30話目 町へ行こう!その最後
短いですがどうぞ
翌日の正午
「じゃあ、クレア。空に魔法を撃ってくれ」
「うむ、わかった」
クレアが無詠唱で空にフレイムを放った。これで向こう側へ連絡出来たはずだ。
「我、土の精霊ノームに命ず。ここに在りし煉瓦で橋を作りたもう」
そう呪文を唱えた瞬間、山高く積まれた煉瓦が光りもの凄いスピードで橋を構築していった。
「あとは、魔力を流し続ければいいんだよね?」
「そうだ。だが……」
「流す魔力の量に気をつけろ。でしょ?わかってるよ」
「ならいいんだが……そこの娘」
「フィーです!!」
「ちょっかいを出すなよ?」
え~と、まずこの状況はスルーして頭の中にこの状態を維持する魔法を構築………定着
よし、あと解除パスは昨日の晩御飯のメニューにしておこう。思い出すの楽だし
「で?クレアとフィーちゃんはなんで口喧嘩してるの?」
「こいつが悪い」「この人が悪いんです」
「あはは……僕は聖徳太子じゃないから一気に言われても何かわかんないよ」
「こいつが一々喧嘩を吹っ掛けてくるのだ」
「いいえ!あなたです!」
「ああ、もうわかったから黙っててくれないかな?気が散るから」
「「すいません……」」
二人が黙ってからは先ほどよりは順調に作業が進んだ。時々、ヴェオウルフのあねさんが石材を運んできてくれてもの凄く助かった。
まあ、来るたびにフィーちゃんが怯えていたけど気にしたら負けだと思ったから放置の方向でいきます。
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「橋が完成した時ってなんて言うんだっけ?」
「開通でいいのではないか?」
「ねぇ!私今回完全に空気だよね!?」
「開通でいいと思います」
「ねぇ!?」
「雪華、落ち着いて。ね?」
「うぅ……無視する方が悪い……」
「ごめんごめん。それで、どうかしたの?」
「子供を集めてきたから報告しにきたの。どうすればいい?」
「おお、魔王。ハーレムだな」
「ガリウスさんですか……驚かせないでください」
「いやいや、すまなかったな」
絶対確信犯だこの人、タイミング計って声掛けたよ
「それで?今からどうするんだい?」
「ああ、本島にヴェオウルフ再教育者を送り出したあとから、飾りつけを始めましょう」
「いいだろう。それでその再教育者ってのは誰?」
「あねさ~ん!」
「なんだい?あたしの出番かい?」
「この人です」
「ヴェオウルフ?」
「そうそう。この島のお袋さんですよ」
「だぁれがお袋さんだい!あたしはまだそんな歳じゃない」
「痛い痛いギブギブ!ゲンコツでのぐりぐりはダメだって!」
ぶっちゃけると、あねさんの外見はすでに、ヴェオウルフではない。耳と尻尾の生えた人間が一番しっくりくる表現だからなぁ。ファッションがすでにカオスだけれども、着物の下にGパン。
本人曰く、一番ヤクザのあねさんぽい見た目で動きやすいかららしい。どこでヤクザを知ったの?と質問したら雪華に聞いたと言ったので、雪華を注意したのは実は、本島に出かける前日の事だった。
「じゃあ、あねさん。再教育をお願いします」
「あいよ。紳士にしてきてやんよ」
「いってらっしゃ~い」
「あばよ。とっつぁ~ん」
「あはは……ずいぶん変わっちゃったな」
「じゃあ、あとはウチのガキ共に任せて寝るよ。じゃあね」
「さよなら~」
これが恭介達がトウハの国を出発する5日前のことである