表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢みるライトは宇宙の果てに(偽神と魔剣と光の奔流)  作者: 刹那による京都城主(藤安)
11/17

11 影

 その瞬間、戦いが始まった。

光と闇の刃が交錯する。

互いの動きは完全に同一。剣の軌道、足運び、呼吸までもが同期している。まさに「自分自身との戦い」だった。


「ーーっ!」


そして、”影”は容赦なかった。

怒り、憎しみ、恐怖、嫉妬、絶望……。それらの感情がそのまま”影”のハルトの力へと還元され、容赦なく襲いかかってくる。


「ふざけんな、そんなものだけで、俺を支配できると、思うなよっ!!」


ハルトは、自分の剣に込めた。

仲間を守りたいという思い。正しさにしがみつく意思。何より、自分自身を信じる心ーーー。

光が、爆ぜた。

影の刃が砕け、虚像が断ち切られる。


『審判:完了。汝の心、偽りなし』


空間が崩れ、ハルトは現実へと還っていったーー。


「ハルト!!」


目を開いたハルトは、蒼い光に包まれながら立ち上がった。

その光は彼の背へと集束し、六枚の光翼が浮かびあがった。そして、手には新たな”剣”が宿っていた。

それはゼルですら見たことのない輝きを放つ、『奔流の核剣コアブレード』。

ゼルは静かに、そして嬉しそうに微笑んだ。


「君は、可能性そのものだね。なら、僕も、本気を出さなきゃいけないな」


静まり返る空間の中で、ゼルは微笑みを湛えたまま一歩、また一歩とハルトに近づく。

彼のまとう空気は、さきほどまでの穏やかなものとはまるで違ってみえた。


「ようやく目覚めたね、ハルト。都市に認められ、『コアブレード』を手にした継承者……君なら、あの計画を”壊せる”かもしれない」

「……計画? 何のことだ」


ゼルは立ち止まり、ゆっくりと手をかざす。すると、周囲の壁に幾重にも重なった記録映像が展開された。

そこに映っていたのはーー


巨大な祭壇に並ぶ、仮面をかぶった存在たち。

その中央に座すは、白銀の王冠を戴いた”偽神”の姿だった。


「これは、かつてこの世界を創造したとされる『神々』の残影。そして、今、彼らの意志を騙り、世界の再編を目論む者たちの会議の映像だ」

「偽神……?」

「そう。彼らは”神”などではない。『光神連合デザイア』の最高議会、その中枢にいる『神美騎士団アマテラス

の者たち。つまり、”選ばれし血統”による完全支配を正当化するための虚構だよ」


映像の中では、機械的な声が語っていた。


『来る”光環月”の日、全ての”門”を開放する。

選ばれし者以外の魂は、浄化され、新世界の糧となろう』


ハルトの拳が震える。


「そんなのが、神のやることかよ」

「だからこそ、君に託したいんだ。この都市『ヴィバイア』に眠る、本物の神の記憶ーーそして『禁域』への鍵を」


ゼルは左胸を開くように指でなぞり、そこから露出させたのは……金属と魔力の融合体、『疑似神核フェイク・コア


「僕は、元は人間だった。だが、”選ばれなかった”存在として、彼らに心と体を切り刻まれ、”番人”へと改造されたんだ。

記憶を消され、感情を封じられ、ただの、番人としてここに立たされているんだよ」


その声には怒りも悲しみもなかった。

ただ淡々と、事実を語るだけ。


「でも、君を見て、やっと思い出した。この手で何を守りたかったのか。何のために今まで存在していたのか」


ゼルの眼に、一瞬だけ熱が宿る。


「だから僕は、君と、戦う。本当に君が”壊せる者”かどうか、確かめるために」


その瞬間、都市全体が震えた。

都市そのものの魔力がゼルに集約し、彼の姿が変貌していく。

背に浮かぶ八枚の鋼翼。

剣と銃が融合した異形の武装群。

そして瞳に宿るのは、『審判者』の光……。


「来なよ、ハルト。君の正義を、その剣で証明してみせてよ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ