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90話 レイニー・バイカー・ツーリング

 「……これって日頃の行いのせいか?」

 「柚羽ちゃんの夜の相手をしてくれないからだね」

 「絶対に違うと思うが?」

 「むぅ……これは奏翔にわかってもらうために今夜奏翔のベッドに忍び込むから!」

 

 窓を勢いよく叩きつける大量の流水を眺めながら俺はため息をついていた。


 「……山の天気は変わりやすいって聞くけど、身をもって知るハメになるなんてな」


 そう。外は絶賛、雨が降っていた。

 いやこれ、雨なんてものじゃない……

 ——どしゃ降りだ。

 

 

 あれからずっと走り続け、隣の県に入っても更に走り続けて目的地であるバイカー行きつけの道の駅までやってきた。

 その時点で、灰色の雲が空を埋め尽くさんとしていたが、楽しむことを優先した結果このザマというわけだ。


 食事や裏手にあるハイキングコースを歩いていたが雨が降ってきたので、慌てて休憩所の中に避難してきた。


 「でもさ、あれからすぐ帰ってたら今頃どしゃ降りに巻き込まれてたかな?」

 「……だろうな」


 そう考えたらここに残ったのは正解ともいえなくもない。


 「あーでも、そうなってたら奏翔が雨に濡れた柚羽ちゃんの体を抱きしめると同時に温もりを求めて柚羽ちゃんの体をめちゃくちゃにしてた可能性も……」


 柚羽はお得意の脳内妄想膨らませながらをふへへと気味の悪い笑いを浮かべていた。


 「……あるわけないだろ」


 窓の外を眺めながらため息混じりに返した。


 

 休憩所にこもってから数時間が経過した。

 外はずっと雨が降り続けていた。

 少しずつ雨は弱まってはいるが、それでも数分経っているだけで水浸しになるぐらいは降っている。

 これが歩きとかなら、問題ないのだが今回はバイク運転で久々且つ2人の状態で雨の中運転するのは骨が折れる。


 「……もう少ししたら止みそうな気がするけどな」

 「なんかそんな感じがするね、それまでここにいる?」

 「そうしたいけどな」


 現時刻はもうすぐ夕方になろうとしている時間だった。

 何が言いたいかというと……


 「すみません、そろそろこちら閉めますので……」


 この道の駅の管理会社の方だろうか、黒髪と白髪が混じった年配の女性が申し訳なさそう顔で俺たちの前に立っていた。

 どうやら営業時間終了時刻のようだ。


 雨が止むまでここにいさせてくれと思いながらも俺は柚羽に声をかけてから立ち上がり、休憩所の外へと出た。


 「止む気配ないね……」


 雨宿りができる入り口にて2人で立ち尽くしながら灰色の空を眺めていた。

 終了時間になっているからか、人の姿は俺たち以外ほとんどいない。


 「……止む気配ないな」

 「天気予報でもずっと雨だって載ってるね」

 

 柚羽はそう言って俺にスマホの画面を見せてきた。

 画面に映し出された天気アプリには青色の傘マークだらけになっている。


 「ここでずっと待ってるのも時間の無駄だな」

 

 雨が降ってる中、夜遅くにバイクを運転するのは肉体的どころか精神的にもきつくなるからそろそろ決断せねば……。

 

 「……柚羽」

 「どうしたの?」

 「……覚悟決めて帰るぞ」

 

 柚羽にそう伝えるとバイクを止めた駐輪場へと向かった。

 不幸中の幸いというべきか、駐輪場には木製の屋根がついているため、バイクが濡れることは回避できた。

 どのみちこれから濡れるハメになるんだけど……。


 「柚羽、これ着てろ」


 リアボックスに入れていたレインコートを渡す。


 「奏翔は?」

 「一応これ、防水加工されてるからなんとかなる」


 俺は以前、洋介さんに買ってもらったバイク運転用のジャケットを着ているのでなんとかとは思う。

 下に履いているジーパンは無理だけど……。

 

 だが、普段と変わらないパーカーにジーパン姿の柚羽は確実にずぶ濡れになってしまう。

 下手をしたら風邪を引く可能性もあるのでできることならそれだけは避けたいところだ。


 「……準備はいいか?」

 「うん! 大丈夫!」


 黒のレインコート姿の柚羽が俺の後ろに座ったのを確認してからバイクのエンジンをかけるとゆっくりとアクセルを回していった。





 「……疲労感ハンパない」


 帰る途中にあったコンビニへ着き、イートインコーナーに座るとぐったりと体を机の上に倒れ込んだ。

 雨の中の運転をいうこともあり、ゆっくりと法定速度で走っていた。

 この行きではあまり感じなかったが、走ってきた道はそれなりにカーブが多い。


 晴れてる日ならそこまで考えることはないが、雨だとスリップするのではないかと必要以上に不安になってしまう。

 後ろに人を乗せているとなれば尚更のこと。

 

 と言った感じで必要以上に神経をすり減らしながら運転をしていた結果、思っていた以上に疲れてしまったので、途中のコンビニで休憩を取ることにした。


 「大丈夫?」


 顔を上げるとコンビニで買ってきた色々買ったのあろう、ビニール袋を持った柚羽が俺の顔を覗き込む様に見ていた。


 「……まあ、少し休めばどうにかなるだろ」

 

 柚羽はテーブルの上にビニール袋を置くと俺の隣に座り、無言のまま俺の頭を触っていた。


「どうした?」

「ずっと運転してくれてるから、申し訳なさと感謝の気持ちを行動に現してみたんだよ」


 そう話す柚羽は申し訳なさそうな顔をしていた。

 

「……ありがとな」


 柚羽の気持ちを汲み、俺は素直に感謝の言葉を口にする。


「これが家ならお礼と離れたくない気持ちを解放して、奏翔に襲いかかってるけど」


 ……数秒前の俺の素直な気持ちを返せ。



「後どれくらいで家に帰れそう?」


 コンビニで買ってきたパンやおにぎりなどを食べていると、何かを思いついたといった顔で柚羽がこちらを見る。


「何もなければ1時間半ぐらいだけど、この状況だと倍近くかかるだろうな」


 ちなみに時刻はいつもなら夕飯を済ませている頃。

 帰ることには深夜直前だろう。

 まだテスト休みなので明日1日ぐったりしても問題はない。



 「それならこの近くで1泊しない?」


 柚羽は俺の方へスマホ画面を見せながらそう告げる。

 画面には温泉施設のウェブサイトが表示されていた。


 「さっきお父さんに電話してたんだけど、この時間で雨の中運転するのは厳しいから泊まったらどうだって。 しかも一緒にいたユウさんが予約してくれたみたい」


 サイトにある地図を見るかぎり、このコンビニからそんな遠くない場所のようだ。

 

 「……相変わらず行動が早いなあの2人は」


 口にしながら父親に感謝の言葉を告げる。


 「せっかくお言葉に甘えさせてもらうか」

 「うん!」


 空になったビニール袋を店内のゴミ箱に押し込むと、すぐに外へ出ていった。





 『それにしても大変だったみたいだな、でもいい経験になったろ』


 スマホのスピーカーから笑い混じりの声が聞こえていた。

 通話の相手は柚羽の父親である洋介さんだ。

 父親が予約してくれたのは簡易的ではあるが宿泊も可能な温泉施設だった。

 到着してすぐに冷え切った体を温泉で温めてからお礼を言うために電話をかけたのだった。


 「ホントですね……ってか柚羽には申し訳ないって気持ちになりますね」


 ため息混じりに答えると洋介さんは豪快に笑っていた。

 

 『さっき話した感じだと、そんな風には思ってなさそうだし、結構楽しんでいた感じだぞ?』

 「そうですか?」

 『まあ、お前と一緒だからだろ! こっちとしても奏翔と一緒ならなーんにも心配なんかしないけどな!』


 そう言ってもらえるのは嬉しいが、父親としてはどうなんだろうか?


 『ま、そんなに重く受け止めるな、お互い楽しめたんならよかったじゃないか!』

 「……そうですね」


 つくづく思うことだが、洋介さんはどんなことがあってもポジティブ思考な人だなと思う。

 よく、真反対な性格の俺の父親と一緒に行動できるな……。

 

 『おっと、呼び出しかかったから行ってくる。せっかくだしお前もゆっくりしていけよ、じゃな!』


 そう言って洋介さんは通話を終了させた。


 スマホをテーブルの上に置いてから、先ほど敷いた布団の上で横になると、一気に眠気が押し寄せてきた。

 明日も運転しなきゃいけないし、早めに寝てしまおう……



 「ただいまー! って奏翔ねちゃってる?」


 元気な声と共に柚羽が部屋へと戻ってきた。


 「……ギリギリ起きてるけどすぐに寝ると思う」

 「むぅ……それなら私も!」


 そう告げると柚羽は俺の体の上に倒れ込んできた。


 「うへへ〜今日1日奏翔にべったりしてたから、体が疼きまくって大変だったんだからね!」


 そう話す柚羽に対して俺は疲れのピークを迎えていたので、ボーッと彼女の顔を眺めることしかできなかった。


 「……だから、責任とってね?」


 頬を赤く染めながら柚羽はかき消されそうな声で呟いていた。

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