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宝石の魔法  作者: つぶ丸
第一章
2/29

出会い

はじめましての人もお久しぶりの人もようこそ。

あなたがこれから読もうとしているのはとてもとても不思議な話です。ですので、出てきている登場人物や団体、国などはすべて仮想であり、すべて実在のものと関係はありません。

では、この作品をお楽しみください


 よく晴れた朝。気持ち良い朝とはこういう日のことを言うに違いない。真っ青な空に肌を照りつかせる太陽。こんないい日は窓辺に寄りかかり、コーヒーを片手に本でも読んでいれば現代における風情というものだろう。

「何してんの。置いてくよ」

 可愛げのあるハーフツインをした女の子が僕に話しかける。今まさに声をかけた女の子は高嶺花凛(たかみねかりん)。雰囲気とはかけ離れた活発的な少女である。

「すまん、あまりにもいい天気だからつい雰囲気楽しんでた」

「何それ。変なの」

 僕たちは制服で身を固めた立派な高校生なのだから遅刻は厳禁ものだ。しかし、いつもとは違うこの朝はどうしてもゆっくりしたくなるものだ。

 なので、いつもの通学路でこの雰囲気を噛み締めながら歩く。

 すると突然、花凛が止まった。

「どうした花凛。僕と同じようにこの雰囲気を楽しむ気になったのかい」

「違うよ、これを見てよ(せい)。これ落とし物かな」

 花凛は意外なものを手にしていた。

「これ、すごく綺麗じゃない?」

 そう言って見せてきた物は、真紅の宝石をつけている指輪だった。その妖艶な見た目と輝きは人を魅入らせる魔力を持っていた。

「すごいな。変な装飾もされてないし何より宝石がいい色をしている。ルビーかな?」

「そんなに見てもあげないよ?」

「もともと花凛のじゃないだろうに」

「それもそっか」

 あっはっは、と笑って花凛が元の場所に戻そうとする。しかしなぜか何かに操られたように僕がそれを止めた。

「え、どうしたの」

「いや、なんか勿体無い気がしてさ。なんだろうね、このいい雰囲気のせいかな。落ちていたのもここだし探している人がいたらすぐに返せるから今日中は持っていても罰は当たらないかなと思って」

 花凛は何か考えるとすぐにコクッと頷く。

「今日ぐらいならいいよね」

「ああそう思う」


 その日の帰り道、自然と僕の目線は茂みに行っていた。どうしても朝の花凛が持っていた指輪が頭から離れず、また同じものがないかつい探してしまう。すると茂みの中から緑に光るものが見えた気がした。必死になって、あたりを探すと緑色の宝石が飾りつけられている腕輪を見つけた。

「あったぞ、でも指輪じゃないな」

 一緒に帰っていた花凛に見せたが、あまりいい反応ではない。

「どうした? 具合でも悪いのか」

「あのさ、なんか不自然じゃないかな。同じような場所でこんな貴金属が落ちているなんて偶然ありえると思う?」

「あり得るからこうして僕が見つけているじゃないか」

「それもそうだけど──」

 歯切れの悪い花凛は珍しくない。例えば昨日だって僕の大好きな菓子パンをカバンからこっそり盗んで食べたことを問いただしたらこんな感じだった。

「僕も見つけちゃったから特別感が薄れて言っているのだろ?」

「違うってば!」

 バシッと僕を叩いて早足で帰ろうとする。

「悪かったって。ごめんよ」

 謝りながら追いかけると急に花凛が振り返ってこっちに戻ってきた。だがどうも様子がおかしい。

(せい)、どうしよう」

「いきなりどうしたんだよ。叩いてみたり帰ろうとしたりして次は何をする気だ」

 花凛は自分の右手の人差し指を僕に見せながら泣き出しそうな声で訴えてきた。

「指輪が外れないの」

「なんだ、つけてみたけど突っかかって取れないのか? どれ、見せてみろ」

 左手で花凛の右手を取ろうとすると、いつの間にかカバンの中に入れていたはずの腕輪がついている。

「あれ、なんでカバンにしまったはずだが──」

「私もそうなの。ポケットに入れたはずの指輪がいつの間にか指に嵌めてあって、そうしたらいつの間にか抜けなくなって」

「もしかして呪いの類だったりして……」

 互いの額に嫌な汗が伝っていく。飲み込んだ生唾が聞こえそうなくらい、しんと静まり返る。

「まさかね。旧世紀のホラーじゃないんだし呪いなんて、まだハッキングとかの方が怖いよな」

「それもそうだね」

 あっはっはと笑い合った後、また静まる。

「今日はこのまま帰ろう。明日一緒に調べに図書館にでも行こうか」

「そうだね、そうしよう」

その日は二人とも何も喋らずに帰った。


これから毎朝7時に投稿していきます。

よかったら、ぜひフォローといいねをしていただき、ここから続いていく不思議な物語を読んでいってください。

それでは。

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