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恭介くんの数奇な生活  作者: 熊海苔
第2章 新大陸侵攻
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魔狼VS鬼神・秘密の会議

 少しずつ光が収まってくるとそこには薄い金色の髪をした女が居た。大きな瞳をパチッと開き周りキョロキョロと見始めた。その視線が恭介を見つけるとにぱぁと笑って恭介に飛びついた。


「うを!?」

《すいません。精神年齢の設定を間違えました》

《お兄ちゃん!!》

「……え~と、パンドラはいくつかな?」

《ん~と、一つ二つ三つ…これ!」

「片手だ…と」


 恭介に向けて見せた手はパー、要するに5歳。驚愕している恭介をみて無邪気に小首を傾げていた。


「見た目は大人、中身は子供………達悪いね~」

「笑い事じゃないだろ。おい」

《パンドラはね!お兄ちゃんの事大好き!》

「レアス!」

《申し訳ないです…》

「HAHAHA…HAHA……」


 乾いた笑い声を漏らす恭介に頬擦りするパンドラと、それを笑えていない笑顔で見つめる亜矢、もう慌てた様子で謝り続けるレアス。三者三様ならぬ四者四様の様子だったが、一人――いや、一匹の乱入者によって状況が変わった。

 気配のした方向を恭介が睨むとそこにはあの・・ヴェオウルフのカイザーと同じ気配があた。


「ほら、さっさと出てこい。さっきからそこに居るのは分かってるんだ」

「流石、血濡れの悪魔の異名を持つだけあるな。初めましてだな、俺はカイザー」

「見ての通りヴェオウルフ……ってか?」

「一発で見抜くとはな……精々俺を楽しませてくれよ?」

「亜矢!パンドラ!逃げろ!」

《これを!》

「おう」


 投げられたレジュグリアスを右手で引っ掴み上段に構える。しかし、カイザーは武器を握ろうとはせずに余裕綽々の態度で恭介に話しかけてきた。


「俺は戦うために来たのではない。お前をスカウトしに来ただけだ」

「スカウト?」

「ああ、お前の才能をここで殺してしまうのは惜しい話だ。どうだ?こちら側に着く気はないか?」

「断る。お前らのやり方にゃ賛同出来ないし、お前自体が嫌いだし…な!」


 言い切るや否やレジュグリアスで斬りかかった。が、振り下ろされたレジュグリアスを籠手で受け流し左手に出現させた漆黒の大剣で斬り上げを蹴りで逸らして、更に後ろ回し蹴りをする。それに反応出来なかったカイザーの胴のアーマーとブーツの踵がぶつかり甲高い音が響く。その反動で飛び退くと恭介の居た場所に漆黒の大剣が振り下ろされる。

 二人の間に静寂が訪れたが、二人はピクリとも動かない。次第に両者の距離がジリジリと縮まって行き――互いの剣が火花を散らして衝突した。


「お前…まさか…!」

「はっ、こいつを見て思い出せねぇか?仇を取らせて貰うぞ!!」


 レジュグリアスと漆黒の大剣の衝突している点をわざとずらし漆黒の大剣の面を滑らせながら斬り上げる。それをかわしたカイザーがガラ空きの胴を狙って横薙ぎに振るおうとした瞬間、レジュグリアスを消し四季王を出現させた。


「四季王――紅葉もみじ

「!?」


 カイザーと恭介を中心に紅く光りながら欠片がはらりはらりと宙を舞う。欠片がカイザーの漆黒のフルアーマーに当たるたびに火花と鎧の破片が飛び散っていた。距離を取っている両者の得物は、カイザーが漆黒の大剣。それに対し恭介は四季王とその鞘。カイザーは恭介の持つ四季王の鞘を厄介に感じていた。強度的に言えば四季王の刀身くらいは折る気だった。しかし、そこで邪魔になったのはその鞘だったカイザーの斬撃をいとも簡単に傷一つ付けられずに全て防ぎきるのだ。カイザーからすればめんどくさい事この上ないだろう。

 鞘と四季王を巧みに使い、徐々にカイザーを追い詰めだした。カイザーの全身を覆っていた鎧が所々砕けて素肌が見くる。


「そろそろ、終わらせてやる」

「くっ…」


 鞘を放り投げ消えると同時に手の中にレジュグリアスが出現した。そのレジュグリアスを逆手に持ち腰を低く構える。そしてレジュグリアスと四季王を重ねた、するとゆらりと輪郭が歪むと共にレジュグリアスと同サイズの野太刀になっていた。レジュグリアスにあった金色の宝珠は野太刀の柄頭の部分に存在し鍔には黒と白の宝珠が芸術品の様な雰囲気を醸し出していた。しかし、淡い紅の刀身によって武器としての禍々しさを発している。その刀身が徐々に赤みを増していく。淡い紅から深紅へと


「遺言か何かあるか?」

「貴様もしや」

「ん、多分お前の思っている通りだ。言い残す事はそれだけか?」

「ふん、俺は死なんぞ」

「いんや、ここで幕引きだ」


 そこで野太刀を肩に担ぐ。


「神魔刀・炎魔」


 その名を呼ぶとそれに反応して刀身から陽炎がゆらゆらと立つ。そのまま神魔刀の刃先を地面へ向け走り出す。徐々に近づく恭介に対しカイザーも漆黒の大剣を構えると大剣を真横へと薙いだ。

 その斬撃を深くしゃがみ込みかわす。右足を前に踏み込み神速の如き速さで野太刀を逆袈裟切りに振るった。熱せられた刀身により、カイザーの着込んでいた鎧が溶けいとも容易くカイザーに一太刀浴びせた。

 神魔刀を振り抜くとぴしゃっと血が宙を舞う。しばし静寂が周りを包んだ。神魔刀を振るい刃に付着していた血を払うとレジュグリアスと四季王に分かれた。地面に転がったカイザーに目もくれずカイザーの持っていた漆黒の大剣をパンドラに渡した。


《???》

「袖にしまうんだよ」

《ん~……出来たっ!》

「それじゃあ、帰るか」

「ま、待て…」

「なんだ?まだ何か用か?」

「なぜ、トドメを刺さない?」

「気が進まんだけだ。それにお前の主に報告して貰わないとな。俺の事を」

「ふっ…ここでトドメを刺さなかった事を後悔させてやろう……」

「勝手に言ってろ。亜矢」

「魔法陣?なら、準備出来てるよー」

「じゃあ、戻るか」


 と言って神魔刀・炎魔を魔法陣にサクッと突き刺した。そして刺したら魔法陣の輝きがドンドンと失せていく


「え?何をやってくれちゃってんの!?」

「いや、魔法陣をいつでも使えるようにと思ってさ」


 神魔刀へと視線を移してみると呪文がびっしりと書いてある鞘に納められていた。そのまま地面をトンと突くと勢いよく魔法陣が展開された。

 調子が良さそうなのを確認した恭介はうんうんと頷くと、呆気に取られている亜矢を魔法陣の上に乗せ、はしゃいでいたパンドラと一緒に乗ると姿を消した。


****


 薄暗い部屋の中で目を閉じていた老人がゆっくりと目を開いた。右に置いてあった緋色のゴブレットに亀裂が出来ておりそれを見て老人はつまらなさそうに溜息を吐いた。


「……カイザーがやられたか。ヴァイシャ」

「なんでしょう」

「そろそろ、北の連中が攻めてくるだろう。カイザーが向こうでやられた時点で敵の大将は例の小僧だ。いや、小娘と言ったほうが良いか?」

「峰治秋……」

「そうだ。しかしだ、お前の元に居た時よりも強くなっているだろう。なにせ、ヤツは“壊れた神”に憑かれているからな」

「“壊れた神”…ですか」

「お前はアルカディアの神話を知っているか?」

「はぁ、詳しくは知りませんが有名どころならば」

「創生の話があるが、実はあれには続きがあるのだよ」


 老人の言葉にヴァイシャは聞き入ろうとしたが、その前に老人に腰でも掛けろと言われ傍にあったイスに腰かけた。


「最高神がこの世界を創り上げたのは神話の通りなのだ。その後の話――と言うよりも真実の話をしよう」

「真実……では、神話は偽りだと?」

「いや、真実であり偽りでもある。そもそも、表舞台に居る神は偽りだ」

「ゼウスがですか?」

「あれはヒトを管理するために創られた神造の偽りの神だ。神造の神…神である事に違いはないが、唯一違うところ――欠陥がある」


 テーブルに置いてあった水で喉を潤すと老人は尚も続けた。


「それはヒトを好いてしまう。“愛”を知っている所だ。そしてなにより原初の神々は三柱だ。今の様に十ちょっとも居ない。

そしてその三柱は最高位にリバライアス、第二位にレジュグリアス、そして第三位にルヴィアスだった。リバライアスは世界と偽りの神を、レジュグリアスはヒトと精霊を、ルヴィアスは他の魔物達を創り出し表舞台から姿を消した。

そして、“壊れた神”と呼ばれているのは第二位のレジュグリアスだ。レジュグリアスは戦神、母神と呼ばれており、何故か原初の神ながら“愛”と言う概念を持っている。故に壊れた神と呼ばれているのだ」

「その神をどうにかすればなんとかなりそうだと思うのですが」

「無理だな。達が悪いものがもう一つ憑いてる。が、それは不明だ」

「その不確定要素さえどうにか出来れば……」

「まあ、そうだろうな」


 憮然とした態度を崩さずに老人は言う。そして薄暗かった部屋は闇へと呑まれた。

なんと言いますか。


ひどいですね(汗)話の内容が

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