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恭介くんの数奇な生活  作者: 熊海苔
第2章 新大陸侵攻
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会議と帰還準備

 ガシャガシャと鎧を鳴らせながらリバイが城の中を突き進んで行く。行き先は近衛騎士兵舎、それも隊長のヴォルドの部屋だ。


「リバイ卿!?」

「通してくれ。ヴォルド隊長に話があるのだ」

「どのような話でしょう?」

「すまない。セトラ副隊長。これはヴォルド隊長に直接聞かねばならないのだ」


 止めにかかるセトラを押し退けて奥へと向かって行く。

 すでに他の近衛騎士のメンバー全員がリバイを止める事が出来なかった。ヴォルドの部屋のドアをノックした。するとすぐに返事があった。


「誰だ?」

「リバイです」

「リバイ卿?とりあえず入ってくれ」

「お久しぶりです。ヴォルド隊長」

「どうした?いきなり」

「はい。ヴォルド隊長にお伝えしたい事がありまして」


 ほう、と興味を示したようで話を聞く体勢になった。


「それで?」

「はい。黒銀の鬼神と名乗った女からの伝言です。例の物を開いておけと言っていました」

「……そうか。それでは王子にお伝えせねばな。リバイ卿」

「はい。なんでしょう」

「貴君は現在の陛下をどう思う?」

「どうとは?」

「疑問を持たないのか?ということだ」


 ふむ、とリバイは考え込んだ。たしかに、最近の国王はなにやら変だ。


「確かに最近、政策が変わりました。それも圧政に傾きつつありますし、アカーシャへの出兵もあります。ですが」


 リバイが言葉を続けるよりも先にヴォルドが続いた。


「我らが親愛なる陛下を疑うような真似は出来ない。と言いたいのだろう?しかし、私は別の考えだ。王子も最近の陛下の行動や言動に不信感を持っていらっしゃる。貴君は知らないだろうが王妃様が行方不明なのだ」

「王妃様が!?」

「ああ。だが、陛下は捜索隊を出さないどころか。心配すらしていらっしゃらない。これをどう説明するのだ?リバイ卿」

「王妃様の行方不明に陛下が関与していると?」

「そうだ。私もそう踏んでいる。そして」

「僕もそう思っている」

「王子!?」


 ぎょっとしてリバイが後ろを向くと、そこには壁にもたれかかり不敵な笑みを浮かべていた。


「やあ、リバイ卿。君も僕らの仲間に?」

「王子。このようなことはおやめください。陛下が悲しまれますぞ」

「父上が父上じゃなくてもかい?」

「なんですと!?」

「あれは父上ではない。あれは父上の皮を被った悪魔に違いない」

「王子。峰治から連絡がありました」

「なに!?」


 ヴォルドの言葉にアヴァロンは驚いた。サンゴールドからの情報では恭介は行方不明又は死亡扱いの書類が届いていたからだ。


「どうも、峰治は現在アカーシャのトップの立場に居るようです」

「ということは“血濡れの悪魔”の二つ名は…」

「はい。峰治のものだと思われます」

「分かった。リバイ卿」

「はっ!」

「君にはぜひとも我々側について貰いたい。頼めないか?」

「少し考えさせてくださいませんか?仲間達の意見も聞きたいので」

「そうか。良い返事を待っているよ」


 リバイが答えるとアヴァロンは、それじゃ、自室に戻るよ。と言い残し部屋を後にした。

 着々と準備は整いつつある。


****


 その頃、ミーナは魔王前の橋付近で悲しみに打ちひしがれていた。原因はもちろん、和馬の横に居る秋にあった。


「あ、あの、私が貴女に対して悪い事をしたなら謝りますから。その……」

「別に貴女は悪くないわ。けど…」

「あの…さ。ちょっといいかな?」


 涙ぐんでいるミーナに遠慮するように和馬は話を切り出した。


「君の言ってる恭介って峰治恭介のこと?」

「知ってるの!?」

「あ、いや。知り合いは知り合いだけど。この世界では会った事はないかな」

「……そう。けど、生きてるのは分かっているの。何か知らない?」


 と、その時着物姿の銀狼が全力疾走で和馬に走り寄って来た。砂埃を立てながらギリギリ止まると慌てた様子で述べた。


「大変だよ!レアールとオーランド、ウッドノースがアカーシャへ侵攻するわ、オーランドがここへ進軍してるわで」

「ちょ、ちょっと待った。進軍ってここに?」

「ここ以外にどこがあるんだい!?」

「そ、そりゃそうか。クレアー、どうするの?」

「結界を張るしかないだろうな」

「やっぱー?それじゃあ、頼めるかな」

「無論だ」


 クレアはポケットから一枚の札を取り出し上へかかげた。だが、次の行動に移る前にピタリと止まった。


「出てかなくていいのか?」

「私?」

「お前達以外に居ないだろう。探し人が居るんじゃなかったのか?」

「……そうね。シンシア、ゼト。行くわよ」

「ラジャー!」


 橋を渡り始めた3人を確認した後、クレアは札を地面へと振り下ろした。すると魔王城のある島全体を幾何学模様が覆ったかと思うとそれは宙に馴染むように消えた。

 そして、結界の向こう側に居るミーナ一行はと言うと――


「とりあえず、サンゴールドに戻ると言う方針でいいな?シア、ミーナ」

「オッケー」

「それじゃあ、私はカサルシウスを呼んで足を用意すればいいのね?」

「ああ、頼む。それとシア」

「何ー?」

「首脳部へ伝令を送ってくれ」

「分かった。ミーナどう?」

「もう着くと思うわ」


 そうミーナが呟くと共に、上空から羽音が聞こえてきた。赤黒い鱗と青い目を持つドラゴン――カサルシウスの羽ばたく音だ。ひと際、音が大きくなると大きな振動とともにカサルシウスが舞い降りた。


《またか》

「またよ」

《少しはこの老体の事を考えてはくれんかのぉ。もう年なんじゃが》

「元気なんだから働きなさいよ。まったく」

《まあよいが……さて、今度はあの砂漠地帯でいいかの?」

「うん、それでいいわ」

「準備オッケー?ミーナ」

「いいわよ。ねぇ、カサルシウス」

《無論じゃ》


 自慢げに言うカサルシウスを見るシンシアとゼトは愉快そうに見ていたがミーナは何かつっかえたような腑に落ちないような表情のまま北の空を眺めるのだった。

 ふぅ……年が変わる前になんとか投稿できました。待ってくださっていた方がいらっしゃったのでしたお待たせしました。

 待っていただいた時間とは割に合わない質と量になってしまいましたが、次回は期待してくださってもいいかもです。伏線回収がめっちゃ早い私ですが、これからもよろしくお願いします。

 では、また来年 ノシ

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