36話目 ユーランドの勇者のご事情
あと1話で第1章が終了です。いや~長かった。
そのころユーランド国内に残っていたアヤはと言うと…
「ナンナまだかな~」
(呼んだかえ?)
「本まだ~?」
(今部屋の前じゃ。開けて欲しいんじゃが…)
「ゴメンね~」
ドアを開けると背中に分厚い本を背負った黒猫、ナンナお疲れ様~ それがすっごい危ない魔導書?
(そうらしいの~ しかし力を感じないんだがの)
ナンナだからじゃない?ほら、ナンナって月の神様でしょ?
(そうだの)
神様には反応しないんじゃない?
(ほぉ、ならばほれ)
「うわっ、とと。本を投げちゃダメだよ」
(力のある魔導書なんじゃろ?なら大丈夫じゃよ)
そういうものかなぁ?仮にも本なんだけど……まあ、いいか
さっそく本を開こ~
よし、接続完了
「さ~て鬼が出るかな~何が出るかな~?」
(貴女が今回の主ですの?)
「そーだよ~アヤって言うんだ。よろしく~」
(わたくしはウルメリア、この魔導書の霊と言うべき存在と言っておきますわ)
「ウルメリア…さん?」
(ウルメリアでいいですわ。ご主人様)
ご、ご主人様!うっわ~何これむちゃくちゃ照れくさい~
やばいよ!やばいよ!ご主人様だよ!?
(どうかなさいました?)
「な、なんでもないよ~?」
(そうですか?ではそろそろ、あちらへお連れしますわ。わたくしもその際実体化するのでお待ちになって)
何かに押されるように光の方へ向かう。あたしの背中を押してるのがウルメリアかなぁ?
まあ、それ以外ありえないか~
(起きたかえ?)
「うん。ウルメリアは?」
(そこに居るえ)
「こちらですわ。ご主人様」
「………」
(む?どうかしたかえ?主)
「な、なんでもねぇでございます」
あうあう…何この愛らしい生き物!メイド服を着たロリっ子って反則だと思うんですが!う~、そっちの趣味じゃないけどこれは抱きしめたい!
(なぁ、ウルメリアとやら)
「なんですの?」
(主が何やらお前を見て悶えておる。なにかしてやらんのか?)
「なんとなく近づいたら危険な気がするのでやめておきますわ」
「うぉとっと、いけないいけない。これからよろしくね。ウルメリア」
「こちらこそ、よろしくお願いしますわご主人様」
かわええのぉ…
さてと、それじゃあ今後の予定を立てますか~
「それでなんでけどさー、これからの予定を立てようと思うんだけど」
(予定?ここを離れるのかえ?)
「うん、噂によるとここがお隣さんを攻めに行くらしいから避難ついでに、と思ってね~」
(過ごしやすかったんじゃがの)
「あたし、戦争に巻き込まれたくないからね~。だからの避難」
いっその事、この大陸から離れようかと思ってるくらいだし、話によるとアカーシャって言う大陸がこの大陸の北東、気候は日本に近いらしく四季が存在するとの事、お花見だー、お月見だー、お節だー、素麺だー
(食い物ばっかりじゃな。他に思い浮かぶ事はないのかえ?)
「花火と、お団子?」
「結局、食べ物になるのですのね…」
「え~いいじゃんか~。決定!アカーシャに行こう!」
(主が良いのなら従うだけじゃ)
「ナンナ様と同じく従うだけですわ」
え~と、転送魔法わっと、そうそうこれこれ。解凍、実行!
「我、ここに契約の印を捧げる。黄昏の御使い我が行き先を示せ」
あたしの足元に魔方陣が出てきて輝く。そして、光があたし達を包んで消えた。
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俺は走っていた。何のために?そりゃ、マルを逃がすため。戦争が始まるらしいし
それで城内を銀のピカピカ甲冑を着て全力疾走、体力には自信があるしね!
「マル!……あれ?いない」
俺が部屋に入ったとき、上からはらりと紙が落ちてきた。
達也へ
坊主勇者(笑)を元気に営んでね。あたしは別の大陸へバカンスを過ごしに行くからね~
異世界歴三年の亜矢より
なにこれ、異様に短いんだけど…しかも(笑)って……俺を心配してるのかどうなのか全くわかんない内容じゃんかーー!
「メ、メ、メイドさん!」
「どうなさりましたか?達也様」
「マルがいなくなった!」
「マル?ああ、アヤ様ですね。お逃げになられたようですが?『あたし、戦争なんかしたくないから、あと頼みますね~』と言っていましたよ」
「そのまま、ほったらかしたんですか!?」
「はい。それが何か?」
「え!?何その態度、亜矢が居なくなったんですよ!?」
「は~、これだから話を聞かない殿方の対応は嫌気がさしますね」
「いきなり毒吐いた!?」
「失礼ですね。松ぼっくり」
「もういいです!俺がさっさと戦争を終わらせますから!」
「出来るといいですね。ド素人に」
最期の最後まで、毒を吐かれた達也だった。
感想等々お待ちしていま~す。