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リヒトさんからの引っ越し祝い

 引っ越し先があまりに快適なので、一家揃って引き篭もりたいのだけれど、そうもいかない。本日ヘリオスさんとジェイドは、改正見習い冒険者制度の申請のために冒険者ギルドに行っている。リヒトさんがわざわざ迎えに来てくれて、サウスモアの首都へと連れられて行った。ジェイドの見習い冒険者登録は、この国ではなくサウスモアですることになったのだ。


 現在ヘリオスさんとアステールさんは、偽名の冒険者ギルドカードで活動しているから、この国の冒険者ギルドでヘリオスさん達は「ヘリオースとアステル」で知られている。だけど、ヘリオスさんとジェイドの養子縁組は、本名で書類を出してあるらしくて。見習い冒険者制度の申請も、本名の冒険者ギルドカードでやりたいんだけど、そうなると偽名で活動してた理由を説明したりとややこしくなるからね。

 だったら事情を全て知っているリヒトさんがいる、サウスモアの首都のギルドで手続きしたほうが、色々と都合が良い。本名の「ヘリオス Cランク」の冒険者ギルドカードでジェイドの後見人になり、パーティ申請も、「アステール Cランク」を加えて3人とも本名でするという。オレは拠点が隣国なのを問題視されないか不安だったので、リヒトさんに尋ねてみたところ。


「問題ない! 冒険者なんてのは訳ありも多いからな、多少の融通は利かせよう!」


 リヒトさんが上手くやってくれるらしい。月に一度の面談もリヒトさんが担当だそうで、なんとそれも我が家まで来てくれるという。


「仕事にかこつけて子ども達に会えるのだ、ラッキーだな!」


 なんて言ってくれたリヒトさんに、オレは巨大樹の桃で作ったコンポートの瓶詰めを、有るだけ渡して送り出した。


 因みに、オレの専属護衛依頼の件はどうなるかといえば、そちらはこの国の冒険者ギルドで契約することにした。オレが指名依頼を出す先は、「ヘリオースとアステル」である。つまり、春からのヘリオスさんとアステールさんは、2枚の冒険者ギルドカードを使い分けることになるのだ。ダブルフェイスってやつだね、カッコイイ!


 さて。リヒトさんは引っ越し祝いの品も持って来てくれた。使い方を教わったので、早速使ってみる。セイナとアステールさんが見守るなか、魔石をセットしてと。

 

 ザー……ガー……ガガー。ムミョン、ピンポーン!


「──はい、こちら東レヌス商会アサド国支店です」


 繋がった! リヒトさんからの引っ越し祝い、東レヌス商会で使われているのと同タイプの、通信用魔道具なんだよ。


「こちら、顧客番号110930、ユウです」


「これはユウ様、いつもありがとうございます。商会長のポタモスでございます」


 リヒトさんに聞いていた通り、商会長さんがまだ居てくれた。良かった、電話って苦手なんだよね、掛けるのも受けるのも。でも、工房に絶対に必要になるって言われたから、慣れなくちゃ。


「商会長さん、今、話して大丈夫ですか?」


「もちろんです。何かご入り用ですか?」


 通信用魔道具もらったから使ってみましたとは言えないので、用事を捻出してみる。


「あー、厩舎用の木材とは別に、建材が欲しくて」


 木の根風呂、そのままでも使えるけれど、お客さんが来た時に困るからね。囲いだけでも作ろうってことになったのだ。オレの素っ裸は見られても恥ずかしいだけだけど、セイナはね、見られるとジェイドが目潰しに走るから。庭を血に染めるのは、ジェイドの鼻血だけで充分だ。

 あとは、調味料や紙などの必要な物を注文すると、建材以外は今からでも届けられるという。


「でしたら、こちらから取りに行きますよ。あ、紙花がいくつか出来てますけど、次回まとめて納品した方が良いですか?」


「いいえ、出来上がっているものから納品していただければ有り難いです。なにせ、貴族の皆様からのお問合わせが……」


 問い合わせという名の催促が酷いのだろうと思い至り、直ぐに出掛けることにした。


 ヘリオスさんとジェイドはリヒトさんの天馬に同乗して行ったので、今日のアステールさんはセイナと共に、トールに騎乗している。トールは魔馬との混血で強いので、戦力補強のためだ。セイナのポケットにはウルを入れて、3人の存在感とかくれんぼ。オレはロキに乗って出発!

 東レヌス商会に到着すると、タイミング悪く、お貴族様の使いらしい男が店頭で喚いていた。かくれんぼしてて正解だった。お店の裏口に回って、顔見知りの店員さんを捕まえ店内へ。


「ユウ様、よくいらしてくださいました!」


 商会長さんはじめ、店員さん達に大歓迎された。お城でのアクセサリー販売会以降、貴族の客が増えるに伴いトラブルも増えたのだそうだ。主に紙花アクセサリー関連で。


「なんだか、すみません」


「いえいえ、お陰様で商会員達が鍛えられておりますので」


 そんな逞しい商人達に感心しつつ、紙花を納品。セミオーダー式で受注した、公爵家や侯爵家の紙花は終わりだと、ホッとしていたんだけど。


「実は、南の公爵様から追加で注文を頂きまして……」


「それは、今受注している分の後で作っても良いんでしょうか」


「……出来ましたら、公爵様のものを先に。特急料金を上乗せしますので」


 アステールさん、値段交渉をお願いします!


 アステールさんと商会長さんが、良い笑顔でお話し合いする横で、オレは手慰みに花を折る。セイナも簡単な花を折り、3つ完成させる頃にやっと、特急料金の値段交渉が決着した。


「では、今後も特急料金はこのお値段で。ところでユウ様、今作られた花も納品していただけませんか?」


 その場で拳闘樹の涙に浸し、まだ乾燥させていない花まで持って行かれたよ。貴族の無茶振り、どんだけ酷いの? 

 お疲れだろう商会長さんに、オレは巨大桃を使った桃のタルトを差し入れした。森の精霊様のご加護で、悪質なクレームが減りますように。



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