1 名無し――護る意味
10万PVです!
皆さん、このような駄作をここまで読んで頂き有難うございます!
では、本編です。どうぞ
「……気を引き締めよう。このままじゃ、皆の前で地が出ちゃう」
パン!
自分で頬を叩いて女は気を引き締めなおした。
女はそのまま物干し竿の元へ服を回収しに向かった。
「あら、名無しさん。おはよう」
「あっ、ダースさん。おはようございます」
「珍しくスカート着てるなんて」
「……自分のを洗っててクウに借りました」
「そうかい。そうそう、ビーカス婆さんが服乾いたよって言ってたよ」
「あ、そうですか。それじゃあ取りに向かうので」
「ほいさ。朝食の時間に遅れないでね」
「はい」
女は会う人と話をしながら目的地へ向かったため、予想よりも時間がかかってしまった。
物干し場は根城のかなり上の方にあるため、眺めがいい。朝の冷たい空気を胸いっぱいに吸い、景色を眺める。
敷地内で体操をしているご老人も居れば、朝から剣の練習をする者も見える。
根城の城壁の向こうを見渡せば自然の木々から鳥が飛んでいっている。
ここが本当に昨日の様な激戦があったような地には見えない。
「…守らないとここは。……ミーナは元気かな」
「ななさん!」
「テイトちゃん?」
「はい!ぐんもです!」
「ふふ、おはよ」
「何してたんですか?」
「ん?ここから景色を眺めてただけだよ」
「そうですか」
「うん」
テイトが女の側へちょこちょこと近づいて行き一緒に景色を眺める。
「ななさん」
「ん?どうかした?」
「ヴォルフさんとクラウドさんが何かやってます」
「あぁ、2人とも朝から元気だなぁ」
「ななさんは、元気じゃないんですかぁ?」
「ん~、そういう意味じゃなくてね。元気が有り余ってるな~って意味」
「そうですね!テイトも元気ですよ!」
「ふふふ、そうみたいだね」
女はにっこり笑いながらテイトの頭を撫でた。それにテイトは目を細めて気持ちよさそう顔をしている。
少しすると、女は自分の服を持って部屋に戻った。テイトが女について行ったのは言わずもがな。
「さてと、そろそろ朝ごはんの時間だから食堂に行こうか」
「はい!」
テイトと手を繋いで食堂へ向かうが途中で女は外に居る男2人の事を思い出した。
「テイトちゃん、一人で食堂行ける?」
「行けますけど、何でですか?」
しょんぼりしながら聞いてくるテイトに困った顔を向けつつ説明
「ヴォルフとクラウドは外に居るから呼んできてあげないとね。二人の事だから朝ごはんの事も忘れてるだろうしね」
「そういう事なら……」
「ゴメンね。テイトちゃん」
「大丈夫です!テイトは強い子なのですから!」
「うん、じゃあ、また食堂でね」
「はい!」
タッタッタッと走って行くテイトを見送ってから、女は中庭のような所へ向かった。
――――
「はっ!」
ガッ!
「ぬん!」
ガリガリガリ!
クラウドの持った木刀をヴォルフの持った大きな木剣が押し返す。だが、クラウドはその力を利用して距離をとる。
「さすがだな。ヴォルフ」
「お前も、な」
2人は必殺の一撃を出すために構える。
ヴォルフは大上段で大木剣を振りかぶり、クラウドは木刀を自分の身体で隠すような脇構え。
一瞬の静寂
2人が一斉に走り出す。そこへ女が風の如き速さで走り寄り、ヴォルフが振り下ろす大木剣を左手で、クラウドが切り上げようとしている木刀を右手で掴み、その勢いのまま2人を投げ飛ばした。
「うを!?」
「ぬっ!?」
2人は投げられて目を白黒させながら女を見上げた。
「2人とも。もう朝ごはんの時間だから、食堂に来てね?暴れたりないなら、あとで私が相手するから……早く来て」
「行くか、クラウド」
「そうだな。食いに行こう」
「というか、遅れたらごはん抜きってダースさんが言ってたよ?」
「急ぐぞ!」
「ああ」
「てっ、え?私は引っ張られる側なの?」
――――
朝食が終わる頃、問題が起きた。
「敵が来た!!」
「ヴォルフ!クラウド!」
「ああ」
「わかってる!」
「クウは魔法で援護を!アリーは歌で!」
「わかった」
「クラウドの為に!」
「頼むから皆の為にしてくれ!」
「いいから!早く!クウは上からね」
「わかってるから、さっさと行きなさいよ!?」
クウに怒鳴られた女達は外へ向かった。
そこでは、もう他の戦士達が大陸からの兵士達と剣を、ランスをぶつけ合い、相手の身体を鎧ごと切り裂き、突き刺し、激しい戦いが繰り広げられていた。
「まずウチの人達を半数は下げさせて!早く」
「はい!」
「ヴォルフとクラウドは皆が下がる際にしんがりを勤めて!」
2人は頷くと獲物で敵兵を切り伏せながら進んでいく。
その後ろで女は鞘から刃がボロボロな刀を引き抜く。その刀身を見て引き返してきた兵士達がチラチラと見ていく。
彼らの視線に気付いた女は軽く笑い掛け、目を閉じ刀に集中する。すると、扉のイメージが思い浮かんでくる。その扉を開いて、目も開く。
パチン……
納刀
「2人とも!離れて!」
刀を腰溜めに構えて兵士の群れを睨む。そして顔を手で隠し手を下げる。
そこにあったのは先程まで微笑みを浮かべていたのは嘘かのように醒めた鋭い視線を浮かべている顔だった。
女は2人が離れたのを確認すると、抜刀術の構えのまま走って行った。
兵士達の最前列に到達した瞬間、刀を引き抜く。その刀身は紅色に淡く光っていた。
一人斬る。光る欠片が宙を舞う。
二人斬る。光る欠片が宙を満たす。
振るう度に周りを光の紅葉が舞い散る。その光る紅葉が兵士達に触れた瞬間、触れた部分が斬れた。その返り血ごと敵を切り裂く。
「舞い散れ、四季王――紅葉」
その刀の名を呼ぶとそれに応答するかのように紅葉をまき散らす。はらりはらりと風にそよがれて、季節は夏だが戦いの場は秋の森の様に紅く染まった葉が舞踊る。
だが、本物の紅葉の様な柔らかさはなく、その葉はただ鋭利な刃物の様に革鎧を鋼を肌を切り裂いていく。
「退け―!退却!退却ー!」
「ば、化け物だ!」
女一人に殲滅されかけた事で、士気の下がった三ヵ国軍は足早に撤退をし始める。その後ろ姿が見えなくなる頃に刀をしまい、顔を手で隠し退ける。後ろを振り返り笑顔で戻る。
「終わったよ」
「それにしても、お前本当に何者なんだ?」
「秘密、教えて欲しかったら私に勝ってみなよ」
「あっ!てめ、なんだその笑みは感じ悪いぞ」
「さ~てね」
意地悪そうに笑顔をクラウドに向けてから、颯爽と根城の中へと帰って行く女の後ろ姿を見送りながらテイトはアリーに話しかけた。
「アリーさん」
「ん?どうかした?」
「ななさん、なんか雰囲気変わりましたね」
「そうだね~、吹っ切れたって感じ?」
「そんな感じですね~、テイトは何だか嬉しいです!」
「そっかぁ、でもね。テイトちゃん」
「ふぇ?」
「僕はクラウドが僕以外の女に反応するのが許せないんだよ」
「ふぇええ!?な、ななさ~ん!ヘルプです!えまーじぇんしーです!!」
暗い笑みを浮かべたアリーの顔を見てテイトは慌てて女の後を追う。その日はもう襲撃は来ずゆっくりとした時間が過ぎて行った。
なれない三人称の為、地の文が少なくってしまいますが今後ともよろしくお願いします。
次回より、前書きや後書きの部分で第1章でのあの魔法についてちょいちょい書いていこうと思いますので
では