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パーティへのお誘い

 ヘリオスさんとアステールさんからの、パーティへのお誘い。正直に言ってとても有り難い話なんだけど、セイナとジェイドはまだ子どもだから、なるべく危険な目に遭わせたくないし。それにオレが冒険者とか、能力的にも向いてないし。どう考えても、オレ達は2人の足手まといにしかならないし。

 そんな本音をぽろぽろと零すと、ヘリオスさんが笑って言った。


「ユウ、俺達は冒険者といっても、積極的に戦うタイプじゃない。むしろ極力戦闘は避けるから、危険はあまり無いぞ。あと俺達にとって重要なのは、強さよりも仲間として信頼出来るかだ。君らも訳ありだが、俺らも結構な訳ありだって分かるだろ?」


 ヘリオスさんがチラリとアステールさんに目をやる。分かる。


「アステールさんに魅了されないのが、パーティメンバーの必須条件ですよね」


「そうだ。最低でも、アズの素顔を見ても襲わない奴。これが滅多に居ないんだ。声を聞いても魅了されない奴は、更に少ない。ユウは両方クリアしてるし、セイちゃんとジェイドもクリア出来るだろうから、俺達としては是非とも仲間になって欲しい」


「セイちゃんは召喚聖女だから、魅了耐性が高いかもしれないですけど……」


「ジェイド君もきっと大丈夫です。ツガイ持ちの獣人は、魅了に掛かりませんので」


 ジェイドのツガイはセ……うっ、頭が! オレは今何を考えていた? うーん、思い出せない。何を話して……そうそう、パーティを組むかって話だよ。


「でもオレ戦うどころか身を守る術もないんですよ。ジェイドは鍛えれば強くなりそうだし、セイちゃんは回復や防御で活躍できそうですけど。オレは運動神経ないし、魔法も使えないし」


 戦闘を避けるにしたって限度があるだろう。万が一戦闘シーンになった時に一番役に立たないの、どう考えてもオレなんだよ。役立たずだって追放されるポジションだよ。しかも実際役に立てないから、もう遅いも無理というね。ヘリオスさん達は、理不尽な追放劇なんてやらかさないと思うけど。


「身を守る術ならあるだろ。このテントを出して立て篭ればいい。それに大容量のアイテムボックス持ちで料理も美味くて、ポーターとしてだけでも十分やっていけると思うぞ」


「ヘリオスの言う通りです。それに私達は迷宮に潜ったりはしませんし、討伐よりも採集や警護の依頼を多く受けています。戦闘職よりもサポート系の職業の人にパーティ入りしてもらいたいと、ずっと話していたのです。お願いです、仲間になってもらえませんか?」


 アステールさんに両手をギュッと握られ、潤んだ瞳に見つめられる。思わずハイと言いそうになったけど、既のところで堪えた。

 残念、と小さく呟くアステールさん。狙ってやってましたね?


「アズのあれに耐えるか。凄いな、ユウ」


「ええ、これ程の人材、もう二度と現れませんよ。ですからヘリオス、早急に魅力的かつ断れない誘い文句を考えなさい」


「急かすなよ……。そうだな、ユウ、君らはこの国というか、ここの王族から逃げたいんだよな。だったら今が行方不明になる絶好の機会だ。商人のユウから冒険者のユウになれば、上手く行方をくらませられるんじゃないか?」


 ふむふむ、聞きましょう。


「ユウ達3人は、かなり目立つ。商人のユウが召喚されてきた人物だと特定されたら、簡単に足取りを追えるはずだ。だけど乗り合い馬車から降りたことで、一旦行方が分からなくなる。今がここな」


「そうですね」


「だから、商人のユウにはこのまま居なくなってもらう。町や村に立ち寄らずに国境を越えて、隣の国で冒険者登録をすればいい。冒険者なら顔を隠しても、あまり不審がられないしな。寝泊まりはこのテントでして、買い出しなんかは俺とジェイドとか、目立たない組み合わせで行けばいい」


「ヘリオスさんとジェイドなら、親子に見えるでしょうけど。隣国は獣人差別は?」


「南隣のサウスモアなら、偏見はあるが、ここよりはマシだ。ユウ達は交易の国サフィリアへ行きたいんだよな? だったらサウスモアから川を下ると早いぞ」


 おお、そんなルートもあるのか。乗り合い馬車と同じ道を辿って、国境の町でうっかり知り合いと遭遇するよりは、全く別ルートに方向転換したほうが行方知れずになれそうだな。


「それにサウスモアは、入国審査が緩い。パーティの誰か一人がチェックを受ければ、他のメンバーの身元確認は省略されるうえ、入国税がかからない。通行税もな」


 それは助かるけど、国としてそれで良いのか? まあ、国境に壁とか結界とかある訳でも無し、城郭都市にさえ立ち寄らなければ、どこの国も素通りし放題なんだろうけど。

 あと子どもは身分証を持ってなくて当たり前らしく、セイナとジェイドの身分証はなんて聞かれたことも無かった。その代わり町に入る度に通行税が必要だったけど。子どもだからって半額でもなく、毎回二人分の通行税を支払っていた。これが地味に懐に痛かった。お金大事。


「更に、サウスモアからは俺のサブ冒険者ギルドカードを使えば、俺達の行方も辿れなくなる。5人で一緒に行動しても安心だ」


「冒険者ギルドカードって、2枚持ち出来るんですか?」


「特に罰則はないが、ランクがリセットされるから普通は一度しか登録しないな。俺達は、アズが面倒な付き纏いに遭うたびに登録し直してるが」


「姿を隠すためにですね」


 なるほど、オレ達と似たような状況に、度々陥っていると。そうすると、追跡を躱す術もたくさん知ってそう。


 うん、現時点でパーティメンバー入りを断る理由が無いね。むしろ、オレ達にメリットしかない。オレが少しでも戦力になれば、こっちから頭を下げてお願いするところだよ。

 

「オレとしては、仲間になってもらえると嬉しいです。だけど決めるのは、セイちゃんとジェイドに相談してからでも良いですか?」


「ああ、もちろんだ!」


 ヘリオスさんが破顔して、爽やかな笑顔で握手を求めてくる。ガッチリ握手を交わしながら、笑顔を振りまくヘリオスさん。そんなにオレ達のメンバー加入を喜んでくれるのかと、オレは密かに感激していたのだが。


「やった! これでソフトクリイムが食べ放題だ!」


「ええぇ……」


「ユウ君、甘い物ばかりでなく辛くて美味しいものも頼みますね」


「ええぇ…………」


 とりあえず、オレに求められていることは理解した。オレはいそいそと、朝食の準備に取り掛かったのだった。

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