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71話 俺たち私たちを知った人

 「え、な……何でカナトっちとユズっちが一緒にいるの!?」


 鹿島田は目を大きく開けながら俺たちを指さしていた。


 「それにユズっちの格好も私が待ち合わせをしようとしていた人が言ってた服装だし、まさかとは思うけど……」


 いつも飄々としている鹿島田がひどく慌てていた。

 正直俺たちもそれぐらい慌てたい気分なんだが……。


 「……どうしようか?」


 そんな鹿島田の様子を見ていた柚羽は俺の方へと顔を見上げていた。

 どうしようかと言うのは、おそらく俺たちのことを話すかということだろう。

 見つかる前なら急いで逃げることもできたが、見つかってしまった以上、逃げるのは危険すぎる。

 学校で俺たちのことを言われたら、下手すれば俺の命の危機にも繋がってくる。


 「……話すしかないな」


 俺はため息混じりに柚羽へそう告げた。

 どうやら柚羽も同じ考えだったのか、「うん……」と答えていた。



 「つまり、カナトっちがセシリアちゃんで、ユズっちはライガの中の人ってことだよね? で、しかも2人は幼馴染ってことでオッケー?」


 スタッフに再入場できることを確認してから外に出て、展示場の近くにあったカフェへと入っていった俺たち。

 鹿島田にはLEOのゲームのキャラや、俺と柚羽のことをある程度説明した。もちろん説明したのは必要最低限のことだけで俺と柚羽が一緒に暮らしているなど言う必要のないものは伏せている。

 ちなみに鹿島田も自分がフウヤのプレイヤーであることを明かしている。


 「なんか怪しいとおもったんだよね、この前カナトっちがユズっちのことを話してる時、ものすごい感情がこもっていたというか……」


 それに関しては失態としか言いようがなかった。

 淡々と話していたつもりだったのだが……。


 「それにユズっちもアニメとかゲーム興味ないって言ってた割には、マニメイトで商品を見る目がなんかちがってたんだよね〜」


 鹿島田の言葉に俺と柚羽は下を向いていた。


 「……って何で2人ともそんなに沈んでるの!? 私に知られたのがそんなにショックなの!!?」

 「なんかずっと黙ってて申し訳なかったというか……」


 最初に口を開いたのは柚羽だった。

 

 「全然気にしてないから! むしろユズっちもアニメとかゲームが好きってわかってむしろ嬉しかったし!」


 鹿島田は嬉しいを全面的に出した顔で柚羽を見ていた。


 「にしてもユズっちも『究極勇者ライガ』が好きなんだよね?」

 「う、うん……アリアさんもそうなんだよね? フウヤを再現するぐらいだし」

 「もちろん! フウヤは私の嫁といっても過言じゃないね!」

 

 鹿島田は自信たっぷりに答えていた。

 これに近いことをどっかで聞いたような気がするが……


 「ちなみにライガは私の旦那だから!」


 ……すぐ隣にいたよ。

 同じアニメ好きという共通点があったからか、柚羽と鹿島田はその話で花を咲かせていった。

 その間というと俺は置いてけぼりをくらった感じがしている。

 あのアニメは放映当時から柚羽と一緒に見てきたのでわからないわけではないが、互いのキャラ愛のことになると俺が入る隙は全くもってなかった。


 「でも、ずっと海外にいたのに、何でライガを知ってるの?」

 「前に言ったパパが加入している日本のアニメ専門チャンネルでやってたんだよ! やっぱりフウヤが颯爽とモンスターを倒していくシーンは何度見ても惚れ惚れしちゃうよ」

 「たしかにクールな感じのフウヤはカッコいいけど、ライガには負けるかな!」


 アニメ好き女子2人のトークは尽きることを知らない。

 気がつけば2時間近く経っていた。


 「あ、ちょっと席外すね!」


 話している途中で柚羽が立ち上がっていた。


 「……どうしたんだ?」

 「お、お花摘み!」

 

 柚羽は滅多に口にしない言葉を告げると、そのまま店の奥へと向かっていった。

 いつもなら平然と「お手洗い! 一緒に行く?」とか言ってるのに。

 

 まあ、鹿島田に言いたいこともあったし、ちょうどよかったかもしれない。


 「鹿島田……お願いがあるんだが」

 「うん? ってかLIMEで送ったけどアリアって呼んでよ!」

 「……そのうちな」

 

 鹿島田は不満そうな顔で俺をじっと見ていたが、すぐに「で、なに?」と尋ねてきた。


 「……俺と柚羽のことは学校で言わないで欲しいんだ」


 俺の言葉に鹿島田はキョとんとした表情をしていた。


 「それってもしかして、ユズっちをキモいアイドル化してる連中にバレたくないから?」

 「……それもあるけど、他にもある」


 あまり昔のこと、特にあの卒業式の時に起こったことは思い出したくもないし、口にもしたくなかった。

 だが、この女を納得させるためには話さざるを得ないと判断した。

 

 「……何となくは理解したけど、考えすぎじゃない?」

 「考えすぎなぐらいが丁度いいんだ……それにもう柚羽にあんなことはさせたくないから」


 今の柚羽は学校で人との付き合いはこの女を除くとほとんどない。

 だが、ファンクラブの連中がアイツを偶像崇拝アイドル化している。

 もし、俺との関係がバレた時に、俺だけに怒りの矛先が向けばいいが、それが柚羽に向いてしまったら……。

 あの時以上に傷ついてしまう可能性がある。


 「ふふっ……」


 俺の話を聞いていた鹿島田はクスッと笑っていた。


 「……何だよ? 変なことは言ってないぞ」

 「ごめんごめん、別にバカにしてるわけじゃなくてさ」

 「じゃあ何だよ……」

 「カナトっちはユズっちのことを大切にしているんだなって」


 鹿島田の言葉に俺は言葉を詰まらせてしまう。


 「カナトっちの言い分はわかったよ、もちろん学校では2人のことは言わないよ、そもそも学校でユズっち以外に話す相手はいないしね」


 屈託のない笑顔でそう話す鹿島田を見て俺は安堵の息をつく。


 「じゃあさ、そっちのお願いを聞くんだから、私のお願いも聞いてもらっていい?」

 「……何だよ? 変なこと言い出すなよ?」

 「何、変なことって……?」

 「……なんでもない」


 いつも柚羽が変な要求をしてくるため、同じような対応をしてしまっていた。

 慣れって怖いな。


 「さっきも言ったけど、私のことはアリアって呼んでくれない? ずっと鹿島田って呼んでるけど、ママのファーストネームに全然慣れないんだよね!」


 力強く話す鹿島田の言葉に俺は少しホッとしていた。

 柚羽みたいな卑猥な要求をされたらどうしようか本気で悩むところだった。


 「……しょうがないな、アリアでいいのか?」


 俺が名前で呼ぶと鹿島田……もとい、アリアは嬉しそうな顔で何度も頷いていた。

 

 「うんうん、そっちの方がしっくり来るんだよね〜」


 まあ、これで約束してくれるなら安いものだろ。


 「ただいま〜」


 そんなことを考えているうちに、花摘みにいっていた柚羽が戻ってきた。


 「ユズっちおかえりー!」


 真っ先に声をかけたのはアリアだった。


 「……むぅ」


 柚羽はいつもやる不機嫌そうな顔で俺たちを見てからすぐに俺の隣の席に座る。

 どうやらアリアは気づいていないようだ。

 

 「どうしたんだ?」


 俺が声をかけると柚羽は小声でこう呟いた。


 ——奏翔とアリアさんが仲良くなってる、浮気だ!と。


 それに対して俺はいつものようにため息で返したのだった。

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