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98話 奏翔を動かすアリアの策略(SIDE YUZUHA)

 「君1人? よかったら俺たちと一緒に遊ばない?」


 海の家で昼ごはんを注文して待っていると、2人の男の人に声をかけられた。

 1人は目が痛くなりそうな金髪男、もう片方は黒髪短髪にメガネをかけて真面目そうに見える男2人組。

 私に声をかけてきたのは金髪男。その後ろで黒髪の男が私を見てニヤついている。

 メガネをかけているのと真面目というのはイコールではないようだ。


 「と、友達が待ってるから……」


 震えた声で答えると男達の欲望に直撃したのか、鼻息を荒くしながら興奮気味になりながらグイッと顔を近づけてきた。

 鼻を刺激する様な香水の匂いに思わず咽せそうになる。

 

 「マジで!? 友達いるなら尚更一緒に遊ぼうぜ!」


 金髪男が大声を上げるとその後ろでメガネ男はガッツポーズをとっていた。

 いや、なんで一緒に遊ぶこと決定しているの!?

 

 「おまたせしましたー! 10番でお待ちのお客様ー!」


 タイミングよく私の番号が呼ばれ、受け取り口に行こうとするとガシッと肩を掴まれ、ビクッとさせてしまう。

 恐る恐る振り向くと、金髪男がニヤリと口元を歪ませていた。

 あまりにも気持ち悪さに鳥肌が立ってしまう。


 「そんな無視するなよ、つまんない思いはさせないから遊ぼうぜ〜」

 

 無視して逃げようと思ったけど、思う様に足が動かなかった。

 嫌だと言おうするも、口元が震えてうまく声を出すことができなかった。

 

 ——怖い。


 今はそれしか考えられなかった。

 気がつけば体が小刻みに震えだしている。


 ——助けて奏翔。


 そう思った直後、目の前に大きな影が私を覆っていた。

 それと同時に……

 

 「それじゃ決まったことだし、一緒に……いだだだだだ!!!!」


 金髪男が苦しみの声をあげながら地面にのたうち回っていた。

 目の前の大きな姿がこちらへと振り向く。


 「か、かなとぉぉぉ」


 振り向いた姿を見て思わず声をあげながら背中に抱きつく。

 抱きついた途端、先ほどまで起きていた震えもおさまっていた。


 「大丈夫か?」


 奏翔は私の頭を撫でながら声をかけていた。

 

 「おいこら、横取りしてんじゃねーぞ!!」


 奏翔の背中で安らぎを感じているが、至福の時をぶち壊す声が聞こえてきた。

 声の主は目元に涙を溜めながら座り込んでいる金髪男だった。


 「すみません、『彼女』がご迷惑をかけたみたいですね」


 奏翔は座り込んでいる金髪男へ声をかけていたけど……。

 ってかその前に今『彼女』って言ったよね!?


 「か、彼女だぁぁぁ!?」


 金髪男は悔しそうな声で奏翔を睨みつけていた。

 

 「席とりで見失ってしまって、いやあ助かりました」


 ものすごく丁寧な口調で話しているが、声色は丁寧さの微塵どころかカケラもなかった。

 むしろ、こう言う時の奏翔はものすごく怒っている時のものだ。


 奏翔は私の方へ振り向いてから私の肩をつかみ、反対側へと向かせると席の方へと歩き出そうとしていたが……


 「ふざけんなよ!! 適当なこと言って横取りする気だろ!!」

 「その女は俺たちが先に声かけたんだぞ!!」


 金髪男の叫びにメガネ男も一緒になって叫びだす。


 「はぁ……」


 いつも通りため息をつきながら足を止めた奏翔はすぐに男達の方へ向く。

 そして勢いよく、ダンッと座り込んでいる金髪男の前で足を地面に叩きつける。


 「「ヒッ!?」」


 男2人は音に驚いたのか、情けない声をあげていた。


 「……もう一度『彼女』の前に来てみろ、これだけで済むと思うなよ」


 奏翔は追い討ちをかけるかのようにドスの利いた声で男達へそう告げる。

 緊迫したところなのに私は奏翔の後ろで口元の緩みを感じていた。


 ——そりゃあ、奏翔の口から『彼女』って言っているんだし、仕方ない!


 そしてこちらへ振り向いた奏翔はもう一度私の肩を掴んで、押し出す様に前へと進んでいった。


 「……なにニヤけているんだよ?」

 「なんでもないよーふへへ〜」


 呆れた顔で奏翔は「キモい」と口にしていたが、私の口元の緩みが治まることはなかった。


 「あ、奏翔……」

 「どうした?」

 「番号呼ばれてたの忘れてた……」


 奏翔は再度ため息をつきながら、番号札を取るとそのまま受け取り口に向かっていった。


 「ユズっち?」

 「うん?」


 奏翔の戻ってくるのを待ってると前の席に座っていたアリアが不思議そうな顔で私を見ていた。


 「蕩けそうな顔してるけど、何か嬉しいことあったの?」


 いつもならそんなことはないと誤魔化したり、平然を装うところだけど、今回に限ってはそれすらできないほどだった。


 「ふへへ……ナイショ〜」

 「もしかしてさっきのどさくさに紛れて告白とかされちゃった?」

 「それはないけどふへへ〜」


 そう答えた私を見て何かを察したのかアリアさんは微笑ましい顔でこちらを見ていた。


 「……助けてくれたことに喜んでるだけかな、やっぱり実行しないとダメかなぁ」

 

 何か後ろでアリアさんが左手を顎に乗せて考えていた。

 どうしたんだろう??

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 「……1日って早いな」


 昼食前に色々あったものの、それ以降は大きな問題もなく午前と同じ様に柚羽とアリアに付き合わされていた。

 途中、柚羽に声をかけていた男達と遭遇したが、俺の顔を見るなり逃げる様にどこかへ行ってしまった。


 そして夕方近くになって、柚羽とアリアも流石に疲れたのか、遊びすぎで飽きたのかわからないが、着替えてくると言って更衣室へと向かっていった。

 それに合わす様に俺も着替えてから待ち合わせ場所である、唯一この時間も営業している海の家で休むことに。

 

 「お兄さん、遊び疲れてる? 座敷席空いてるからゆっくり休みなよ」


 人に心配されるほど疲れた感じはしなかったが、せっかくなので店の奥にある座敷席で休むことに。

 店に入ってから10分ほど経つが、2人が戻ってくる気配は全くなかった。

 

 「……朝と同じパターンか」


 盛大にため息をつきながら、店で購入したアイスコーヒーを飲んでいった。


 「あ、カナトっち!」


 更に10分ほど経って、アリアが戻ってきた。

 だが、確認できたのはアリアの姿のみ。

 

 「……柚羽は?」

 「まだ着替え中だよ、更衣室がすごい混んでて1人ずつしか入れなくて」


 アリアの話では順番に並んでいたようで、たまたま先に並んでいたのがアリアだったので先に戻ってきたようだ。

 

 「私の後にユズっちが入っていったからもうすぐ戻ってくると思うけどね」

 「……それならいいが」

 「もしかして、ユズっちが先の方がよかった?」


 そう言いながら、アリアは俺の真正面の椅子に座る。

 彼女の顔を見るとよからぬことを考えてそうなニヤけた表情で俺を見ていた。


 「さあな……」

 「カナトっち言葉と表情があってないよ!」


 アリアは俺のことを指さしながら大笑いしていた。

 これ以上疲れたくなかったので、アリアの言うことを無視してスマホを見ながら柚羽を待つことに。


 「でさ、カナトっち」

 「なんだよ……」


 笑い終わったアリアはいつもの表情に戻っていた。


 「お昼の騒動以降ユズっちがものすごい上機嫌になってんだけど、何かした?」


 そういえばあの直後から柚羽はずっと口元が歪みっぱなしだった気がするな……。

 いつもする君の悪い笑い方だったので、あまり気にしてなかったが。


 「柚羽に直接聞いた方がいいんじゃないか?」

 「聞いても言ってくれなかったんだよ!」


 それからアリアと他愛もない話をしながら柚羽を待っていた。

 20分ほど待っているが、戻ってくる気配はない。


 「ねぇねぇ、カナトっち! 面白い写真があるんだけどこっち来てくれない?」

 「……こっちに見せればいいだろ?」

 「ユズっちのあられもない姿なんだけど、他の人に見えてもいいの?」


 店内を見渡すと、気がつけば俺たち以外の客の姿が見えた。

 さっきみたいな男がいる可能性もあるので、近くで見ておくか……。

 

 「……わかったよ行けばいいんだろ」

 

 

 何でこの女がそんな写真を持っているのかはさておいて、確認したら消させるつもりだ。

 ため息をこぼしながら中腰のままアリアがいる席の隣へいく。


 「ほらほら、これなんだけど……」


 俺が近づくとアリアはゆっくりスマホを俺に見せてきたのはいいが画面には何も映っていなかった。


 「何も映ってな……うわっ!?」


 話してる途中で後ろから押され俺はそのまま前のめりに倒れてしまう。

 座敷の床へと顔面衝突することを覚悟したが、顔全体に柔らかい感触が……。

 ゆっくりと顔を上げると、目の前には満面な笑顔でこちらを見るアリアの顔。


 「カナトっち、なにその惚けた顔ー! そんなに私の胸が気持ちよかった?」


 彼女の一言で状況が理解できた。

 すぐに離れようとするが、何故かアリアは両足をクロスさせて俺の足元を押さえていた。


 「足をどうにかしろよ!!」

 「めんどくさい〜! カナトっち、頑張って抜け出してねー」


 なんでこんな上機嫌になってんだよ、このハーフ女。

 この状況から脱しようともがき続ける。


 ——だが、その直後ドサっと何かが落ちる音が聞こえた。


 音のした方へと顔を向けると、目を大きく開けた柚羽がこちらを見ていた。

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