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恭介くんの数奇な生活  作者: 熊海苔
第2章 新大陸侵攻
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7 ウッドノースの侵攻と白玉天のスーパーお馬鹿タイム


                †グロ注意†

 周りを霧が包む早朝。金属同士がこすれ合う音が森の中に響いていた。もちろんのことだが三国の軍隊である、掲げている国旗はウッドノース。その先頭を進む騎士は近衛騎士ではないが地位はもっとも近衛に近い者である。力強く自らの勝利を信じる瞳の青年である。彼の装備でもっとも目立っているのは腰に提げている剣だろう。柄の部分に縦に割れ目が入っている。装飾も最低限のものしかされておらずまさに実戦用の剣だ。

 少しすると青年は右腕を上げた。行軍が止まる。


「どうかなさいましたか?」

「ああ、前方に人影が二人程確認できる。あれはなんだ?」

「片方はガタイの良い男の様ですが……もう一人は女?」

「そのようだな。風を扱える者!前方の霧を払え!すぐにだ!」


 青年の一声で後方に居る魔術師たちが魔法を使用した。そよ風程度だった風が強くなり霧を取り払った。そこに立っていたのは女とヴォルフである。ヴォルフの傍らには五本のランスが積んであった。

 青年たちの軍列を見た女はニヤリと笑い、ひょいといとも簡単にランスを持ち上げた。


「リバイ卿、ここは我々にお任せを」

「分かった。しかし、女と男たった二人と言えども気を抜くでないぞ」

「ああ、まかせとけリバイ」

「マーカス卿!ちゃんと”卿”とつけて呼んでください!」

「いいだろ?そんなの……それより、さっさとすませようぜ」

「そうだな…それではリバイ卿、しばしお待ちを」

「いっくぜー!!」


 三人は馬を女達へ向けると猛然と駆け始めた。その姿を目視した女は大きく振りかぶった。ウッドノースの兵士達はまさかと思った。だが、そのまさかを女はやってのけたのだ。

 ランスを三人に向かって投げたのだ。空気を切り裂く音とともに先頭を走っていたマーカスへとランスが飛ぶ。女はまたヴォルフからランスを受け取り投擲した、先ほどのランスと同じ軌道で突き進む。一投目のランスを剣で無理矢理軌道を変えた代償として剣が中央から真っ二つに折れた。眼前には目一杯に広がるランス、まともにランスの餌食となったマーカスは胴に突き刺さったランスの勢いのまま後方へと吹っ飛び、仰向けに転がった。その姿を見たもう一人の青年――ラギウスは怒りの表情を浮かべて女へと迫った。


「ヴォルフ!ここは私が止めておくから、みんなに伝えて!」

「分かった。名無し。死ぬな」

「任せなさい!」


 自分の背後の地面に二本のランスを突き立てると一本を片手で持ちラギウスを待ち構えた。

 ランスを持っているから突いてくるしかないと考えてラギウスは剣を振りかぶった。だが、その予想とは大きく違ったことを女はした。馬の脚を狙って横に薙いだのだ。その一撃で脚を壊された馬が前につんのめったそのままラギウスは前方へと放り出された。上手く受身がとれずに転がされたためか力なく立ち上がる。

 フラフラと立ち上がり振り返った瞬間、右側をランスが掠めて行った。それに気圧されるが勇敢にも女に躍りかかる。そして、剣を振り下ろした――振り下ろしたはずだった。だが、右腕の感覚がない。右腕を見ると肩を少し残しその先がもがれた様になくなっていた。傷を認識した瞬間、痛みを感じ始めた。が、トスンと胸に力を感じて前を向くと鎧を易々と貫きラギアスをも貫いている女を見た。女は小さく


「ゴメン。でも、同情はしない。君たちがやっている事はもっと酷いことだから」


 ラギアスから四季王・無を引き抜くと振り返りざまに首を撥ねた。


「その代りに、痛みを感じる前に逝かせてあげる」


 最後の一人の騎士との距離を一気に縮める。そしてすれ違う瞬間袈裟掛けに切り裂き軍団に肉薄した。先頭の兵士と接触する瞬間、四季王をしまい代わりにレジュグリアスを呼びだし真横へ振るう。3,4人を巻き込んでぶった切る。これまでのように顔を隠す行為などをせずに、そのまま戦い始めた。

 縦横無尽に敵を切り裂き、殴打し蹴り飛ばす。


「レアス」

《綺麗に咲かせてください死の花を》


 レアスの声が巨剣から女の頭の中へと響く。

 その言葉に不敵に笑うとレジュグリアスを振り上げた。


《二十》


 レジュグリアスを中心に光が溢れ出す。本能的に後ろへ後ずさる兵士達、だがすでに女と戦いを始めたのが原因なのだから後の祭りである。


《七十》

「さてさて、死にたくないならさっさと逃げなよ?手加減出来ないからさ」

《百、砕神》


 地面へとレジュグリアスを斬りつけると周囲へ亀裂が入った。


《「ヴォルカニック」》


掛け声とともに亀裂から炎の奔流が噴き出す。奔流に巻き込まれた兵士達は地面をのたうちまわるが身体に灯った青い炎は消える事なくその身を焼き焦がす。そこには女を中心として直径十数mの黒い円が出来上がっていた。その付近でリバイは苦い表情を浮かべていた。


「リバイ卿……だっけ?どうする?逃げる?」

「仲間を殺されて黙って引き下がれるか!!」


 怒声とともに腰に帯びていた剣を引き抜き女に斬りかかった。が、巨剣をまるで小枝を振るうかのように軽々と振りリバイの剣を弾いた。すぐに態勢を立て直して下段から斬り上げてくる、それを一瞬でレジュグリアスを消し次の瞬間には手の中に四季王を出現させた。


「四季王・無――無名」

「負けてたまるか!みんなの仇を討つんだ!」

「あなたはこの侵攻の詳細を分かってる?」

「なんのこと…だっ!」


 彼の言葉に眉根をひそめた瞬間を見計らってかリバイは後方へと飛び退いた。考えながらもリバイの剣撃を全て四季王で逸らす、片手間に交戦している女を見てリバイの頭に血が上って攻撃が荒々しくなってきていた。


「何も知らずにここへ来たのか……なら、教えてあげようかな。ここアカーシャへの侵攻の理由は鉱石の採掘、及び奴隷の捕獲、女のね。そんな事も知らずに?」

「奴隷…だと?そんな事聞いていないぞ」

「だろうね。君、近衛騎士じゃないでしょ。まあ、下っ端扱いだろうね」

「しかし私は!」

「まだ、続けるの?」

「自分に課せられた任務を全うするまでだ!!」


 それを聞いた女はにんまりと笑った。それを見たリバイは剣を両手で持ち左右へと引っ張った。すると中央で剣が二つに割れて二振りの刀となった。

 半身になり軽く腰を落とした。そして、女へ向かって一歩踏み込むと共に切り上げを放った。女はそれを回し蹴りで弾き、その勢いを殺さずに四季王を振るう。それを弾かれていない方の刀で弾きあげた、女はその勢いを利用してバク転して後方へと下がると低く構えた。


「さてと、本当に帰るつもりはない?」

「みんなが殺されたのに引き下がれるか!」

「分かった、分かった。生きてればいいんでしょ」

「は?」

「レアス、出来る?」

《もちろん、可能です。けれど……》

「あぁ、分かってるよ。何回くらい?」

《そうですね…最低5回です》

「よし、やろう」

《は!?自分の言っている意味分かってるんですか!?》

「分かってるって」


 物凄くあっけらかんと女が言うものだから、姿を現してしまったレアスはそれはもう間抜けな顔を浮かべ、リバイはと言うと突然現れたレアスに対してびっくりした表情を浮かべていたりする。


「さてと、リバイ卿手伝ってくれる?」

「な、何をだ」

「ああ、うん。君には辛いだろうけれど、一般兵の焼死体のそばにほかの人の亡骸を集めて、全部ね」

「そんなことをしてどうするつもりだ?」

「ん?生き返らせる」


 さっきと同様、あっけらかんと言うものだからリバイも目が点になっていた。けれども、ゆっくりとその言葉を噛み砕いて咀嚼した所で、分かった――とだけ言って、仲間の変わり果てた姿を見るたびに悲痛な表情を浮かべたが数分後には全員が集められていた。

 その周りに気の棒で文字や記号を円状に書き込むと地面へとレジュグリアスを突き刺すと、ぶつぶつと言葉を唱え始めた。時間が経つにつれ徐々にレジュグリアスの金色の宝珠が輝き出した。その輝きがいっそう増した瞬間、絶叫が響いた。


「ぐがぁあああああああ!!?」


 絶叫が収まってくると共に輝きも失せて行った。そこには死んだはずのリバイの仲間と兵士達が何が起こったかよく分かっていない表情で座り込んでいた。その傍では地面に膝をついて肩を上下させている女の姿があった。リバイはそれを見ると剣を納め、女の元へと駆け寄った。


「おい。どういうことだ!?みんなが」

「だから…生き返らせるって……いったでしょ?」

「そんな魔術が?」

「まあ…代償が高くついたけど…ね。ふぅ……ちょっとタイム」


 ふぅ~と小さく息を吐くと立ち上がり背伸びをした。


「それで帰ってくれる?」

「ああ、お前の言っていたことが真実か否か知るために」

「じゃあ、近衛騎士団に伝言をお願い」

「ヴォルド隊長を知っているのか!?」

「例の物を開けておいてって」

「は?」

「黒銀の鬼神さんからの伝言でした~。じゃあね、リバイ卿。」


 楽しげに笑うと、リバイ達に背を向けて去って行こうとしたが、途中でふと思い出したように振り返った。


「そうそう。国王には聞いちゃダメだよ。聞くとしてもヴォルドかアヴァロンにしときな」

「お前!名は!?」

「ああ、峰治だよ。忘れたか?お前らの国を護ってやったろ?」


 いたずらが成功したような笑顔をして女――恭介は去っていった。


「リバイ卿?どうかなさいましたか?」

「い、いや…それよりも気になる情報を聞いた。急いで本国へと帰還するぞ」

「……ここの侵攻はどうするんだ?」

「その真意を聞く為と伝言をヴォルド隊長に伝えに行く」


****


 その頃サンゴールドでは、白玉天が奮闘していた。政治と言うよりも国防問題に関しての問題が山積みになっており、シンシアもゼトも居ない状況だからだ。


「ウッドノースとの国境の兵の配置が少ない?三分の一も送ったのだから十分であろう!!」


 なんて、戦略もクソもない事になっているが大丈夫だろう。たぶん


「はぁ!?街の守備を増やせ!?犬かなんかでも配置していろ!」


 ………大丈夫だよね?

はい。ついに恭介くんの名前が登場しました。

恭介くんはこの侵略戦争をどのように止めるのか!?

まだ、決まってないんですけどね。


ではでは、次回でお会いしましょう

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