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恭介くんの数奇な生活  作者: 熊海苔
第2章 新大陸侵攻
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密談と決意

「言霊付与」


 ほうっと神魔の槍に火が燈る。


「魔術消去、炎並び氷魔法付与、発動タイミングは0.5、瞬間冷凍後炎で加熱。奴隷には回復魔法を譲渡」


 その火は言葉を唱えると共に炎へと姿を変え、最終的に光り輝きだした。


「神魔刀・槍――海妖!」


 その光は槍の形を模り黒塊へと風を唸らせ肉薄して行く。衝突

 キンッと音を立てて薄い水色が黒塊を覆う。そして刹那、紅蓮の業火がそれを襲うと共に黒塊が悲鳴をあげ砕け散った。砕け散る黒塊の破片と共に淡い緑色の光が奴隷に降り注ぐ。


「全員!上陸準備!こっからはずっと陸路だ。レアールを攻略後、そのまま南下しユーランドへと攻め込む。一般人に手を出すな!俺達の敵は誰だ!?武器を持つ者達だ!それを間違えるな!いいな!?」

『おぉおおおおお!!!!』


 砂煙を盛大にまき散らし船が浜に乗り上げる。

 その勢いのまま飛び降りると槍となった神魔の刀を一振りし刀へと姿を変えさせる。彼の後に獣人達がぞくぞくと続き、それは恭介を軸として扇状に広がり、異様な光景へと歩みを進めていく。

 それはそこに広がっていた。

 それはそこで蠢いていた。

 それは狂気に満ちた瞳で彼らを見つめていた。

 それは悲鳴の様な呪語をかすかな音量で訴えかける。

 それらは脈動する体を振りまわしながら虹色の瞳を見つめ返した。

 彼は神魔の刀に気を籠め真一文字に振るった。三日月の形をした剣圧は鋭く洗練とした。業物のような刃となり、それらを襲った。断末魔があがる。気味の悪い液体が舞い散り草原を藍に染める。


「来れる奴だけ来い!」


 後続の男に言い捨てると神魔刀を下段に構え、それの集まりへと駆け下りる。近づくほどに小さく不明慮だった呪語ははっきりと耳に届くようになった。


[助ケテ…]

[モウ殺シテ…コンナ姿ハ嫌ダ]

[死ニタイ…悔シイ…楽ニナリタイ]

「承知した。安らかに眠ってくれ」


 不意に神魔の刀を地面へと突き刺し、指先を切り振るう。赤い血が舞い地に斑点を生みだす。その紅の中心は神魔の刀、鼓動の様に明滅している。その柄――そこにある宝珠へと一滴血を滴らせる。何事もなかったように宝珠にその鮮血は沁み渡る。


「さあ、君達の望むモノはそのゲートの先にある。血の門。紅蓮の門。死の向こう。魂の楽園へ」


 神魔の刀を中心に門が現れた。白亜に深紅のライン、門を飾るは女神の彫刻、美しくも荘厳な門へとそれらは吸い寄せられるように動き出した。

 それらの口から煌めきが門へと流れる。


「穢れは除去しないとなぁ?」


 それは煌めきが抜けると共に一つに合わさり化け物となる。大きな爪の巨体。赤黒くギラつく瞳。


「ここを通してもらおうかね?」


 神魔刀を引き抜き切っ先を向け浅く腰を落とす。グッと力を入れそれに向かい飛び出す。それが振り下ろす爪をくるりと避け、その腕へ刃を走らせる。藍色の血が飛び散るなか腕を駆け上る。


「パンドラ!あの黒い剣出せ!」

「えっと……これ?」


 袖に手を入れて漁ると物理的に無理なサイズの大剣を取り出すと、どうすればいい?と言った感じで首を傾げた。恭介は神魔の刀で空間を切り裂き繋げ、黒い大剣を受け取ると地へ着地した。


「さてと、これはこんなことが出来るんだぜ?」


 黒大剣に手を添え、


昇華ブースト英雄の鎧ジークフリート


 黒大剣が粒子となって霧散し、恭介の手足に纏わり形を構築していく。漆黒の籠手と具足が完全に出現すると右腕をコンパクトに折りたたみ左を前にした半身に構える。

 大地に藍の液を垂らしながら恭介の元へと歩みを進める。恭介との距離があと少しで触れられる距離に入ったと同時に恭介が動いた。

 右足を踏み込み、腹へ右拳をぶち込む。そのまま空へと打ち上げると踵落としを一発入れ、身体を捻り蹴りを二発打ち込むと、それは地面にめり込んだ。

 そのそばへ軽やかに降り立つ。

 そこからも恭介の一方的な戦いとなっていた。右腕の籠手がそれの腹を貫いた。


「Show down…」


 グッと貫いた拳を握るとそれは内側から爆ぜた。

 ボトボトと肉片が降り注ぎ、時間差で藍の液体が降り注いだ。

 後方から遅れて獣人たちが来た。


「恭介!」

「問題ない。行くぞ!」


 ジークフリートが手足から離れ霧散すると南へと行軍を進めた。


――――


 時間を少し遡る。船の中で彼らはこそこそと会談を進めていた。


「タイミングはどうする?」

「レアールを倒したあたりでいいだろう」

「そうね。あとはその理由だけど――」

「それは俺に任せてもらおう。やつの素性が俺の予想通りなら完璧だ」

「可能性としては?」

「8割」

「なら、いいわね」


 人数としては4人、男3の女1だ。1人以外は全員腰にフェンリルを差している。彼らはある計画の為に行動していた。その発端は、『王族を殺害した犯人をしっているか?』この一言だった。そして、それについて詳しく話を聞いた結果、彼らは今回の計画を考えたのだ。

 すでに外堀は埋まりつつある。ここからは自分が決心するかどうかだ、と彼女は思っていた。一度、瞼を閉じ心を落ち着ける。

 これが間違いだったらどうしよう?

 これが真実だったらどうしよう?

 そんな想いが浮かび上がるが、それを沈め1つの決意のみを固める。絶対に途中で枉げない、と

 手で払った薄い水色の髪が、窓から差し込む光を受けてキラリと輝いた。

 ネタが思いつかない今日この頃(・ω・`)

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