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宝石の魔法  作者: つぶ丸
第一章
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非日常

 翌日、早朝

 目が覚めるといつもの天井だった。しかし、いつもの視界ではなかった。なんと表現するのが正解なのか一瞬ではわからなかったが似たものならわかった。

 ゲームの画面だ。

 視界の右上端には現在の時刻が表示され左下には心拍数らしい数値とその他諸々のよくわからない数値やらが表示されていた。

 しかし知らぬ間に視界は元通りに戻った。

「そうだ、花凛は大丈夫か?」

 携帯を探そうとすると不意に声が聞こえた。

「おはようございます。マスター」

 声の主へ顔を向けるとそこには昨夜動かなかったαのボディーがあった。

「ようやく動いたかα。昨日どうして動かなかったんだよ」

「何者かによってクラッキングを受けていたので機能を一時停止し再起動を行なっていました」

「なんだと、クラッキングされていたのか。セキュリティプログラムをインストールしていたはずだからバックグラウンドで対応できるはずなのに再起動をするほどのクラッキングを受けていたとはな。それで対応は終わったのか」

「いえ、再起動を行い、クラッキング元を撃退したのはいいのですが何かのデータプログラムをインストールされました。セキュリティプログラムに反応がないのでアンインストールを自動で行うことはできません」

「そうか。ならばそのデータを今からアンインストールしろ」

「了解……ブロック命令を確認。アンインストールにはパスワードが必要です」

「パスワード?」

「百四十四桁のパスワード認証を求めています」

 どういう事だ。新手の集団クラッキングとかではなさそうだし明らかに俺のαに何かをしようとしている。とりあえずパスワードがわからない以上、下手に手を出すことはできない。

「今は、花凛の状況が知りたい。花凛に電話を繋げ」

「了解──花凛の電話につながりません。電源が切れているか電波の届かない場所にいる可能性があります」

「何!」

 急いで自室を出る。着替えずに気絶したため服は学校の制服のままだったのでそのまま外に駆け出す。

 花凛の家は丁度向かい側にあるのでまだ交通量の少ない道路を走り抜け花凛の家の玄関前に辿り着く。

「呼び鈴を鳴らすのは流石にまずいか」

 どうしようかと悩んでいると装着したまま外れなかった腕輪から声が聞こえる。

《マスター。プログラムの解析が完了しました。どうやら今マスターがつけている腕輪がクラッキングしたようでその腕輪と私との通信プログラムのようです》

「だから今お前の声が聞こえているわけだな」

《その通りです。そして今お困りですね? その腕輪の力で今の状況を打破することができますよ》

「なんだと」

《腕輪に触れてみてください。不思議なことが起こりますよ》

 言われた通りに右手で腕輪に触れると左腕に緑色の紋様が浮かび上がった。

「奇妙な柄が浮かんできただけだ」

《これでマスターは空に浮かぶことができます》

「──冗談を言うな。お前に変なジョークを言うプログラムを入れた覚えはないぞ」

《お試しください、マスター。きっとマスターもその真実に気づけます」

 クラッキングのせいなのか今日のαは意味ありげな発言が多いし変なことを言うことが多くなっている。

 しかしAIがそこまで言うのなら試してみようかとは思うようになっている。

 ブレスレットに触れながら飛べ! と念じてみる。

 すると、重力の重さが体から抜け落ち足が地面から離れていく。

「おぉ。本当に宙に浮けるとは」

 思わず声が出てしまったが兎も角、浮けるのなら話が早い。そのまま二階に上がり花凛の部屋の窓まで移動するように念じてみる。

「あれ、動かないな」

《マスター。念じるだけでは動きません。魔法ではないのだからしっかり理論に基づいて動いてください》

 理論?  今、理論と言ったか。

「どう言うことだ」

《その力は魔法ではないのです》

「だからどういうことだ」

《……》

 返事は無い。いい加減にしてほしいものだ。だがしかし、理論に基づいている以上、この地球の物理法則に則って俺は浮いているとみていいだろう。つまり体を動かしてみれば何か起きるという事だ。

俺は階段を登るように右足を上に持ち上げる。そしてそのまま力を込める、と、体が持ち上がりまたもや空へ近づいた。

「なるほどね。こういうことか」

 その調子でどんどん上に登っていくともう花凛の部屋の窓へと着いた。こっそり覗いてみると花凛はまだ寝ていた。

《鍵は開いていますよ、マスター》

「そうか」

 窓に手をかけ、そっと開けると中へ入っていく。

 案の定、床に転がっていたので声をかける。

「おい、花凛。生きているか」

「ん、あれ星なんでいるの?」

 しばらくの間、沈黙が流れた。

「理論に基づいたらこうなった」

「意味わかんない」

「多分、花凛もできる」

「もっとわかんない」

「俺もわかんない」

「まあいいよ。とりあえず起きるか、あれ?」

 少し困惑した顔で花凛が床で身悶えている。床に手をつき起きあがろうとするが力を失ったようにまた寝転がる。

「何をしてる」

「力が入んないの。助けて」

 花凛の上体を起こしてやるとまた困惑した顔をする。

「どうしよう。下半身と左腕に力が入らない」

「痺れているわけじゃなくて?」

「そのままの意味で力が入らないの。もしかしてこれが代償なのかな」

「本当に代償が……」

「昨日、代償なんて無いって言いきったお馬鹿さんはどこの誰かな? ハァ…これ、なんて親に言い訳しよう……」

「ウッ、それは本当に申し訳ないことをした」

「で、どうするの?」

「とりあえず、ここだと色々と面倒だし俺の部屋へ連れていくよ」

「動けない私をどうするつもり?」

「やましいことをこの状況でやるかよ」

「冗談だよ。星がそんなことできるはずないし」

 口を開くたび余計な一言を言う奴だ。兎にも角にも状況が複雑過ぎる。

 このままでは、どうにもならないので一旦僕は先の方法を使い花凛の家の前まで降りる。その後、「幼馴染」という顔パスを使って花凛の親に家に入れてもらい、そのまま花凛の部屋に急行する。

 その後、「花凛は具合が悪そうなので休ませてあげてください」と花凛母に嘘をつき花凛両親が仕事に出かけたタイミングで花凛を僕の部屋まで運ぶ。「もの扱いするな」と怒られた時には流石に落とそうと考えたりもしたがそれ以外は何事もなく順調に事が進んだ。

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