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メルヘンなツリーハウス

 広げた地図を前にメモをしていると、セイナが膝に乗っかって来た。大歓迎である。最近はジェイドの膝の上がセイナの定位置になりつつあったので、寂しいなーと思っていたのだ。


「……に……い、3。……が……いー、5。お兄ちゃん、これ何?」


 セイナがメモを表彰状のように両手で持って、読み上げる。日本語で書いていたので平仮名しか読めなかったセイナ。漢字の部分を補うと、メモにはこう書いてある。


“市場に近い、3。人が多い、-5”


 工房建設の最有力候補地がナシになったので、他の候補地を点数化しているのだ。だけど、どこも一長一短で決め手に欠けるので、オレはセイナに聞いてみた。


「セイちゃんは、どんな場所に住みたい?」


「ネコさんのしゅーかいじょ!」


「それは、この地図だけじゃ分からないなー」


 地域猫がいるかリサーチしとくんだった。セイナは実家でも猫が飼いたいって、ずっと言ってたもんな。実家は店舗兼住居のおにぎり屋さんだったから、動物は飼えなかったけど。工房を建てて定住するなら、猫を飼うか?


「ボクが居るのに他の猫が必要なんですか……?」


 おっと、我が家の先住猫ジェイドが悲しげだ。そうだよね、ウチにはもうニャンコが2人も居るし、馬達にスーちゃんにウルも居るから、これ以上増やすこともないか。

 スリスリと擦り寄って来るジェイドの髪をモフりながら、メモに大きな文字で追記する。


“猫は飼わない!!”


「ジェイドはどんな場所が良い?」


 珍しく全力で甘えてくるジェイドに尋ねると、これまた珍しく考え込んでいる。セイナが居れば何処でも良いのは大前提として、ジェイドにも希望があるんだろうか。猫は家につくから、こだわりがあるのかも。工房は持ち運べるようにしなきゃ。


「えっと、ボク……無理だと思うけど……」


「何でも言ってみな?」


「ボク、木の上のお家に住んでみたいです」


 「おお、ツリーハウスか! 秘密基地みたいで良いよな!」


 ヘリオスさんが話に加わってきた。猫は高いところが好きだけど、猫獣人もなのか? 


「この世界にもツリーハウス、あるんですね」


「おう、世界樹(イルミンスール)の幹には町もあるぞ」


 ツリーハウスの規模が違った。でも、木の上のお家ってのも、面白そうだ。候補地を決めたら木を植えて、ハルトムート王子に成長させてもらえば叶いそうだし。


「セイも、木のおウチにさんせー! モモの木がいい!」


「おおっ、良いな! 家を置けるくらいデカイ桃の木なら、桃の実もデカイよな!」


「モモタローのモモくらい?」


「モモタロー?」


「桃から男の子が産まれる話があって」


「プリンセス・モモみたいだな」


「あっ、あの話って本当に実話なんですか?」


 そんな話をしながら、メモをしていた紙を裏返してイラストを──描こうと思ったが止めた。オレが描くとメルヘンなツリーハウスがホラーハウスになってしまう。手が止まったオレからセイナがペンを抜き取って、ジェイドに渡した。


「ジェイド、みんなのおうち、かいて!」


 ジェイドが皆の意見を聞きながら、絵を描き始める。大きく枝の張った木の上に、今住んでいるハウスボートとそっくりな家を置き、巨大な桃が鈴生りに生り、枝にはブランコが揺れている。木の根元には温泉が湧いて、馬達のための広い庭があり、ブドウや梅やリンゴの木が庭を囲む。夢の家だね。


「それにしてもジェイド、絵が上手だな!」


「そんなこと……」


「ないとは言わせないぞ。少なくともユウよりは遥かに上手い」


「そこで何でオレを引き合いに出すんですか。そう言うヘリオスさんの絵は、オレより上手いんでしょーね」


 ヘリオスさんに別の紙を渡して描いてもらうと、ふふん、オレと似たりよったりじゃんか。


「ジェイドのほうが上手だね!」


「うんうん、そうだねセイちゃん。ジェイドはセンスも良いし、そうだ、工房のマークのデザインしてみる?」


「えっ、ボクがですか?」


「はいっ! セイ、ネコさんのマークがいいです!」


「賛成! ジェイド、猫をモチーフにした工房のマーク、セイナと一緒に考えてみてくれるか?」


 実は、これまでに作ったものには付けていないが、工房が出来てからの作品にはマークを付けようと思っているのだ。紙細工は折り紙の内側にスタンプし、組紐は端にスタンプを捺した紙を巻き付けてコーティングと、外からは見えないようにマーキングする予定だ。何かあった時、ウチで作ったものか否かを確認するため。早晩類似品が出回るだろうからね。


 真面目なジェイドは早速、セイナと頭を突き合わせて猫のマークを考えだした。スタンプ帳の猫スタンプを並べて、白猫にするか黒猫にするか、はたまたブチ猫かと思案中だ。

 オレはヘリオスさんと目配せし、夢の家のイラストを持って離れる。イラストに線を引っ張って、ここは見晴らしの良いテラスだとか、木の内側に階段があるとか、許可した人しか辿り着けないとか、好き勝手に書き込んでゆく。これの半分でも叶うと良いな。


 そうして、楽しく夢を膨らませて遊んだ、翌日。


「裏の森に、一夜にして巨大な木が育ったのですが。ユウ、何か思い当たることはありませんか?」


 朝一番で王妃様が我が家を訪問されて、オレに濡れ衣を着せるんだけど。何故オレが疑われてんの? 


 

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