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善然戦士ゼンゼ・小説版  作者: 坂本小見山
エピソード6「魔王降臨」
16/17

エピソード6-④

 ゼンゼサヴァンの主砲は破壊されていたが、副砲が一斉にゼットフクイの方を向き、爆弾を放った。そこにゼンゼの操る黄金の竜ゼンゼイジンが割って入り、尻尾で全弾弾き落とした。

「ゼルルルル!」

 ゼンゼイジンは唸り、ゼンゼサヴァンに噛みついた。しかしゼンゼサヴァンはまるで何も感じず、副砲はすべてゼンゼイジンに向いて火を吹いた。至近距離で砲撃されたゼンゼイジンはたまらず払い飛ばされてしまった。


 ヘルゼーフェルは兵隊を薙ぎ払いながらゼットフクイの廊下を進んでゆき、一人の兵の首を掴んだ。

「チームゼットはどこだ?」

 そこにチームゼットの四人が駆けつけ、ゼットガンを構えた。

「我々はここだ!」

 ヘルゼーフェルは兵を離してチームゼットに向き直った。

「チームゼット!俺はお前たちに会いたかった!その強さをしっかりと見せてくれ!」

 チームゼットはエネルギー弾を発射した。ヘルゼーフェルは鎌でエネルギー弾を弾き返しながら、四人を一気に斬り伏せようとした。しかし、一度辛酸を嘗めた敵の太刀筋を見切れぬチームゼットではない。彼らは瞬時に身を翻してこれを躱した。

「ゼッ!」

 驚くヘルゼーフェルを、四人は挟み込むように立った。

「撃て!」

 四人の集中攻撃をヘルゼーフェルは跳ね返しきれず、最高威力に設定されたゼットガンの有りっ丈のエネルギー弾を浴びせ掛けられた。

"ZEEEEA!"

 ヘルゼーフェルは爆発した。

 天井のスプリンクラーが炎を消すと、倒れている人の姿が認められた。チームゼットはゼットガンを構え、警戒しながら近付いた。それは、人間の姿に戻ったヘルゼーフェルだった。彼は気を失っているようだった。近くには鎌も落ちていた。

「今のうちにとどめを刺しましょう」

 権守は言ったが、衣笠は首を縦に振らなかった。

「いや、逮捕だ。山田隊員、ゼルメタルで身柄を拘束できるか」

「やってみます」

 山田はポケットからゼルメタルの延べ棒を取り出すと、ヘルゼーフェルの手足に乗せ、

「デメン・ヘルゼーフェルゼ」

 と命じた。ゼルメタルは手錠となり、その手足を縛った。

「山田隊員、ゼットフォンは使えるか」

 山田は新調したゼットフォンを三人に渡しながら手早く言った。

「最低限のゼットマシンの操縦は可能ですが、パーソナライズが未完了なので音声入力が使えません。僕が逐一指示します」


 一方巨神モードに変形したゼンゼイジンは、ゼンゼサヴァンの進行を食い止めんと体当たりしていた。その体躯は度重なる砲撃ですでに傷だらけになり、装甲がもぎとられた箇所からは液体ゼルメタルが流れ出、弱りきってもなお、ゼットフクイに向かってじりじりと押してくる邪悪な黒い船を懸命に押し留めていた。

 そこに援護射撃するものがあった。三機のゼットマシンである。ゼットフタバのミサイルが直撃し、ゼンゼサヴァンは体勢を崩した。そこにゼットサツマのビームが発射され、いくつかの副砲を破壊した。

「ゼンゼ君、超絶斗合体だ!」

「心得た!」

 ゼンゼはゼンゼフェルを掲げ、命じた。

"Zeendam!"

 ゼンゼイジンは合体待機形態になった。そこに山田から連絡が入った。

「ゼンゼイジンからゼットマシンのOSにアクセスしてくれ」

「心得た。"Praujenema"」

 ゼンゼがゼンゼイジンに命じると、ゼットマシン各機のコンソールに警告メッセージが出た。

"ZENZEIZIN IS REQUESTING PERMISSION. DO YOU WANT TO ALLOW IT?

<YES> <<NO>>"

「アクセス許可してください」

 山田の指示に従い、三人は各自アクセスを許可した。すると、ゼットマシンは変形を開始し、ゼンゼイジンに合体した。

"DO YOU REALLY WANT TO DELEGATE THE INITIATIVE FOR SOME FUNCTIONS TO ZENZEIZIN?

<YES> <<NO>>"

「全てイエスで!」

 山田の声が聞こえたのと同時に、ゼンゼサヴァンの砲撃が命中し、合体したばかりのスーパーゼンゼイジンは吹き飛ばされた。

「被害報告!」

「フタバ推進エンジンダウン!」

「タンバ電撃兵器いずれもオフライン!」

 警報音の鳴り響くコクピット内で、三人はスーパーゼンゼイジンの体勢を立て直すべく手動操作を行った。


 その様子を見て、ゼットサヴァンのブリッジではダークゼンゼが高笑いをしていた。

「ゼッゼッゼ!我が理想を理解せぬ虫けらに似合いの姿!」

 ダークゼンゼは剣を突き上げ、命じた。

"Lel nai"

 すると、ゼンゼサヴァンは変形を開始した。


 辛くも立ち上がったスーパーゼンゼイジンの内部では、四人が敵の禍々しい変形に慄いていた。

 唐井がこぼした。

「何だあれは・・・」

 ゼンゼの声にも焦りが出た。

「まずい。手足の修復が予想以上に進んでいる!」


 ゼンゼサヴァンは空中で巨神へと変形を遂げた。それはスーパーゼンゼイジンにいくらか似ていた。かつてゼンゼイジンに破壊された左脚と右腕は未再生であり、半透明の結界で補われていた。

「君たちなど不完全態のゼンゼサヴァンで十分だ。精々悪あがきをするがいい!」

 いつしか降りはじめた雨の中、スーパーゼンゼイジンはふらつきながらゼットセイバーを両手に握り、宙に浮かぶゼンゼサヴァンに飛びかかった。ゼンゼサヴァンが手をかざすと、手から液体ゼルメタルが飛び出し、生き物のようにうねって襲いかかってきた。スーパーゼンゼイジンはそれを躱し、夜の滑走路を駆け抜けた。スーパーゼンゼイジンはゼンゼサヴァンの放つ液体ゼルメタルの上に飛び乗ると、ゼットセイバーを上段に構えてゼンゼサヴァンに迫った。

"ZEEEEE!"

「うおー!」

 五人は息を合わせ、ゼットセイバーを振り下ろした。しかし、天翔ける巨大な刃がゼンゼサヴァンを斬ることはなかった。あろうことか、ゼンゼサヴァンの左手がゼットセイバーを禦いだのだ。

「何!」

 ゼンゼサヴァンの凄まじい腕力はゼットセイバーをぎりぎりとねじ伏せ、その死の蹴りがスーパーゼンゼイジンに炸裂した。スーパーゼンゼイジンの巨体はあたかも紙くずのように飛び、ゼットフクイにめりこんだ。

 瓦礫の中から立ち上がったスーパーゼンゼイジンに剣を拾う隙すら与えず、ゼンゼサヴァンの透明の右拳が炸裂した。左手に比べれば威力が劣るとは言え、スーパーゼンゼイジンの体勢を崩すには十分な一撃であった。

 ゼンゼサヴァンの肩の上にダークゼンゼの姿が見えた。ダークゼンゼは漆黒の鎧越しにくぐもった声で言った。

「偽りのゼンゼよ。騎士の誇りあらば立ち会え!」

 ゼンゼはゼンゼイジンのハッチを開いた。

「隊長、あとは任せた!」

「よせ!奴の思う壺だ!」

 衣笠が静止したとき、既にゼンゼは外に飛び出していた。

 降りしきる雨の中、ゼンゼサヴァンの巨体に飛び乗ったゼンゼに、即座にゼンゼフェルレズが襲いかかった。ゼンゼはこれをゼンゼフェルで禦ぎ、逆襲を開始した。打ち合うほどに、ゼルメタルは共鳴を起こし、辺りに甲高い音を鳴り響かせた。幾合か打ち合った末に、二振りはぎりりと噛み付き合った。ダークゼンゼは言った。

「ゼンゼの名もその剣も私のものだ!」

「師匠から名と使命を託された私には責任がある!」

「は!何が責任だ。笑わせる!」

 ゼンゼサヴァンが大きく動いた。ゼンゼサヴァンはスーパーゼンゼイジンの拳を躱したのだ。振り落とされそうになった二人は同時に飛び上がり、スーパーゼンゼイジンの肩に飛び乗った。しかし、すぐにゼンゼサヴァンの拳がスーパーゼンゼイジンを打ち、スーパーゼンゼイジンは倒れた。二人は再びゼンゼサヴァンの体に飛び乗ろうとしたが、ダークゼンゼに切りつけられたゼンゼは転落、ゼンゼサヴァンの腰から突き出た構造物の上に落下した。

"Zef-luvuz"

 ダークゼンゼの命令を受け、ゼンゼサヴァンは倒れたスーパーゼンゼイジンを右脚で踏みつけた。

 ゼンゼはゼンゼサヴァンの体躯を駆け上り、ダークゼンゼに飛びかかった。二人の刃は再び噛み合った。

「認めることだ。君はただ自分を自分たらしめる存在意義と名前を欲しているにすぎない」

「黙れ!」

 ゼンゼは怒りに任せて盲滅法に斬り掛かった。ダークゼンゼはそれを全て躱し、ゼンゼン後ろを取った。すぐに振り向いたときにはゼンゼフェルレズが振り下ろされ、ゼンゼの肩に食い込んだ。

"ZEE!"

「は。ゼゼール人のような悲鳴を上げるね」

「わ、私はゼゼール人、そしてゼンゼだ・・・!」

「君はゼゼール人でもゼンゼでもない!国も名も無き者など、存在しないのと同じ!」

 ゼンゼの肩からは、金色の液体ゼルメタルと赤い血液が混ざりあいながらどくどくと流れた。

 ダークゼンゼはゼンゼサヴァンに命じた。

"Fenez funejzene"

 ゼンゼサヴァンはスーパーゼンゼイジンを踏み潰すべく右足を高く上げた。そのときの一瞬のぐらつきを見逃さず、ゼンゼはダークゼンゼの剣から逃れ、間合いを取ることに成功した。そして、ゼンゼフェルの宝珠を二回転させると、大きく振りかぶった。

"Zenzen-fan!"

 ダークゼンゼはほくそ笑み、ゼンゼフェルレズの切っ先をゼンゼに向けた。

"ZEEEE!"

"ZEEEE!"

 ゼンゼサヴァンの足がスーパーゼンゼイジンに振り下ろされる寸前、ゼンゼとダークゼンゼの剣が激しく打ち合った。強烈な共鳴が起き、二人のゼンゼンは同時に解除された。

 まさにそのとき、ゼンゼサヴァンの動きが止まった。それだけではなく、地上で兵隊と戦っていた下級ゼーフェルたちも動きを止め、にわかに溶けて液体ゼルメタルになった。

「ゼッ!魔力切れか!」

 ダークゼンゼは焦りを露にした。

「今だ、隊長!」

「承知!」

 スーパーゼンゼイジンはゼットセイバーを拾い上げると、ゼンゼサヴァンの肩に斬り掛かった。ゼンゼサヴァンの強靭な鎧にも罅が入り、やがて内部の巨大なゼーフェルのような構造が露出した。ゼンゼサヴァンはよろめき、生物のように苦しんだ。

 ダークゼンゼは飛び退ると、頭部の装甲を収納させ、顔を露出した。

「ゼルメタルが言っている。今は決着の時ではない、と」

 ゼンゼもまた顔を露出し、毅然と返した。

「貴様にゼルメタルを語る資格はない。ゼンゼの名にかけて、必ず斬る」

「その言葉をそっくり返そう」

 ダークゼンゼはゼンゼサヴァンの内部へと戻った。ゼンゼもまたスーパーゼンゼイジンのコクピットに戻った。



 ゼンゼサヴァンが超高速で撤退していった東の空から、明らかなる旭が昇った。ゼンゼとチームゼットは傷付いた愛機を降り、ただ新たな日の訪れを漫然と見遣った。

「とりあえず追っ払ったわね・・・」

 権守は誰に言うともなしに言った。

「でもどうします?ゼットフクイは木っ端微塵ですよ」

 唐井の言う通り、ゼットフクイは瓦礫の山と化していた。

「基地など何とでもなる。今は全員無事である奇跡を喜ぼう」

 衣笠は四人を元気付けた。

「と、とりあえず、朝飯だ!レトルトカレーでいいかな」

 山田は努めて気丈に振る舞ったが、唐井は彼女の痛みを理解していた。

「健美、無理すんな」

 山田は唐井の胸に縋り、糸が切れたように泣きだした。

「フクイ・・・僕のフクイ・・・」

 歔欷を漏らす彼女を唐井がそっと抱くのを尻目に、衣笠は何も言わず朝食の支度を始めた。



 そのとき、彼方で争う声が聞こえた。

「大人しくしろ!さもないと撃つぞ!」

「俺はもうゼーフェルじゃないんだって!日本のみんな、仲良くしようよ!」

 ヘルゼーフェルの男が目覚め、見張りの兵隊に拘束の解除を求めていたのだった。以前と打って変わり、人間らしい声になり、瞳には命の色が宿っていた。その顔を見て、ゼンゼは驚いた。

"Zaji…?"

 ヘルゼーフェルの男もまた、ゼンゼの顔を見、懐かしそうに言った。

"Ze! Zeit…"

 彼は何か言いかけたが、ゼンゼの腰に帯びたゼンゼフェルを見て、何かを察した。

"Zenze, je zo.

 男がそう言うと、ゼンゼは深く頷いた。

"Ze, fademera, zaji. Jef ana mulura.

 ゼンゼは、今度は衣笠の方を向いた。

「済まないが、拘束を解いて差し上げてほしい」

「彼は何者なんだ」

「彼はゼゼール騎士団一の魔導士、ゼッソさんだ」

 ヘルゼーフェル改めゼッソは、人懐こい笑顔を見せた。



 日本は危機に瀕している。平和を踏みにじる恐るべきゼーフェル軍団の首領がついにベールを脱いだ。そして、我らが英雄もまた、その謎に満ちた鎧の内側を覗かせた。戦え、チームゼット。戦え、善然戦士ゼンゼ。激戦は新たなる局面を迎えたのだ。



 第一部・完。第二部につづく

第二部鋭意執筆中。御期待下さい。

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