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宝石の魔法  作者: つぶ丸
第二章
12/29

図書館関係者専用個室

 図書館関係者専用個室と書かれた部屋には、少年と耳飾りをした男が睨みあいながら席の対面に座っていた。そして、奥の座席にはとても裕福な暮らしをしていそうな男が、一人ニヤリとしながら座っている。

 耳飾りをつけた男は一頻り少年を睨みつけた後、奥に座っている男に話しかけた。

「父上、なぜこいつを連れてきたのですか。わざわざ、私の計画を邪魔しようとしているようにしか思えません。観察対象被検体ナンバー3とナンバー4に接触を何回もしています。はっきり言って邪魔です」

 すると、少年も負けじと男の方に身を乗り出し、話をする。

「父上、兄上こそが邪魔です。自ら観察対象に接触し被検体ナンバー4の気分を害した挙句、何の成果もあげられずのこのこと舞い戻ってきたのです。正直に言って兄上はいりません」

 二人から捲し立てられた男はただ黙って二人の言い分を聞いていたがついに言葉を発した。ニヤリと上がっていた口角も今や真剣そのものである。

 そして、発された言葉は、宥めの言葉などではなく、喚く二人に対しての嫌悪感であった。

「やかましいな、二人とも。私がここに呼び出されたのは面白い結果報告であればこそ良いものの、罵りあいを聞くためにであれば、お前らのやったことは取り返しのつかないことになる。どうなんだね、我が息子よ」

 それを聞き、その男の右側に座っていた少年は兄上と呼んだ男を睨み返すと男に向き直り謝罪する。

「私が、父上の耳に入れてほしい情報を得たので報告をさせていただきたくお時間を頂戴しているのにも関わらず、このようなことになってしまい申し訳ありません」

 耳飾りを付けた男は少年には目もくれず、まして男に対して何か言う事があるわけどもなく、ただその席でジッと少年をにらみつけたままである。

 謝罪された男──父親と呼ばれた男は真剣そのものだった表情が戻らず、この男もまたジッと少年を見つめていたが、少しニヤリとするとその謝罪を受け入れた。

「よかろう。では、その情報とやらを聞こうではないか」

 少年はほっとし、椅子に深く腰を掛けなおすと本題を話し始めた。

「どうやら被検体ナンバー4はすでにその力に気づき何度か使用したことがあるようです。しかしナンバー3は依然として能力に気づいていないそうです。けれど私が見る限りでは素質はナンバー3の方が高いように思えました。実際宝石が放つ干渉波はナンバー4よりナンバー3の方が数倍の威力でした」

 父上と呼ばれた男は唸る。何かに悩んでいる様子ではあるが、本当に悩んでいるかは表情からはわからなかった。

「それで? 彼らはどこまでたどり着けそうか」

「恐らくは最終フェーズにたどり着くことはないでしょう。精々、ナンバー3が可能性があるぐらいでしょう」

 今度はずっと黙って少年を睨みつけていた耳飾りの男が口を開いた。今まで黙っていたことが嘘みたいに軽快に喋る。

「ならば、ここは私にお任せください。必ずあの二人を最終フェーズへ連れていきます」

 ついに口を開いた耳飾りの男に対して、父親と呼ばれる男が反応を示す。

「ほう? そこまで言うには策があるのだろう。具体的には何をするのだ」

「はい、彼らを戦闘させるのです。誰にも邪魔されない空間で何かしらと戦闘させることで宝石の干渉波の出力を強制的に引き上げます。そうすることで、干渉段階が進むでしょう。そうですね……漆黒が戦闘相手に丁度良いでしょう。彼もまた実験体の一人なのだから、万が一のことも考えて漆黒が適任かと」

 男が今度は驚嘆したかのような反応を見せる。しかしその反応は、偉大な意見に対する驚嘆ではなく、耳飾りの男の行動に対してである。だが、その感情も一瞬にして薄れ、元の表情に戻る。

「なるほど、漆黒か。あれはまだ動くのかどうか試さないとわからないが、いいだろう。今回はお前に任せよう。期待しているぞ」

 耳飾りの男は少年に目だけを向けるとすぐに向き直り男にお辞儀した。

「ありがとうございます。それでは、私は早速準備に取り掛かりますので失礼します」

 男はドア付近にいるスーツを着た、がたいの良い男二人に合図をすると男たちはドアを開けた。耳飾りの男はドア付近で反転し、また男に礼をするとドアの奥の方へ消えていった。

ドア付近の男たちは丁寧にドアを閉めるとまたドアの両脇に控えた。

 ドアの向こう側から響く、靴と床の摩擦音が聞こえなくなった後、男は少年に声のトーンを落として話しかける。

「では、今度は私の番のようだな。で、あれは大丈夫なのかね」

 あれは、で通じるほどのやり取りを重ねているからこそ、その真意が少年に伝わる。

「ええ、調整班の話では少なくとも計画実行の時までは持つそうです。」

「ふむ、では調整はまだいいだろう。引き続き監視を頼む」

「了解しました。それでは私もこれで失礼します」

 少年が席を立ち、扉の前に近づくと両脇に控えていた男たちが扉を開けようとするが少年がそれを止めさせる。そして反転し、男に向き直ると言葉を発した。

「どうやら、彼らには手助けが不要だったみたいです。少し出しゃばったようです」

 奥の方から返事は帰ってこないが、少年は再びドアに控えさせている男たちに扉を開けさせ、その場を去っていった。

いかがだったでしょうか。

これで第二章は終わりです。

もし面白かった、続きが読みたいなど思いましたら、感想コメントや星評価、いいね、ブックマークの設定などしていただけると嬉しく思います。

第三章も引き続き、毎日7時に投稿していきます。それでは。

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