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物語の始まり
空が見えないこの暗闇の中で絶望に負けないと絢爛と輝く宝石たちがあった。
この宝石たちは闇の中で何十年何百年と輝き、多くの人間を魅入らせてきた。
時には一国の王。時には村外れの羊飼い。時には国の救済を願う英雄。時には──。
しかし宝石を手にした者の悉くはいい結末に至らなかった。その多くの無念や絶望を纏い、それでもなお輝かんとする宝石たちにはいつしかその輝きに呪いを纏い始めた。
最初は偶然だったかもしれないその無念たちが死して尚、まだその大義や欲や忠誠を果たさんとしようとしたが故の呪い。
そして今、魔法とも区別がつかないような進歩を遂げた科学技術を当然のように使う社会に、また宝石たちを欲す強欲が生まれ落ちた時、宝石たちはより一層輝こうとしていた。