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彼の気持ち

彼氏目線のお話


俺は今日、彼女にプロポーズをする。



 僕の彼女は、健康的で活力があり、責任感があって情に熱い。


 あまり表情を変えるタイプでは無いけどたまに見せる笑顔がめちゃくちゃ可愛い。



——今日、何だか疲れてるのかな?



 いつもより、何と無く元気が無い。

今日じゃ無い方が良かっただろうか?


 彼女は普段からスキンシップは好まない。

でも俺の気持ちに答えてくれていると思う。


——はあ、緊張するなぁ

 

 彼女は、嫌な事を嫌と、あまりハッキリ言うタイプじゃ無いので、


 俺としては、プロポーズを了承する程、俺の事が好きかどうかは若干心配ではある。




今いるのは、駅裏の小さな喫茶店だ。



 2人で入って、メニューを広げた時、

確か俺はアイスティーを、指差した筈だ。



 なのになぜか、今、俺の目の前には、

飲めもしないアイスコーヒーがある。



——交換してもらう?いや、間が悪いな



 彼女がアイスコーヒーに気付いたのか、

こちらを残念そうにみている。


 僕は、少しだけ困った顔をしたけど、

大丈夫だよと笑って見せた。


 こんな事で、いちいち店員に交換を頼など

プロポーズの前に、カッコ悪いじゃないか。


彼女は、交換しない俺を訝しげにみている


飲めないのに交換しないなんて、いつもよりおかしいよね?分かってるよ


「はぁ」


 いざ、プロポーズを切り出すとなると

緊張で頭がパンクしそうだ。



——彼女は、受けてくれるだろうか



 彼女、りなは、付き合い始めた時から、

あまり欲がない子だった。

 

 俺が一方的に好きなだけで、実は迷惑してるんじゃないか?なんて考えた事もある。



——ぶっちゃけ、今だって、不安だ



 今まで付き合ってきた子は、良く言えば積極的、悪く言えば我儘なタイプばかりだった



『何で仕事より私を優先してくれないの!』


事ある度に、言われて辟易した事もある。



強請られて高価なプレゼントを上げても


『えー、私コレじゃ無くて、どうせなら他のブランドが良かったな』


と、言われた事もある。



——全く、酷い話だよ



 まあ、仕事が忙しくて、構っていられず

どの子も結局は長くは続かなかった。



 りなは取引先の社員で、よく仕事で取引先に伺った時、よく見かけたんだ。


 彼女はいつでも、テキパキと働いていた。

他の女性社員が、お喋りしている間も休む事無く手を動かしていた。



「あのぉ、良かったら今度、一緒に飲みに行きませんかぁ」


 ある時、女性社員に声を掛けられたが、

俺は既に、りなが気になっていたのと、明らかに面倒なタイプなので断った。


「申し訳ない、決まった人がいるので」


 普通の男なら喜ぶタイプだろうなとは思うが、俺はもうゴメンだった。


 女性社員は、顔を真っ赤にして怒っていたけど、俺は気にせず仕事を進め社に戻った。



——本当に地雷タイプだったよなぁ



 別日に取引先に向かうと、何だかやたらと視線が刺さる。何だろうと思ったら


「あの、セクハラしたってマジっすか?」


 一緒にプロジェクトを請け負っている若手社員が、意味のわからない事を聞いて来た。


「は?何の事?」


 俺は意味が分からず尋ねたら、どうも食事を断った女性社員が、俺にセクハラされたと言いふらしていると…


「あー、やっぱ虚言ですよね?前にも似た様な事があったんで、気にしないでください」


 彼は俺の肩を叩いて部屋から出ていった。

仕事を済ませ、部屋から出ると


女性社員が3人俺の前に立ち塞がり


「あなた、この子にセクハラしたって本当なの!謝りなさいよ!」


「いいの!私が、私がいけなかったのよ」


「ダメよ、ちゃんと責任とって貰いなさい」



 いきなり寸劇が始まってしまい、訳がわからず思わずポカンとしていたら



「黙ってないで、何とか言いなさいよ!!」


 ひとりが無駄に大声を上げたせいで、フロア内全てに声が響き渡った。


正直、まずいと思った。


 このまま、冤罪をなすりつけられるかと思ったその時、俺の前に女神が現れたんだ。


「あなた方、先日まで素敵だの、必ず落とすだの言ってましたよね?見苦しいですよ」


りなの声は、高くは無いけど、良く響く。


「それと、貴女、先日お誘いして断られてましたよね?腹いせですか?そんな暇あったら仕事してください」


 りなは、言うだけ言ったらさっさと仕事に戻っていった。


 その後、彼女達の上司に散々謝られたっけ

多分、それもりなが手回ししていたんだ。


それ以来、俺はりなに惚れ込んだ。


とりあえずお礼にと食事に誘い、努力の結果彼氏の座につくことができたんだよな



 プロポーズを前に、俺は出会いを思い出していた。


——りなは俺を選んでくれるだろうか?




「呼び出しておきながらなんなのよ」



イラついているような声に、思わずビクッとしてしまった。


 俺はつい思い出に浸っていて、気付いたら

店に入って既に30分は経過していた。



——さすがにまずい



「っごめんなさい」



反射的に誤ってしまった。



——しまった、余計に伝えにくいぞ!


アイスコーヒーの氷がカランと鳴った。

りなが珍しく、ため息をついていた



「あ、りな、疲れさせちゃったよね?ごめん。ちゃんと話そうって前から考えて、中々いい出せなくて…」



俺とした事が情けない、今更彼女の気持ちを疑う必要があるか?無いだろう。



「うん、何か悩んでたのは知ってるから、言うならハッキリしてくれないかな?」



 え、バレてんの?いや、待て、まさか押入れの中のゼクシィが見つかったのか?



——だとしたら恥ずかしいんだが!



 俺は覚悟を決めて背を伸ばし、りなをしっかり見つめて



「分かった。ハッキリさせてもらう」



と、言ったが、緊張の余りテーブルの上で

指の色が変わるほど、手を握りしめた。



「りな、俺と…」



——結婚してください



「いいわよ」



 りなが言葉を被せたので、俺は、最後まで言葉が言えなかった。



——は、マジ?いいの?



俺は、ぎょってして目をパチパチした。



「本当か、本当にいいのか?」



——取り消しはできないぞ?



「ハッキリさせたいんでしょ?」



 りなはしれっとしている。体調はあまり良くなさそうだ。早く帰った方がいいか?



「勿論。そうだけど、取り消すなよ?」



 帰って良く考えたら、やっぱりやだとか言われたら、俺立ち直れないよ



「ええ、大丈夫よ」



俺は、信じられない気持ちのまま、目の前にあるアイスコーヒーを一気飲みをした。



「グッ、ゲホケホっ」



——苦!やっぱ、にっがい



「何してるのよ!?」



 りなが慌てている。心配してくれた?

俺は涙目になりながら


「いや、夢かなって、苦いし苦しいから、夢じゃないんだよな?」


苦味が広がるが、心の中はピンク一色だ!


 りなは、涙をグッと堪えた顔をしている

俺も泣きそうだけど、ちゃんと堪えた。



「よし、じゃあ、行こうか」



 俺は、涙を見せない為にも伝票を取ると

さっと会計に向かった。



 りなが、慌てて荷物を持ってついて来た。多分、自分の分は払うと言うのだろう。



「コーヒー代払うわ」



 やっぱりね、りなはそう言うと思ったよ。

でもね、今日は俺が払いたいんだ。



「コーヒー代?いいよ、そんなの」



俺は、とぼけた振りをして早々に店を出た。



「…じゃ」



りなは、どことなく具合が悪そうだけど、誘っても大丈夫だろうか?



——聞くだけ聞いてみようかな?



「りな、今から指輪買いに行こうか」



俯いていたりなが、パッと顔を上げた。



「え?」



 珍しく、気の抜けた返事だったが、それよりも、りなな頬を伝う涙に驚いた。



「りな、プロポーズ、泣くほど嬉しかったの?なら、もっと早くに言えばよかった」



 俺は、りなが受け入れてくれた事、涙を流して喜んでくれた事が嬉しくて、



「式はいつにしようか?」



 俺は調子に乗って、りなの手を引き、ウキウキしながら駐車場まで歩いて行った。




 あの後、りなから『紛らわしいわ』と

怒られてしまいましたが…


俺、りなになら、怒られたって幸せだよ。






彼氏バージョン、いかがでしたか?

彼女、実はとっても大切にされていました。


よそよそしく感じたのは、多分、彼氏がゼクシィ隠していたからです。急に、コソコソ携帯見たり、ソワソワし出したから、彼女はすっかり疑ってしまいました。


お話が気に入ってくれたら、★評価、反応コメントよろしくお願いします!


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― 新着の感想 ―
Xから伺いました(^^) とても良かったです(^^) 前にも1話目は読んだことがあるのですが、彼氏視点が入り、より分かりやすかったです(^^) りなさん、かっこいいですね(^^) とても良い作品を…
読ませて頂きました! りながかっこよくて、可愛くて、心から幸せになってほしいと思える主人公で惹かれました。 彼氏が思った以上にりなのことを好きなのがキュンとしました。とても好きな展開でした! ほっこり…
こういうアンジャッシュ方式のすれ違い昔から好き。
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