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80話 やっとできた二人っきりの空間

 「ういーっす、奏翔!」

 「……ういーっす」

 「いつもテンション低いけど、今日は一段と低いけどどうかしたのか?」

 「……別に」

 

 淡々と返しながら、着替えた後に使った寝具を片付けていた。

 昨日は柚羽へメッセージを返し、今日に備えて寝ようかと思ったが、寝付くまでに時間がかかっていた。

 部屋の窓からうっすらと明かりが差し込んでいたのを見たのが最後なので、寝れたとしても2時間ぐらいだろう。

 

 修学旅行も本日が最終日。

 昨日の朝食はグループで自由にとることができたが、今日はホテルにあるレストランにて食べるようにと通達が来ていた。

 

 「ボチボチ飯の時間だし行こうぜ! 一応飯食った後も部屋に戻れるみたいだし、片付けは後でも平気だろ!」


 やけに元気な虎太郎に引っ張られながら、指定のレストランに向かった。

 レストランはビュッフェ形式になっており、俺たちが着いた時には結構な人数がいた。


 「おーい! カナトっち! コタっちー!」


 虎太郎と2人で座れる場所を探していると奥の方から声が聞こえ、辺りを見渡すと奥の席でアリアがこちらに向けて大きく手を振っていた。

 彼女の隣には机に突っ伏している柚羽の姿がみえた。


 「鹿島田が元気なのは毎度だが、和田塚さんはどうしたんだ?」


 2人がいる席につくと、虎太郎がぐったりとしている柚羽を見ていた。


 「夕方寝過ぎたみたいで、夜全然眠れなかったみたい」


 アリアも同じように柚羽を見ながら答える。

 

 「まさかとは思うが、和田塚さんを抱き枕とかにしてないだろうな?」

 「流石に連日同じことをするわけないじゃん! できることなら昨日はユズっちの体を堪能したかったけど!」

 「なにそれうらやまけしからん! 今日こそ粛清しないといけないようだな!」

 「昨日のリベンジ? 言っとくけど昨日は30%も力出してないからね」


 虎太郎とアリアの喧騒を尻目に俺は柚羽の方へと目を向けていた。

 俺の視線に気付いたのか、柚羽はゆっくりと顔をあげると、今にも叫びそうな表情でこちらを見ていた。


 「その前にまずは朝飯だ! 腹が減っては戦なんかできるか! いくぞ奏翔!」


 虎太郎は立ち上がると、俺の肩をバシバシと叩いていた。


 「わかったから叩くな……!」


 俺もすぐに立ち上がり、虎太郎の後に続くように食べ物が置いてある場所へと向かっていった。

 ちなみに虎太郎の食材がこんもり盛られた皿を見て食欲がなくなりかけていたのは言うまでもない。


 「あーあ……修学旅行も終わりか」

 

 朝食の後は部屋に戻り、荷物の片付けをしながら同じ部屋のクラスメイトがぼやいていた。

 

 「そういや、隣のクラスの西谷と星川が昼間ホテルで過ごしていたって知ってるか?」

 「ホテルってこのホテル?」

 「ちげーよ! おまえが昨日、その場所見て1人で騒いでた場所だよ」

 「はぁ!? あそこって……」

 「口に出すな! なんか負けた気分になる!」


 騒がしく話をしていくクラスメイトたちを尻目に黙々と片付けをしていた。

 

 「ここまで来て2人きりになってどうするんだろうな」


 キャリーバックの中に荷物を押し込めながら虎太郎が呟いていた。

 

 「さぁな、誰にも迷惑をかけなければいいんじゃないか?」


 淡々と答えてはいたが、件の2人の気持ちはなんとなくわかったような気分になっていた。

 

 ——おそらく、今の俺も同じことをしていた可能性があるからだ。


 「……弱いな俺も」


 ため息混じりに俺は独りごちていた。


 10時前にフロントへと集合すると、新幹線の時間まで待ち時間になっていた。

 その間にお土産を買ったり、近場を散策など各々が残りの時間を満喫していた。

 俺と柚羽は虎太郎とアリアのいがみ合いを黙って見ていた。

 

 そして、新幹線の時間となり、乗車して席に座ると同時に2日の疲れが押し寄せてきて気がつけば寝てしまっていた。

 どうやら柚羽も同じだったようで2人ともアリアと虎太郎に起こされるまで起きる気配が全くなかったと話していた。


 「修学旅行お疲れ様! 皆、疲れてると思うから寄り道せずに帰ってゆっくり休めよ!」


 降車駅に降りると、担任が必要事項だけ告げ、すぐに解散となった。


 「そんじゃ俺はこっちだから! そんじゃな奏翔!」


 クラスメイト達が各々、帰路へついていく。

 虎太郎のことだから飯食って行こうぜとか言い出すかと思ったが、クラスメイト達の中に紛れ込むように早々に連絡通路の改札へと向かっていった。

 こちらも疲れてるからちょうどよかったが……。


 「私もボチボチいくよ、カナトっち、ユズっちをちゃんと家まで送るんだよ!」


 クラスメイト達の姿が見えなくなるのを見計らってアリアは俺と柚羽に声をかけると改札の奥へと進んでいった。

 気がつけばこの場に残されたのは俺と柚羽だけ。

 

 「……俺たちもいくか」


 隣に立つ柚羽に声をかけると、ゆっくりと顔をあげていた。

 まだ完全に覚醒しきっていないのか、目が虚だった。


 「……うん」


 新幹線の降車駅からは30分ほどかかるとはいえ、1本で行けるのは幸いとも思えた。

 しかも平日の昼を過ぎた頃ということもあり、電車の中はガラガラに等しく、すぐに椅子に座ることができた。


 「駅着いたら、起こしてやるから寝てろ」


 柚羽は座った瞬間にも頭が前後に揺らしていたので、俺の肩へと引き寄せた。


 「……うん、そうする」


 それだけ告げると柚羽はすぐに寝息を立てて眠ってしまった。

 そんな彼女の姿を見ながら、俺の気分は落ち着く感じがしていた。



 「「ただいまあ……!」」


 自宅の玄関を開けると真っ先に柚羽が中へと入っていった。


 「やっと帰ってきた……やっぱ家が落ち着くー!」


 たった2日だけなのに長い時間空けていたような感覚になっていた。

 キャリーバックを持ちながらダイニングへ入ると毎日見ていた光景なのに懐かしいと思えていた。


 「とぉー!」


 柚羽は持っていたキャリーバッグをリビングの壁に立てかけてから、飛び乗るようにソファへとダイブしていった。

 すぐに起き上がり、俺の方へと視線を向けると、満面な笑顔でソファをポンポンと叩いていた。

 早く座れってことだろう。


 「……圧をかけるなよ」


 そう言いながら、俺もキャリーバッグを壁に立てかけると柚羽の隣へと座った。


 「だめっ……もう我慢できないー!!」


 俺が座るのを待っていたかと言わんばかりに、俺の膝へと顔を突っ伏する柚羽。

 

 「あぁ……奏翔の匂いたまらない! クンカクンカじゃ足らないからペロペロしていい!?」


 柚羽はくるりと体全体をまわし、顔をこちらに向けたのはいいが、目をカッと見開いていた。


 「……いいって言うわけないだろ、ってか顔が怖い」


 ため息混じりに答えると、柚羽はムッとした顔のまま立ち上がるとすぐに俺の膝の上に座り出した。


 「かわいい柚羽ちゃんに向かって怖いだなんて失礼なんだよ!」


 そう言って、柚羽は顔を俺の方へと近づけてきた。

 あとちょっとでお互いの顔が触れてしまうんじゃないかと思える距離だ。


 「……わかったから離れろ」

 「むぅ……こう言う時は勢いに任せてチューするのが常識なんだよ?」


 文句を言いながらゆっくりと離れる柚羽。

 だが、すぐに俺の体に抱きつき、自分の顔を俺の胸に擦り付けていた。

 甘えたがる猫のように……。


 「2日奏翔成分が摂取できなかったから危うく気が狂うところだったよ! アリアさんの双丘揉みまくればどうにかなると思ったけど、虚しくなる一方だったし!」

 「……お前はいったい何をやってたんだ」


 俺がツッコミを入れると柚羽はすぐに顔をあげる。

 

 「あ、その顔はもしかして柚羽ちゃんの爆乳を堪能したいって顔してるでしょ! まったくしょうがないなぁ〜」


 一方的に解釈をした柚羽はいつも通りニヤけた表情で胸元を強調させるように腕を組んでいた。

 そうやってもコイツの場合まったく強調できていないのだが。

 

 ——だけど俺にとってはそれだけで十分だった。


 「わっ……奏翔どうしたの!?」


 俺は柚羽の胸元に吸い込まれるように顔を倒していた。

 

 「……おまえの爆乳を堪能したかったんだ」


 そう伝えながら俺はそのままゆっくりと目を瞑る。


 いつもなら柚羽の言うことは適当にあしらうのだが、今日に限ってはそんなことはできなかった。

 決して疲れとかではない。というか疲れてたら真っ先に自分の部屋のベッドに倒れ込んでいる。


 じゃあ、何かというと……。

 俺も柚羽と同じで2日間摂取できていなかったからにちがいない。

 コイツの言葉を真似して言うのであれば、こんな名前になるのだろうか。


 ——『柚羽成分』と。

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