75話 楽しい旅の始まりと奏翔の我慢
74話と75話が逆になっていましたので修正いたしました。
大変失礼いたしました。
「ユズっち、あれフジヤマだよね!」
誰もが楽しみにしていた修学旅行当日、俺たちを乗せた新幹線は目的地である京都へ向けて加速していった。
席は決まっていなかったため、各々が好きな場所に座っていき、ほとんどがグループで固まって騒いでいた。
俺たちも例に漏れず、アリア、虎太郎、柚羽の4人で座席を回転させていた。
「ホントだ、天気がいいから頭の部分が真っ白だね」
アリアに声をかけられた柚羽は一緒に窓の外を見ていた。
俺もその声に反応して窓の外を見てみると、天気がいいからか、富士山がはっきりと映っている。
「ってのんびり見てる場合じゃない、写真取らないと!」
窓側の座席に座ったアリアは窓から映る富士山をスマホの写真に収めるため、窓ガラスにスマホを貼り付けて何度もシャッターボタンをタップしているのか、カシャカシャとシャッターを切る音が聞こえていた。
シャッター音が止まるとアリアは満足そうな表情を浮かべていたので、満足する1枚が撮れたのだろう。
「そうだ、ツーショットで撮ろうよ!」
そぐにアリアはそう告げると、すぐに持っていたスマホを掲げ、空いている手を隣に座る柚羽の後ろに手を回した先でピースサインをしていた。
それに合わせるように柚羽は学校での大人しそうな表情で小さくアリアと同じサインをしている。
「ちくしょう、俺も和田塚さんと一緒に写真撮りてぇ!」
俺と一緒に2人の様子を見ていた虎太郎は腕を組みながらぼやいていた。
撮った写真を見ていたアリアは虎太郎の声に気づいてこちらへ目を向ける。
羨ましいだろと言わんばかりの顔で。
「その顔は羨ましいって感じの顔だねコタっち、残念ながらこっちは男子禁制! それに知っているだろ? 百合に挟まれた男がどうなるか……」
アリアは先ほどピースサインをしていた手で柚羽の肩を掴み、勢いよく自分の方へと引き寄せられ柚羽の顔はアリアの胸元へ押し付けられる形に。
突然のことだったため、柚羽は驚きの表情のまま、俺を見ていた。
「おまえらいつから百合になったんだよ、ってか和田塚さんを変な道に引き込むな!」
「ユズっちにはこの修学旅行で百合の世界を思う存分知ってもらうつもり! それじゃ手始めにかわいいユズっちの唇から——」
アリアは目を瞑り、「ん〜」と声を出しつつ唇を上げながらゆっくりと柚羽の顔に近づいていく。
柚羽はアリアの顔の前で両手を振りながら俺たちの方を見て、今にも泣きそうな顔で止めてと訴えていた。
「アリア、悪ふざけはやめとけよ……和田塚さんに嫌われるぞ」
俺がそう告げるとアリアは動きを止めて目を開ける。
「たしかにカナトっちの言う通りだ……ここでユズっちに嫌われたらせっかくの修学旅行が台無しになっちゃうね!」
アリアは不適な笑みを浮かべながら俺の顔を見る。
その表情を見た俺はアリアを睨みつけてから、柚羽の方へと顔を向ける。
柚羽は恥ずかしそうに下を向いていた。
ちなみに周囲の座席に座っていたクラスメイトたちも見ていたようで……。
「和田塚さんの清らかな唇が守られた! あの女め……!」
「活発女とおとなしい和田塚さんのキマシタワー展開も見たかったが……ぐぬぬ」
「なんか、私の胸のドキドキが止まらないんだけど!?」
そこからは安堵の声やアリアへのバッシングなどさまざまな声が入り混じっていた。
「以上で、自由行動開始とする。 遅くとも19時には旅館に戻ること!」
名古屋を過ぎた頃、担任が俺たちのいる車両へとやってくると簡単に自由行動の注意点を伝えていた。
タイミングを見計らったのか定かではないが、説明が終わると同時に新幹線は京都へと到着した。
荷物を持って新幹線から降りると、近くのエスカレーターには長い行列ができていた。
「すげー!平日なのにこんなにもいるんだな」
俺の後ろで虎太郎が行列を見て、驚きの声をあげている。
「……学校付近の駅じゃこんな光景見れないしな」
そう答えながら、周辺を見渡すと前にはアリアと柚羽の姿が見えた。
降りる直前に改札で集合とは伝えたので問題はないだろう。
「あ、カナトっち、コタっち! こっちこっち!」
長い行列を進みながら改札口を出た先でアリアがこちらへ大きく手を振っていた。
その隣では若干疲れた様子の柚羽が立っていた。
「鹿島田って髪が真っ赤だから目立つよな」
「……たしかにな」
虎太郎と思っていることを口にしながら、2人のいる場所へと向かっていった。
「よっしゃ! でかい荷物も預けたことだしさっさと移動しようぜ! ってかどこからいくんだっけか?」
担任からキャリーバックなどの大きな荷物は宿泊先で預かってもらえると言われていたので、合流してすぐにホテルへ向かい、フロントで荷物を預けた。
ロビーで空いている席があったので、そこに座ってこれからのルートを確認していた。
「まずは俺の希望の伏見稲荷神社だな、京都駅から電車でいけるみたいだ」
「ホントなら忍者体験ができる場所に行きたかったのに!」
俺の目の前に座るアリアが不満そうな顔で文句を言っていた。
コイツの希望は太秦映画村だったが、リニューアル工事中のため断念せざるを得なかった。
「やっぱあれか、外国人からすれば忍者ってのは特別なものなのか?」
「日本って言ったらニンジャでしょ! だって乗れるぐらいのカエルだったり、ランク上のニンジャだとスピリットだから……あ、そうだ精霊だっけ?を呼び出せるっていうし!」
嬉々として語るアリアだが、聞いていた俺と虎太郎と柚羽は絶句していた。
カエルは日本人でも考えつくが、精霊を召喚ってゲームの影響を受けすぎだろと声に出しそうになっていた。
「それじゃ出発するか、伏見稲荷神社以外にも今日だけで3件も行かなきゃならないし」
俺が立ち上がると合わせるようにアリアと虎太郎が立ち上がり、足早にホテルの入り口へと向かって行った。
俺も2人の後を追おうとすると、後ろからシャツの裾を掴まれた。
もちろん掴んだのは柚羽。
「……どうしたんだよ?」
俺が声をかけると、下を向いていた柚羽は顔を上げる。
「……何か奏翔が近くにいるのに傍にいられないのが寂しいからつい」
柚羽は不満そうな顔でそう答える。
「……2日間の我慢だ、とりあえず今はこれで満足しろ」
俺は周囲に誰もいないことを確認してから柚羽の頭を撫でる。
突然のことだったのか、柚羽の顔が一気に真っ赤になっていったが、顔は嬉しい時に見せるニヤけ顔になっていた。
「奏翔に頭撫でられた……うへへ〜」
「……さっさと2人のところに戻るぞ、ってその前にその変な顔戻しておけよ」
「うん、ふへへ〜」
柚羽の顔はさっきよりも変になっていた。
大丈夫かこれ……?
「カナトっち、ユズっち! なにしてるのー早くいくよー!」
遠くからアリアの声が聞こえると柚羽の表情はいつも通りのものに戻った。
そして声がした方へと慌てて走っていった。
俺もその後をついていくが……。
「……俺も2日間我慢しないとな」
自分の心の奥底へとしまいこんだ感情に思わずため息が漏れ出していた。
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