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70話 ウキウキワクワクのデート日和開始

 「……柚羽」

 「なーにー?」


 夢の中かわからないが、先ほどまで心地いい気分に浸っていたような気がする。

 だが、突如体全体が押さえつけられた感覚になり、ゆっくり目を開ける。

 視線の先には柚羽の姿があり、四つん這いになって俺の顔を見下ろすように見ていた。

 どうやらコイツが両手両足で布団を抑えてるせいで押さえつけられた感覚になっていたようだ。


 「…………今何時だと思ってるんだ?」

 「えっとね、4時半だって」

 

 柚羽は自身のスマホをこちらに向けてきた。

 明かりのついていない部屋の中で突然輝度が最高設定の眩しい画面を見せられ目を細めてしまう。

 少し経ってから画面をみると柚羽が言った通りの時間だった。

 その直後に窓から外を見てみると、うっすらと明るくなっていたがまだまだ全体的に宵闇に包まれている。


 そもそもの話、こんな時間に柚羽が起きていることが不可思議というか、あり得ない。

 休みとなれば昼過ぎまで起きてこないコイツが日が昇る前に起きているなんて……


 「……そっか、まだ夢をみてるのかもしれない」


 脳がほとんど動かない状態でたどり着いた答えはこれだった。

 夢ならこんな時間にコイツが起きているこの摩訶不思議な状況も理解できる。

 

 「じゃ、現実の俺が目を覚ますまで俺はもう一眠り……」


 ゆっくりと目を閉じようとするとファサッと静かな音と共に布団が捲れ上がり、柚羽が俺の横に体を倒し、捲っていた布団を元に戻していく。

 滅多に見ることのない彼女の無駄のない動きに驚いてしまっていた。

 柚羽がこんな俊敏に動けるはずがないので、やはりこれは夢なのかも——


 「さっきから夢、夢って呟いてるけど、もしかしてまだ寝ぼけてる? 童話のお姫様みたいにちゅーしたら起きたりするかな?」


 そう言って柚羽は目を瞑ってゆっくりとこちらへと顔を近づけてきたので頭を掴んで抑えつけていく。

 彼女とのいつものやり取りを得て、俺はこれが夢じゃないと理解できたのだった。

 

 「それで何でこんな時間に起きて、俺の部屋にいるんだ?」

 「だって今日ってLEOの感謝祭に行く日でしょ?」

 「そうだが、いくら何でも早すぎじゃないか?」


 感謝祭にはグッズ販売もあるため、今ぐらいの時間に起きて始発で会場に向かう人もいるというが、俺たちはグッズにはあまり興味がないので、のんびり行こうと思っている。


 「私もギリギリまで寝ようと思ってたんだけど、奏翔と出かけるって考えたら体が疼き出しちゃって全然寝付けなかったんだよねー」

 「……お前は遠足前の小学生か」


 俺の言葉に柚羽は「えへへ〜」と呟いていた。

 

 「この興奮状態から落ち着かせるためには奏翔を襲うしかないと思って、今に至る!」

 「まったく理由になってないだろ……」

 「それに日が昇ろうとしている時にえっちぃことするってすごく幻想的というか興奮しない?」

 「するわけないだろ……」


 柚羽は不満そうな顔で口を尖らせていた。

 落ち着かせるために来て、余計興奮するようなことをしてどうするんだ……。


 「むぅ……興奮しないならないならさせるのみ!」


 そう言いながら柚羽はゆっくりと体を寄せてきたので、仕方なく抱きしめることにした。

 こうすれば変なことは一切できないはずだ。


 「……俺はもう一眠りするから暴れるなよ」


 そう言って俺はゆっくりと目を閉じていく。


 「えー……せっかく奏翔から抱きしめてくれたのに何もしないって、意地悪すぎー!」


 柚羽は俺の体を軽く叩きながら文句を言っていた。

 

 「……文句言ってると今すぐ部屋に運ぶぞ」

 「えー! やーだー! 奏翔の温もりをかんじてたいー!」

 「……だったらこれで我慢しろ」


 俺は柚羽の体を自分の方へと寄せて力強く抱きしめていく。


 「あれ、でも……抱きしめてくれるってことはもしかして奏翔も柚羽ちゃんのゆくもりが欲しかったとか?」

 「……うるさい、さっさと寝ろ」


 思わず声に出すと、柚羽はウシシと悪いことを企んでそうな笑い声をあげていた。


 

 

 「ふわ〜あ!」


 電車の座席に座りながら俺は手で口元を押さえていた。

 中途半端な時間に一度目を覚ましてしまったせいか、寝たにもかかわらず、あくびが止まらなかった。

 ちなみに俺を起こした張本人はというと、俺の肩にもたれかかって心地良さそうな寝息を立てていた。


 「……いい身分だな、まったく」


 悪態をつきながらも俺は柚羽の肩を手で押さえていった。

 ……俺ってホント甘いのかもしれないな。


 「大変お待たせいたしました、次は——」


 車内放送が目的地である駅名を告げていた。

 起こすために柚羽の肩をゆっくりと揺らしたのはいいが……


 「うぅ……もっと激しくてもいいよぉ」


 寝言だと思うが耳元でとんでもないことを呟いていた。

 小声だから目の前の人には聞こえないと思うが、俺は顔が真っ赤になっていた。



 「とーちゃーく!」


 感謝祭の会場となる大型展示場がある駅の改札を抜けると柚羽は上に腕を伸ばしていた。

 相変わらず断りもなく俺のパーカーに袖をきているが、腕をのばした際にずるずると腕を覆っていた部分がズルズルと落ちていった。また、出かける時はロングスカートだが、今日は動くことを想定して少し大きめのワイドパンツを履いていた。

 それにプラス、キャップをかぶっているので、パッと見小学生にしか見えない。


 「さすが大型連休のイベント開催時、人がたくさんいるねー!」

 

 駅の改札から感謝祭の会場をみると、そちらへ向かってあるく人大勢の人の姿が。

 今から俺たちもあそこに行くことを考えるとゾッとしてくる。


 「かーなーとー!早く行こうよー!」


 柚羽は滅多に来ることのない場所に来たことで、気持ちが舞い上がっているのか、俺の腕をガシッと掴むと会場へと向かって歩き出していた。


 「LEO感謝祭の入り口はこちらになりまーす! 手荷物検査をおこなっておりますので、こちらに並んでおまちください!」


 会場の中に入ると、感謝祭のスタッフが拡声器を使って必死に呼びかけていた。

 俺たちはそれに従い、列の最後尾へと並んでいった。


 「奏翔、すごい人!」


 柚羽に声をかけられ、彼女と同じ方を見ると、ガラス越しに真下で行われている既に開催されている感謝祭の様子が見ることができた。ステージやグッズ販売、撮影コーナーなど各所でたくさんの人でごった返していた。


 それから30分ほどで手荷物検査を終えて、会場の中へと入っていくと、先ほど見た時以上に熱気がすごく感じていた。


 「それで、まずはどうするんだ?」

 「さっきツールで連絡したら、フウヤくんも中にいるみたいだから合流しようって思ってるよ」

 「デートって騒いでた割には人と合流するんだな」

 「もしかして、私とずっと2人でいたかった?」

 「いいや、別に〜」


 俺がせせら笑いながら答えると柚羽はムッとした顔で俺の足を踏みつけていた。


 「そんなこと言うなら、腕組んであげないから! せっかく柚羽ちゃんのお胸を堪能させてあげていたのに!」

 「俺は構わないが? 動きやすくなるし」

 「うぅ……奏翔のばかぁぁぁぁ!」


 大声を上げながら柚羽は結局、定位置である俺の腕にしがみついてきた。


 「で、フウヤのプレイヤーとはどこで待ち合わせなんだ?」

 「えっとね、メッセージコーナーの方にいるって、デニムジャケットに黒のスラックスを着てるって」


 俺たちは会場の案内を見ながらメッセージコーナーに向かい、フウヤのプレイヤーを探していた。

 その姿はすぐに見つけることができたのだが……


 「……ねぇ、奏翔」

 「……おまえもやっぱり思ったか?」


 俺と柚羽は互いに顔を合わせていた。

 なぜ、こんなことになっているかというとだ……

 探していたフウヤのプレイヤーがどうみても、俺たちの共通の知り合いにしか見えなかったからだ。


 デニムジャケットに黒のスラックス、インナーはボーダーのTシャツ。

 ツールのメッセージ機能で柚羽に伝えた通りの姿。

 更に言えば、鮮血とも思えるぐらいの真っ赤に染まった髪が決定打になっていた。

 

 ——その姿はどうみても4月に転入してきた鹿島田有愛にしかみえなかった。


 あちらも俺たちの存在に気づいたのか、「え!?」と言わんばかりに目を大きく開けてこちらを指さしていた。

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