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宝石の魔法  作者: つぶ丸
第二章
10/29

カレーライス

 食堂へと向かうと、当然のように政治家たちが同じ政党と思わしき人と一緒に食事をしているところや、研究チームで調べものにきている人たちや、少数だが自習のために来ている学生の姿らしきものもあった。

 食堂は一般的な食堂ではなく食券でメニューを注文する方式だった。しかも無料で。もちろんホログラム技術がここでは使えないので一昔前の方式で、料理を人間がしている。旧世代の冷蔵庫まであり、さらにはIHコンロまであった。

「食堂まで徹底してホログラム技術を使っていないなんてすごいね。料理を人間がしているところなんて初めて見たかも」

「ああ、俺も初めて見た」

 食券を手にいれようと食券配布場まで向かっていくとそこにはボタンと受け取り口があるだけの機械が三つあり、それぞれに「ここを押して食券を貰ってください」との張り紙があった。

「これを押せば食券が出る仕組みなのかな?」

「そうだと思う。それにしてもすごいよこれ。ホログラム技術を使わずに機械を動かす事ができるなんて今の世の中じゃありえないよ!」

 興奮して機械を眺めていたらいつのまにか花凛が横から消えている。

「あれ、花凛?」

 まわりを探してみると食品受け取りの列に既に並んでいた。

「機械には興味がないか、やれやれ。なんでそんなに自分が使っているモノに興味が湧かないのか」

 すると突然、知らない声が聞こえる。

「全くそうですね。自ら暮らしている国なのに政治に尽力しない政治屋のようなものでしょうか」

 ビックリして後ろを振り返ると青い耳飾りをした青年が立っていた。その青年は俺と目が合うと微笑みかけた。

「あまりここでそういう発言はしないほうがいいと思いますよ。誰が聞いているかわからないものですし」

 わざとらしく驚いた顔を青年がすると頭を押さえる。

「あぁこれは失念していました。ここは国会みたいなものですからね。確かに誰が聞いているかわかりませんし私の身に何か起きてからでは遅いですからね」

 こいつは関わってはいけない人だと直感的に理解できなかった事を後悔しつつその場を離れようと花凛と同じ列に並ぼうと急ごうとすると青年が呼び止めた。

「なにかの縁ですし御一緒しませんか?」

 そうきたか。

「お誘いは嬉しいですが今日は連れがいますので遠慮させていただきます」

「そうですか。では、またの縁に」

 もう二度と関わりたくねぇよ。そう思いながら花凛の列に並んだ。どうやらメニューは一種類しかなく『図書館カレー』というものだった。

 運よく花凛の後ろには誰も並んでいなかったので話しかける。

「おい花凛、頭のおかしいやつに絡まれた時の対処法を知ってるか?」

「ずいぶん遅かったねって、え? 頭のおかしい奴に絡まれた時の対処法? そんなの無視、無言、無反応の三種の神器でしょ」

「そりゃそうだよなぁ、失敗したなぁ」

 花凛がはぁとため息をつくと、あきれた顔で尋ねてた。

「なにやらかしたのよ」

 勿論、やらかしてはないのだが偶然たまたま変なやつに絡まれただけなのだ。

「変な奴に絡まれたんだよ」

「それは災難だったね、日頃の行いだよ」

 花凛にそんなことを言われると思っていなかったので少しメンタルにダメージが入る。どうやら奴は俺らとは違う列に並んでいるようだ。

 順番が回ってきてついに俺らの番となった。図書館カレーと書いてある食券を厨房の人に渡す。

「図書館カレー並を二つね」

「はい、お願いします」

 厨房の人は食券を確認すると大きな窯からごはんを皿に盛り付けて大きな鍋からカレーを装って福神漬けを綺麗に盛り付けた。

「はい、図書館カレー並だよ」

「有難うございます」

 花凛が先に受けとり俺は新しいのができるまで待った。しかし時間もかからず、すぐカレーは出来た。

「はい、お待ち遠様」

「どうも」

 カレーが入った皿をトレーに乗せ花凛が席をとってくれている場所を探す。

「こっちだよ!」

 すぐ花凛の居場所を見つけられたので冷めないうちにカレーを食べられそうだと期待しながら席へと向かった。

 席に着くと花凛が待ちきれないようだったのですぐに合掌をする。

「「いただきます」」

 スプーンでカレーを掬い口へと運ぶ。

 程よい辛みと酸味、そしてうま味が口いっぱいに広がる。食べたことのない味が口いっぱいになり幸福感を与える。

「なんだこれ、すごく美味しい」

「ね、いつも食べてるような味じゃない」

 毎日、各家庭にあるだろう自動調理マシーンが作る、カレーみたいなものより、こうやって人が作ったカレーが断然に美味しいと感じる。

「これを知ってしまったから、もう自動調理マシーンが作る料理が物足りなくなるかもな」

「金持ちが挙って高級レストランで人に作ってもらう気持ちが少しは理解できたかも」

「違いないな」

 それからは無心にスプーンを皿と口で行き来させるだけだった。


いかがだったでしょうか。

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