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88話 バイクトラベル 準備編

 「お客様の点検させていただきましたが、特に緊急で整備必要なものはございませんでした」


 柚羽とバイクで出かけようと伝えてから、2日後のお昼をすぎた頃。

 俺は予約を入れたバイク整備工場に来ていた。


 バイクの点検を行ったのであろう、ボロボロになった整備帽子、灰色のツナギ姿の男性整備士が黒いバインダーを手にしながら丁寧に説明をしてくれたが大半が理解できなかった。

 洋介さんがずっと頼んでいた整備工場なので信頼していたのもあるけど。


 「何か質問はございますでしょうか?」


 先ほどまでバインダーを見ていた整備士が俺の顔をじっと見ていた。

 突き刺さりそうな目で見られているため、睨まれているようで少し怖さを感じる。


 「……だ、大丈夫です」

 「ありがとうございます。それでは最後にエンジンオイルの量を一緒にご確認できますでしょうか?」

 

 言われるがままにエンジンオイルの目盛りがある場所を見るために腰を落とすと、整備士の方が斜めになっているバイクを片手でまっすぐになるように傾ける。


 「こちらの赤線のところまで入っているのが確認できますでしょうか?」


 言われた通り、タンクを確認して赤線の部分まで入っていたのが見えたので大丈夫だと伝えた。

 最後に点検のチェック項目の用紙を受け取ってからバイクのエンジンをかける。


 家を出る時と比べてエンジンの音が軽快に聞こえるのは気のせいだろうか……。

 最後に整備士に会釈をしてからアクセルグリップを捻り、ゆっくりとバイクを発進させて行った。



 「走ってたら多少感覚思い出してきたな」


 運転の感覚を思い出すため、遠回りしながら走り続けていたが疲れが出てきたので、コンビニの駐車場にバイクを止め、買ってきた炭酸水を飲みながら休憩をとることにした。

 購入した炭酸水で水分補給をしながらスマホへ目を向けると、整備工場を出てからそれなりの時間が経っていた。

 

 「夕方ぐらいまでに帰ればいいか……」


 どうせ今頃、家では柚羽がテスト期間で溜め込んだアニメの消化をしているだろう。

 

 「……あのアニメ苦手なんだよなぁ」


 柚羽が見ているアニメはラブコメなのだが、肌色面積や謎の光が多かったりと色々と目を逸らしたくなる箇所が多く、男からしたら気まずい雰囲気になってしまう。

 ただでさえ、俺の気持ちが色々と揺らぎまくっているから色々とマズイことになりかねない。


 しかもアニメを見終わるたびに作品の状況の影響を受けまくってるせいか、いつにも増してこちらに迫ってくる始末。

 思い出しただけでため息が出てきてしまう。


「こういう時こそ走らせて気を紛らすが一番だな」


 ペットボトルをカップホルダーへ入れてからバイクのエンジンをかけようとすると、突如、けたたましい爆音が聞こえてきたので、そちらへ目を向けると1台のスポーツタイプのバイクが駐車場へ入ってきていた。

 うるさいなと思いながらヘルメットを被ろうとしていると、入ってきたバイクが俺の前に停まる。

 あれ、このバイクどこかで見たような……。


 「こんなところにいるなんて珍しいな」


 エンジンを切ると同時に運転手がこちらに向けて話しかけてきた。

 

 「……誰?」

 「あー……さすがにヘルメットついてちゃわかんねーか」


 そう言って運転手は頭まですっぽり入ったヘルメットを外していく。


 「……なんだ、総一郎か」


 ヘルメットを外したのは中学の時の悪友である柿生総一郎だった。

 見た覚えがあると思ったら、そういえば前に惣一郎がバイクに乗っているのを見たな。

 

 「久々に会ったのに、なんでそんなに不満そうな顔してんだよ」

 「会いたくもなかったから……?」

 「いくらなんでも久々にあったやつからそんなこと言われたら泣くぞ?」

 「どうぞ、ご自由に」


 間髪入れずに返すと総一郎はガックリと肩を落としていた。


 「ってか奏翔が学校をサボるなんて珍しいな!」


 すぐさま顔を顔を上げた総一郎は不思議そうな顔でこちらを見ていた。

 平日のこの時間にしかも私服でいるので勘違いしているのだろう。

 

 「言っておくが俺はとっくに休みに入ってるぞ?」

 「え? 夏休みってまだだよな?」


 総一郎は大きく目を開けていた。

 

 「テスト休みだよ、期末で赤点がなければ終業式まで休み」

 「ま、マジかよ……」


 またもや項垂れるように肩をガックリと落とす総一郎。

 相変わらずわかりやすい性格だな。


 「なんだよぉせっかくサボり仲間だと思ったのに」

 「……それは残念だったな」


 俺がそう返すと、総一郎は大きな声と一緒にため息をついていた。


 「でもさ、こんなに天気が良かったらサボりたくなるよな!?」

 「……俺に同意を求めるなよ」

 「だったら何でこんな時間にバイクなんか走らせてるんだよ?」


 総一郎は俺と柚羽の関係は知っているので、大丈夫だろう。

 

 「久々にバイクに乗りたくなったのもあるし、高校生活最後の夏休みだからに柚羽を誘って出かけようと思ったから、その慣らしだ」

 

 俺が話終わると、総一郎は顔を上げて空を仰いでいた。


 「いいねえ、青春だねえ〜」


 そのままの状態にてかき消されそうな声で呟いていた。

 

 「俺も聞いてたら青春したくなってきた! よっしゃあとで電話して約束こぎつけてやる!」


 すぐに両手で握り拳をつくり、ガッツポーツを取りながら大声を上げていった。

 大丈夫なのか……?


 「そうと決まったら善は急げだ! そんじゃ俺は行くぜ! 近いうち連絡するから今度ツーリングでもいこうぜ!」


 総一郎はその勢いで飛びかかるようにバイクへ乗り、エンジンをかけるとそのまま走り出して行った。


 「……慌ただしいやつだな」


 そう呟くと飲んでいた炭酸水のペットボトルをゴミ箱に入れたから俺もその場を後にした。

 

 「さすがに体力の限界だ……」

 

 コンビニを出発してからも寄り道をし続けて、帰る頃には日が沈みかけていた。

 夕飯の準備がなければもっと遅くまで走らせたい気持ちはあったが、さすがに体力の限界が来ていた。

 ずっと風に当たるってこんなにも体力を使うものなのかと身をもって実感する。


 「ただいまぁ」


 家の中に入ると、ダイニングの方から音が漏れていた。

 聞いた感じ、歌声に聞こえるから、アニメのオープニングかエンディング曲なのだろう。

 

 ヘルメットとバイク用のグローブを玄関の収納棚に入れてからダイニングへ入る。

 

 「奏翔おかえりー!」


 今にも崩れ落ちそうな格好でリビングのソファに座っていた柚羽は俺が帰ってきたことに気づくと、背もたれに顔を乗せてこちらを見ていた。

 テレビでは主人公らしき男が金髪と青髪の女の子と気まずそうに話しているシーンが流れている。


 「……ずっとそれ見てたのか?」

 「ううん、さっきまで最近始まったロボットアニメ見てた」

 

 早めに帰ってきた方が良かったのかもしれないな……。


 「それで、バイクの方はどうだったの?」

 「問題ないってさ、エンジンオイルも交換したからいつでも大丈夫だ」

 「ホント!? それじゃいつにしようか! 気持ち的には明日でもいいんだけど!」


 よほど楽しみにしているのか柚羽は興奮気味にこちらへやってきて俺の顔をじっと見ている。


 「……準備とかあるから早くても来週だな」


 明日は必要なものを買い出しにいくとして、その次の日は週末に入って混雑してしまうのでそれだけは避けたかった。

 混雑に巻き込まれて行きたいところに制限がかかるのは勿体無い気がしていた。

 

 「別に慌てる必要もないだろ、まだまだテスト休みはあるんだし」

 「むぅ……そうだけど」


 納得したような口ぶりの柚羽だったが、不満そうに唇を尖らせていた。


 「それじゃ夕飯作るか……柚羽は風呂の準備任せた」


 機嫌を直させるために頭を撫でながらそう言うと、柚羽は変な声をあげながら顔を歪ませていた。

 

 「りょーかい! 奏翔と一緒にお風呂入る準備もしとくね!」

 「……それはしなくていい」

 

 ため息を交えながら答えると俺は冷蔵庫を開けて夕飯の準備に取り掛かっていった。

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