表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
148/177

光属性のもの

「ユウ君、おにぎりを作ってもらえませんか?」


 ちょうど夕飯を作ろうとしていた時だったので、珍しくアステールさんが献立のリクエストをしてきたのだと思ったオレ。アイテムボックスから玉子を取り出しながら、気軽に返事をした。


「わかりました。夕飯の主食、おにぎりにしますね」


「いえ、出来れば今、作って欲しいのです。ユウ君の魔法で」


「アステールさん、お腹空いてます?」


 おやつ、足りなかったかな。梅ジャムを気に入って、ぱくぱくマフィンを食べてたけど。

 しかしアステールさんは首を横に振った。


「ヘリオスじゃないんですから。気になる事が出来たので、鑑定したいだけですよ」


 研究者気質なアステールさんは、調べ物が大好きだ。喜んで協力することにした。


 オレはセイナを呼んで、小石をおにぎりに錬成した。アステールさんが鑑定している間に、セイナにせがまれて、もう1つ小さなおにぎりを作って渡す。小さい子って、一度に沢山食べられないから、直ぐにお腹が空くよね。オレもちょこっと食べたくなって、一口サイズのおにぎりを口に放り込む。


「やはり、ユウ君が魔法で作ったおにぎりは、光属性ですね」


 ゴフッ。米粒が気管に入ってむせるオレに、セイナが樽の水をコップに入れて渡してくれた。ありがと。気が利くね。

 水を飲み干して一息ついたオレは、アステールさんに質問した。


「それって、異常なことですか?」


「いいえ。自然物であれ人工物であれ、属性がついた物は偶にあります。例えば、スーちゃんはウォータースライムなので水属性です。ただ、光属性のものは珍しいですね」


「そうですか。で、何故急に調べようと?」


 アステールさんはローブのポケットをゴソゴソ探り、梅の実を1つ取り出した。


「これです。おやつの時に、梅ジャムを鑑定してみたら、鑑定レベルが上がりまして。これまで鑑定結果に出てこなかった、属性が表示されるようになったのです。で、梅ジャムが光属性でしたので、光魔法で作られた物は光属性になるのではないかと」


 梅ジャムの原材料の梅はハルトムート王子が植物魔法で育てた梅の木になったもので、その梅の木はオレが錬成したおにぎりの梅干しの種から生えたもの。二重に光魔法が関わっているから、しっかり光成分が染み込んでそうだ。


「それで、オレのおにぎりの属性も調べたくなったんですね。石鹸も作ります?」


「いえ、石鹸はもう洗面所の物を調べました。光属性でしたよ」


「へー。それで、属性がついていると、如何なるんですか?」


 アステールさんが笑みを深める。素顔を見慣れたオレでも見惚れそうになる、美しい笑顔だ。なのに何故か底知れぬ迫力があって、オレは半歩、身を引いた。セイちゃん、ちょっとだけハグさせて。


「ユウ君。私は最近、肌の調子がとても良いのです」


「ええと?」


「冒険者なんてやっていると、とても肌が荒れます。日焼けや返り血、不規則で不足がちな睡眠時間に偏った食事、戦闘時の緊張によるストレス、ダンジョンに潜れば何日も顔を拭くことさえ出来ないような衛生環境と、どんどん肌がボロボロになってゆきます。冒険者は小汚いのが普通、小綺麗な冒険者なんてほぼ存在しません」


「そ、そうですか」


「かく言う私も、以前は乾燥で肌がピリピリしていました。それが、ユウ君達と出会ってから、劇的に改善されたのです。セイちゃんの浄化魔法や、生活環境改善のお陰だと思っていましたが、ここに来て、ユウ君の石鹸の効果の可能性が出てきました。これが何をもたらすか、分かりますか?」


「アステールさんがますます美しくなって、ヘリオスさんが惚れ直す?」


 ……アステールさん、オレのほっぺたを引っ張って遊ばないでください。セイナが面白がって真似するじゃないですか。

 暫く遊んでからセイナにオレのほっぺたを明け渡し、アステールさんは嘆息する。麗しい。溜息1つで国が傾くよ。


「貴族の女性達による、奪い合いが始まります。ですから、もう二度と、気軽に石鹸をプレゼントしてはいけません。例え相手が、お世話になっている王妃様にでも」


「ただの石鹸ですよ?」


「ただの石鹸ではありません。光属性の石鹸です」


 笑顔のアステールさんが怖いので、とりあえず頷いておいた。だけど、アステールさんは初めからキラキラ美しかったし、多少肌艶が良くなった気はするけど、劇的に見た目が変化したわけじゃない。石鹸の効果なんて、誤差では?


「ユウ君、女性の美しさに掛ける情熱を理解出来ていませんね。せっかくリヒト様が石鹸の製作者を極秘扱いにしてくださったのに、本人に危機感が無ければ台無しですよ。それに、奪い合われるのは貴方自身もです。貴族女性に押し掛けられたり、襲われたりしたいのですか?」


「襲われるって、まさか」


「可能性はありますよ。ユウ君を押さえておけば、簡単に石鹸が手に入るのです。売れば大金持ちですしね。花嫁の5人や10人、直ぐに集まるでしょうが、募集しますか?」


「いいえ。自重します」


 望まないモテ期は御免被りたい。最近女難の相でも出てるのかな。オレにハーレム願望は無いんだよ。


 この際だからと指輪や種籾、卵とオレの『ごっこ遊び』で錬成出来るものを全て鑑定してもらったら、例外なく光属性がついていた。食べ物はオレ達で消費するとしても、この国で作ってる米、元は全部オレの錬成した種籾から出来ている。隠蔽しようがないんだけど。

 だけど、種籾についてはそう気にしなくて良いというアステールさん。何故?


「光属性の植物なら存在しますから。世界樹や、レインボーダンスフラワーのレイちゃんもそうですね。米はユウ君の故郷で食べられていた珍しい植物という認識ですから、問題ないでしょう。これから栽培量も増えますし」


 オレが光属性の物を作り出せるのがまずいらしい。石鹸とともに、指輪も気軽に売ったり、ましてや渡したりしないようにと念押しされた。了解です!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ