表情を浮かべた。


「えっと、どこで寝るんですか?」

「これの入り口」


 あっけらかんと言うレアスにフェスティアはハトが豆鉄砲をくらった様な顔になった。クスリと笑うと何も言わずに下へ降りて、眠る準備を始めたのだった。


****


 翌朝。日が昇り始めるよりも先にレアスは目を覚ました。スッと鋭く辺りを見回す。動く気配が3つ。

 洞窟入り口あたりに1、木の周りに2だ。どうやら、へっぽこ兵士ではなく高度な訓練を受けた精鋭らしい。なるほど、元大隊長を相手にするならば事足りるだろう。だが、そこにイレギュラーであるレアスが割り込んできたら、はたして任務を遂行する事が出来るだろうか?


「おい。敵が来たぞ。数は3、舐められたもんだな」

「いえ、相手は精鋭のようです。私相手には妥当でしょう」

「俺が相手なら?」

「そうですね……私の指示に従って頂けますか?」

「無論だな」

「分かりました。では――」


 細かく、だが簡素に説明するとレアスは一つ頷き、そっと気付かれないように隠密行動で巨木から出て崖へと登っていく。片手にはフェスティア手作りの弓を持っている。

 ある程度の高さまで登り切ると矢筒から牙を矢じりにしたものを取り出し弓を引き絞った。きりきりと弦が悲鳴を上げるがそれを無視して狙いを定める。

 矢を放すと鋭い風切り音を残して洞窟入り口そばに居る兵士の目の前へ着弾した矢じりに仕込まれていた火薬が衝撃で発火。小さな爆発音を発した。その音に反応した残り二人がその場へ来た。

 そこへフェスティアがサーベルを抜き放ち躍り出た。左手にはナイフが3本握られている。

 着地と同時に投擲。3本のうち1本が一人の肩に刺さった。流石に不安定な体勢での投擲では命中する確率なんて下がるのは普通だろう。敵は二人だけと考えてもよい。ただ、問題は残り二人の力量だ。彼女一人ではギリギリ二人倒せるかどうかだろう。

 左右へ散開し、挟撃しようと試みる精鋭に対し勝つ方法はありきたりながら出鼻をくじき自分のペースへ持ち込む事が最優先である。フェスティアは左へ行った精鋭へサーベルを振り上げ肉薄する。鋭く振り下ろした斬撃をダガーの刃で逸らし斬り返す。それをスウェーで避け剣撃を繰り広げる。甲高い金属音と火花が散る。

 剣撃を繰り広げる二人の後方からもう一人が後ろから追い打ちをかけようと忍び寄る。

 だが、


「おいおい。それくらいにしとけよ。なあ?」

「ッ!?」


 神魔刀を肩に担ぎ、小馬鹿にするような笑みを浮かべ精鋭の一人に対し中指を立てる。切っ先を地面に向ける。レアスがニヤリと笑うと同時に精鋭の一人が殺気を溢れださせ、姿勢を低く下段より鋭く切り上げた。

 レアスはそれを避けようとする動作すらせず、刃の腹を横から蹴り飛ばし軌道をずらし二段目の蹴りを精鋭の顔目掛けて放つが、ギリギリでそれを避け後方へ距離を取った。


「ヒュー。やるねぇ、んじゃコッチも武器を使わせて貰いましょう……かっと!!」


 開けられた距離を一瞬で詰め上段から袈裟に振り下ろす。途中までは緩く、一気に鋭く振り下ろす。緩急を付ける事で精鋭の感覚をずらさせる事が目的だ。案の定、リズムをずらされた精鋭はタタラを踏み、そこへ容赦なく神魔刀は振り下ろされた。左首元から右脇腹へかけて文字通り一刀両断された。


「あっさり系精鋭的な?どうだ、そっちは?」

「話…かけないで……下さい!!」


 ダガーを押し返しながらフェスティアは答える。ギリギリそうではあるものの、何ともならなさそうという訳ではないようだ。


「助けは?」

「いりません!!」


 速攻で断られた為、レアスは少しばかり意気消沈。

 そんな事は露知らずフェスティアは精鋭と剣撃の応酬を繰り広げる。時に鋭く、時に緩やかに斬り合いを続ける。


「貴方では、私に勝ち目はありません。退きなさい!!」

「っ!」


 フェスティアの怒声に精鋭がびくりと反応したところで距離を詰める。咄嗟にそれへ反応した精鋭はダガーで斬りつけようとした。

 が、それよりも先にフェスティアのサーベルが精鋭の右腕を捉えた。二の腕を浅く切り裂き、二撃目の突きが精鋭の頭を突き刺した。

 荒々しく響き渡っていた戦闘音は消え虫達の合唱が聞こえてくるほど静かだ。少し息を荒げてはいるもののフェスティアは無事そうだ。


「作戦通り――とはいきませんでしたが、助かりました」

「お役に立てて光栄ですとも大隊長殿」

「いえ、私はもう隊長の身ではありません。それに柄にもなく貴女と共に戦うと興奮しました。昨日の件、是非ともお受けしましょう」

「よっしゃ、なら、ちょいと待ってろ。準備すっから」


 涼の時と同じく地面へ魔法陣を描きフェスティアへ例の力を与えた。これで二人目、戦力としてはまだ心許無いもののそれなりに整ってきた。

 つまり、あと一人でも居ればなんとかなるレベルだ。もっとも、6割以上はレアスが相手をする計算だが。そればかりは、もとからレアスの頭の中では決定事項である為、そこらへん揺るがない。

 去り際、フェスティアに呼んだら来いよ。と伝えてから、次に行く場所を悩み始めた。いっその事トウハにでも行くかなぁ。なんて考えたりしてから、それを割りと本気で考え始める。村正ことダーインスレイヴを回収しに行くのもいいだろう。そうすれば、ついでにプラスで仲間は増やせる。


「まあ、おいおい考えるか」


 結局のところ行き当たりばったりで行くのレアスなのである。

 少し投稿が遅れてしまいました。申し訳ないです。

 さて、今回ですが見事女隊長フェスティアさんを仲間に引き入れた恭介くんですが、もう一人+αを仲間にしてから喧嘩をふっかけるつもりです。さすが、最強系主人公。

 とまあ、これくらいにしておいて謝罪を一つ。“ひ弱なヒーロー 1”にて暗いお話になるぜ!とか言っておきながらぜんぜん暗くないお話しかかけていない私を許して下さい。

 もう一つ。第1章の事なのですが、改修中とあらすじに書いております。それで、1人称から3人称にしようか悩んでおります。できれば、読んで下さっている人の意見が欲しいです。協力お願いします。


 では、次回お会いしましょう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ