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89話 イグニッション! バイクトラベル

 「……なぁ、柚羽」

 「どうしたの〜?」

 

 気持ちよく眠っていたのに、お腹あたりに重みを感じて目を開けると、『夜這い』と書かれた白いTシャツ、ズボンは履かずに下着姿の柚羽が俺のお腹付近に乗っていた。


 「……重い、お菓子の食い過ぎで太ったんじゃないか?」

 「それなら今からここで運動するから手伝って! 奏翔のOKがでたらいつでもいけるよ」

 

 ため息をつきながら周囲を見渡す。

 部屋全体が暗闇に包まれている時点で朝じゃないのは確かだ。


 「……ちなみに今何時だ?」

 「日が昇るまでまだかかる感じだね」


 そう言いながら、柚羽は持っていたスマホをこちらに向けてきた。

 

 「……眩しい」


 多少目が慣れてきてはいたが、目に突き刺さるような明るい画面を見せられ、俺は頭から布団を被る。


 「むぅ……奏翔ねちゃだめー!」

 「頼むから寝かせてくれ!」

 

 被った布団を捲ろうとしてくる柚羽の手を押さえつけながら眠ることに専念していく。

 いつもは昼過ぎまで寝てる柚羽がこんな時間に起きているのには理由がある。

 

 今日は前に話したバイクで出かける日だからだ。

 5月の大型連休の時もそうだが、出かけるに限って柚羽は遠足当日の小学生のように朝起きるのが早くなる。

 ……それだけならいいが、一緒に住んでからは日が昇る前に起こしに来る。


 「柚羽……」


 自分の目線の部分まで布団を下げると、頬を膨らませている柚羽の顔が目に入った。


 「あ、もしかして準備できた? できたら奏翔が脱がしてくれるとものすごく興奮するんだけど」


 柚羽はキラキラと光りそうな笑顔をこちらに寄せてきた。


 「……今日バイクで出かけることはわかってるよな?」

 「うん!」

 「……おまえも、多少原チャで走ったことあるからわかると思うが、体力使うんだぞ」

 「うん、知ってるよ」

 「寝不足や体力ない時に運転したら、事故る可能性も高くなるんだぞ」


 俺の話に柚羽は左右に首を振っていた。


 「頼むからもう少しだけ寝かせてくれ」

 「えー……興奮状態で寝れないんだけど」

 「……寝かせてくれるならここにくる権利をやる」

 

 そう言って俺は布団を捲り、空いている隙間を軽く叩いた。


 「わーい!」


 柚羽は大声を上げながら布団の中に入ってくると、ガシッと力強く俺の体を抱きしめてきた。

 

 「ふへへ〜、もしかして遠回しに柚羽ちゃんと寝たかった? 言ってくれれば良かったのに〜」

 「……今より眠れなくなるだろ」


 布団を元に戻して、もう一度目を瞑る。


 「あぁ〜。奏翔の体きもちいいなあ……油断すると体が疼いてきちゃいそう」


 気味の悪い笑い声を交えながら何かを言っていたような気がするが、今は眠ることに専念することにした。




 「それじゃ出発するから、ベルトの持ち手をしっかり握ってろよ」


 柚羽に2人乗り用のベルトをつけ、自分以外のヘルメットを被せてから先にバイクのシートへと座った。

 後ろにはリアボックスがついているので、後ろに倒れることはないと思うが、安全性を強化するためにタンデムベルトを買っておいた。

 

 「うん! たしか奏翔に抱きつきながら腰の部分にある持ち手を掴むんだよね?」

 「……まあそうだな」


 何故か抱きつくという部分を強調しているが、まあ気にしたら負けだろう。


 「それにしても、フルフェイスのヘルメット被ってると変な感じがする、若干締め付けもキツい気がする」

 「緩くしてヘルメットが飛んだりしたら色々大変だろ」

 

 色々というのは安全面もあるが、飛んだ時に後ろの車両にも迷惑がかかるし、気づかずに走り続けてパトカーに止められたなんてことに発展したら、楽しい旅行が台無しになってしまう。

 ちなみに柚羽が被っているヘルメットは彼女の父親である洋介さんが使ってたものだ。

 柚羽もヘルメットを持っているが、原チャ用に使っていた簡易型で、今回の様にある程度スピードがでるバイクには向いていなかったため、使わせてもらうことにした。

 

 実の父親のものだから文句はないだろう。


 「それじゃ発進するぞ!」


 声をかけると同時にエンジンをかけてからアクセルを握ってゆっくりと走り出した。



 「ふぁああああ! 風が気持ちいい〜!」


 走り始めてから20分ほどで商業施設やビルが立ち並んだところから同じ県内かと疑いたくなる様な田園風景へと変わっていった。

 あまり見ることのない風景や開放感に駆られてか、柚羽が大きな声を出していた。

 

 「これってどこに向かってるの?」

 「ずっと進んだ先にある道の駅」


 柚羽に声をかけられ、顎の部分にかけられた無線マイクの位置を調整しながら返す。

 このマイクは洋介さんが話しながらツーリングしたかったようで、2人分用意していたものだ。スマホと接続して細かい設定をすることで会話ができる様になっている。

 

 「よくそんな場所知ってるね? もしかして前にお父さんと行ったの?」

 「そうだな」


 この時期なので、海に行くことも考えたが道がわかりづらかったり、広い道路を走るため久々に運転をするには自信がなかった。

 今回このルートを選んだのは洋介さんのバイクで来たのもあるし、ほぼ1本道でわかりやすいのもあった。


 「あと、どれくらいかかりそう?」

 「途中で休憩もいれたいから、2時間ぐらいか……」

 「ってことはその間ずっと奏翔に抱きついてられるってことだよね、ふへへ〜、至福すぎる!」



 マイクと一緒に取り付けたスピーカーから不気味な笑いが聞こえてきた。


 「……頼むから変なことするなよ、下手したら家に帰れなくなるからな」

 「我慢する! もちろん我慢した分、家に帰ったら爆発させた勢いで押し倒していいよね?」

 

 これ以上聞いてると運転に集中できなくなりそうなので、ため息で返した。



 「山の中に入ったら空気が澄んできた様な気がする」


 途中コンビニで休憩をとりながら走っていくうち、木々に囲まれた山道へと入っていった。

 ミラー越しに後ろの座席を見ると、柚羽がフェイスシールドを上げていた。


 「これだけ木に囲まれているんだから、違うのはたしかだな。それと、シールド開けっぱなしにするなよこの辺り虫が飛んでるから入ってくるぞ」

 「やだー!!!」


 後ろから柚羽の大声と一緒にパタンと音が聞こえてきた。

 どうやら柚羽が勢いよくシールドを閉じたみたいだ。

 

 走っていく途中で脇道にバイクを停車できる場所があったので、そちらに入ってバイクのエンジンを切った。


 「もしかしてお手洗い?」

 「……どうみてもトイレがあるようには見えないだろ」

 「ほら、男だから見えないところでとか?」

 

 柚羽に聞こえる様にため息をつくと、リアボックスを開けてショルダーバックを取り出した。


 「あ、もしかしてカメラ?」

 「そうだよ」


 そう言ってバックからコンデジを取り出して、辺りの風景にファインダーに収め、シャッターを切っていく。


 「わっ!? 虫がきた!? ちょっとこっちこないでよ!」


 写真を撮っている間、バイクのシートに座っていた柚羽が両手を大きくバタつかせながら辺りを飛んでいる虫と格闘していた。

 ……面白いから撮っておくか。


 満足いく写真が撮れたのでショルダーバックをリアボックスに入れて、先へと進むことにした。

 

 「勝手に盗撮した罰で家に帰ったら柚羽ちゃんを愛でること!」


 俺の後ろに座りながら不満そうな声を上げる柚羽。

 どうやら虫と格闘中に何もしないで写真を撮っていたことにご立腹のようだ。


 「覚えてたらな、発進させるからしっかり掴まってろよ」

 

 適当に宥めながら再びバイクのエンジンをつけて、発進させようとしたが、気になったことがあって空を見上げた。


 「……どうしたの?」


 それに気づいた柚羽が不思議そうな顔でこちらを覗く様にみていた。


 「いや、変な雲がでてきたと思って」


 俺は柚羽を誘導するように指を上空へと向けていた。

 先ほどまで雲ひとつない青空が広がっていたが、少しずつ灰色混じりの雲が広がりつつあった。


 せめて帰るまでは今の天候が続けばいいなと思いながら俺はバイクを発進させていった。

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