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宝石の魔法  作者: つぶ丸
第二章
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図書館という不思議な空間

 大きな看板を左手にまっすぐ歩いていくとそこにはブース型のスペースがあった。これこそがマザーAIの知識を授けてくれる子機がある場所だ。ブースの中には机や椅子はなくただ空間があるだけの場所がある。その空間は人が三人位は入れそうだった。

 ブースの中に入ると自動的に子機が起動する。目の前に大きなホログラム画面が現れ画面の中に大きな字でWisdom of Motherと書かれている。

「母の知恵? どういうこと?」

「マザーAIってことを言いたいんだと思う。母の知恵は偉大という考え方が元になってるはずだ」

「そうなんだね」

 大きな画面のStartと書かれてある部分に手を伸ばす。すると子機が認証モードに入り俺の生体情報に紐づけられたあらゆる履歴を検索していく。同様に花凛も履歴が検索されていく。

 認証完了の文字が出ると画面が切り替わりサポートガイド音声が流れた。

『こんにちは私はサポートガイドです。検索したいものを教えてください』

「俺の腕に付いているこの腕輪と花凛の指輪について」

『検索します……多数のヒットがありました。閲覧しますか?』

 俺はそのまま頷くと目の前の画面がローディング画面になり結果が出るのを待つ。するとコード入力画面が突然割り込んできたように現れ、ガイド音声が流れる。

『アクセス権限の確認を行います。アクセスコードを提示してください』

 おかしい。マザーAIにある全てのデータは閲覧可能なはずだ。アクセスコードを求めることがあるとは聞いていない。

「星、アクセスコードなんて知ってる?」

「知ってるはずがないだろう。どうなっているんだ」

 目の前の画面ではアクセスコードを入力する画面が待機している。しかし、アクセスコードなんて知っているはずもく、どうしようかと考えているといきなり画面にアクセスコードが入力されていく。

 けれど、その入力されていくコードは伏字になっており、そのコードが何だったのかすら分からずにロック画面が解除されてしまった。

『アクセスコードを確認しました。閲覧可能状態となりました』

 そのサポートガイドの音声と共に画面いっぱいに沢山のタブが溢れていく。研究論文や新聞記事などが目の前を覆いつくす。呆気に取られていた俺たちも正気に戻ると互いの顔を見あう。

「これ、本当に見てもいいの? さっき勝手にコード入力されていったけど、これハッキングとか疑われて捕まったりしない?」

 花凛が恐る恐る俺に尋ねてくるが俺だってわからない。アクセスコードが必要だったし一般人が見てもいい情報なのかそうでないかと言われたら、絶対に見てはいけないものだろう。

 ……だが、良心に従ってここで見るのを諦め司書に、訪ねたりしたら一生この情報は見れないだろう。ならば、ここで見てしまえばいいのではないか。

「何とか言ってよ、このままだと本当に捕まっちゃうよ?」

「今回はやめておこう。このことは司書に報告してそのあと別のアプローチで調べる」

 花凛の言葉で正気に戻った俺は、見ないという選択肢を取った。それは果たして本当によかったのかそれともチャンスを失ったのかはわからない。だが、それ以上に、本来あるはずのないアクセスコードと勝手にコードが入力される現象に恐怖したのだった。


 司書に報告すると、司書は急いで確認作業を行った。すると、大した問題ではないから安心してもいいと言われる。それと、調べものをするならその現象が起きたブースではないところでしてくれと言われた。後に覗いてみたら先ほど使っていたブースは使用禁止のテープが張られており、入れないようになっていた。

「大した問題じゃなかったらあんな風にしないよね?」

「大した問題ではないけど、詳しく知らべたいから一時的に封鎖してるだけだと思うぞ」

 ふーんと花凛が興味を失ったかのように言うと、別のブースへ入っていった。

 別のブースへ入ると、同じようにWisdom of Motherと書かれたホログラム画面が出迎えていた。それから同じようにStartのところで手を伸ばし起動させ、生体情報を認証させる。

「今回は花凛が持っていた本について調べよう。多分遠回りだけど、似たような情報が得られると思う」

 花凛がびっくりしたような目でこっちを見ると首を傾げた。

「別にあれは児童向けの都市伝説まとめみたいな本だよ? 特に調べるような事でも無いと思うけど」

「でも、ぴったり同じものが書いてあって、同じようなことが起こったんだから」

 確かにと花凛は頷くと音声入力で本の題名を検索する。そして出てきた情報をもとに関連検索で情報を集め、また関連検索で、というやり方で情報を集めた。

 そして、それから時間がそれなりに経った頃。俺たちは一旦切り上げることにし、昼食をとることにした。アナログ時計を見ると既に時間は昼時を優に超えている。

「なにか成果はあったか?」

「うーん、今のところめぼしい情報はないね。なんかネットの都市伝説記事を集めただけみたいな感じ。でも、昔からこの腕輪や指輪が存在していたっていう情報は色んなところで言われているのはわかったよ」

「そうか。俺もそんな感じだ」

 そして俺たちはブースを出て、併設されている食堂へと向かった。

 図書館に食堂が併設されているなんて不思議な話だが、けれど少し考えてみれば移動時間がこれだけかかるこの立地でまた外へ出てご飯を食べてまた戻ってなんてしていたら、国会議員の人たちもたまったものではないな、と思った。

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