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恭介くんの数奇な生活  作者: 熊海苔
第2章 新大陸侵攻
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思惑と再会

 金属同士がぶつかり合う快音が響き続けている。神魔刀を自らの手足の様に操り達也を翻弄する恭介に対し、達也はバットでギリギリ恭介の斬撃を防いでいた。

 と、快音が治まり鍔迫り合いが始まった。ギリギリと火花が散る。


「この…っ!!」

「おいおい。どうした?この程度か?」

「なめる…なぁあ!!」


 声を張り上げ気合いを込める。バットを押し込み一気に振るう。


「おぉ!?やるねぇ。そんじゃ、もうちょい本気を出すぜ?ついてこいよ?」

「なっ!?」


 追撃したバットが宙を切った。恭介にかすりもせず地面をへこませた。一瞬間を置いて後ろから殺気と共に神魔刀が達也に襲いかかった。


「このっ!!」


 我武者羅に振ったバットが恭介の袖を掠った。流石に、この事には恭介も驚いていた。前回のユーランド戦の時の腕前があれだったのにもかかわらず、今回傷とまではいかないものの攻撃を当てたのだから。


「へぇ…」


 少し真剣な表情となった恭介が神魔刀を可視速度ギリギリで振るった。風切り音には気付いた達也だったが、その太刀筋が逃げる事は出来ない。

 そのまま達也の首を――――


****


 ユーランド城の一室で、ほくそ笑んでいる人物が居た。その机の上には几帳面なのか、綺麗に整頓された書類が積み上げられている。


「……おそらく、勇者が居る別動隊はアカーシャの悪魔に潰されているだろうな。ふむ、不穏分子と成りえる芽は摘まないとな」


 男の顔が醜く歪み笑い声が部屋に響いた。


****


 いつまで待っても来ない斬撃に達也は閉じていた目をゆっくり開いた。


「え?」

「なんだ?殺されないのが驚きか?」

「なんで殺さないんだ?俺は敵だぞ?」

「だってさ。亜矢どうする?この野球バカ」

「亜矢?え、なんでここに?」


 状況が上手く理解できていない達也の目の前に亜矢が姿を見せた。


「おひさー、元気だったー?」

「亜矢!?なんで!?」

「んぁー、そこは俺が説明するわ。久し振りだな達也」

「俺はこんな奴知らないぞ!」

「ひっでーな、おい。行方不明のダチの顔を忘れたのか?」

「友達って……」

「そ、恭介なんだよねー。美人でびっくり!」


 亜矢がわざと恭介を見た目で褒めたてると、恭介はムスッとした顔で不貞腐れた。その光景に達也が目を点にして固まっていると、少し、ほんの少し心配したのか恭介が顔を近づけた。

 途端に傍目からでも分かるほど達也が赤面した。


「どうかしたか?顔真っ赤にして」

「な、なんでもない!」


 達也の反応を見て亜矢がニヤニヤと人の悪い笑みを浮かべ、恭介は恭介で亜矢の笑みと達也の赤面の理由が分からず首を傾げているだけ。

 そんな他愛ない会話を、また始めようと達也が口を開こうとした瞬間、恭介がスッと腕を持ち上げた。いつの間にか恭介の目は鋭くなっており、周りを警戒しているようだった。


「さてと、達也」

「何?」

「お喋りはここまでだ。亜矢と一緒にどっかで身を隠してろ」

「あたしも!?」

「そうだ。こっからは俺だけでいい」

「ふざけんなよ恭介!!」

「黙れ。いいか?お前がいて何が出来る?言ってみろ。戦力にもならないお前がどう役に立つ」

「ちょっと恭介、言い過ぎだよ!」


 刃の様な言葉を容赦なく達也に浴びせる恭介を亜矢が止めようとするが殺気の籠った目で睨まれ口を閉じざるを得なかった。亜矢が黙ったをちらりと見ると達也にたたみ掛けた。


「お前の今あるその感情は偽善だ。本当はどう思ってる?なにを感じてる?」

「俺は平和を……」

「自己満足だろ?俺は皆を護ってやった。俺は世界に平和をもたらしてやった。俺を褒めてくれ。それだけの事を俺はやったんだ。所詮、それだけだ。お前が戦う理由なんざ。それだけだ」

「ちがっ……」

「違わない。いいか?悪人は自分の手で人を殺す。だがな、偽善者はその誇り高いと思ってる気持ちで人を殺す」


 恭介の言葉は達也だけではなく亜矢の心にも突き刺さる。だが、ここでふと達也は思った。じゃあ、恭介は何で戦うんだ?その疑問が浮きあがってきた途端それだけが思考を支配しはじめた。そして、口に出した。


「じゃあ、恭介の戦う理由はなんだ?」

「壊すためだ」


 恭介の返答は至って簡単なものだった。壊すため。何を?と思う。だが、それだけ言うと恭介は理由を喋ろうとしない。理由を知る事が出来ないことに少しの歯痒さを感じる達也だが、聞きだすことは叶わなかった。恭介が神魔刀で転移魔法陣を2人の下に展開したからだ。2人は恭介に文句を言う暇もなく魔法陣の光に呑み込まれた。

 二人の姿が消えると同時にクウ達が丘の上へ上がってきた。


「どうなったの!?」

「亜矢が一人捕まえて転移魔法を使った。あとは降伏してきた。あそこに居るのがこの部隊の隊長だ」

「じゃあ、アタシ達の勝ちでいいのよね?」

「ああ、もちろん。クラウド、ナイスだった」

「へっ、任せとけ」

「頼りにしてる」


 アカーシャ軍の大陸上陸後の二回目の戦闘も勝利を収め幸先のいいものだった。この後に待ち構える事を知らずに……

短い代わりに連投です。

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