68話 こんなかわいい子がいるのに!
「ただいまぁ……」
家に着く頃にはすっかり夜となっていた。いつもなら夕飯を食べている時間だった。
中に入ると、ダイニングからドタドタと音を立ててこちらに近づく足音が聞こえていた。
「おかえりー!」
柚羽は『くっ!』と書かれた青いTシャツにハーフパンツ姿でドアからひょこっと顔を出していたが、すぐにこちらに向かってくると、いつものように俺の体に抱きついてきた。
「今日はありがとー! おかげで溜まったアニメがある程度消化できたよ!」
「それはよかった、犠牲になった甲斐があったよ……」
「奏翔のカードを場に提示することで、柚羽ちゃんは家に帰ることができる!」
柚羽は人差し指と中指でトレーディングカードをつかむ動作をしていた。
「……できることなら二度と使ってもらいたくないけどな」
そう言いながら靴を脱いで家の中に入り、部屋へと行こうとしたところ、柚羽に呼び止められた。
振り向くとムッとしたような顔で俺をみていた。
「そういえばさっきアリアさんからLIMEメッセージが来たんだけど」
一瞬誰かと思ったが、すぐに鹿島田であることに気づく。
そういや柚羽もLIME交換したとか言ってたな。
「……さっきまでアリアさんと一緒にいたんだって?」
そう言いながら柚羽はスマホの画面を俺に見せてくる。
画面には鹿島田とのメッセージが表示され……
Aria.R.P
『今日カナトっちから美味しいラーメンの店教えてもらったんだけど、一緒にいこうよ!』
と書かれていた。
ちなみにそのメッセージの後ににっこりと笑う猫のスタンプが送られていた。
そもそも何であの女はこんなことを柚羽に送っているんだ。
「仕方ないだろ、俺の腕掴んで離さないし」
言い訳に近い理由を話していくが、柚羽は不機嫌ぐらいをこちらに見せつけるかように頬を膨らませながら、俺の顔をじっと睨んでいた。
「……浮気した罰としてハンバーグとハグとデートを所望する。してくれないと奏翔が寝た後にイタズラする!」
ちょっとまて、どうして浮気とか穏やかじゃない方へと行くんだ……
「……ハンバーグとハグはいいとして最後のデートって……」
「それは後で話すからまずはハンバーグを作るのだ! っていうかお腹ペコペコ!」
柚羽は自分のお腹を抑えながらそう告げていた。
今から献立考えるのもめんどいから今日はこいつのワガママに付き合うとするか……。
「わかったよ、着替えてから作るから先に風呂でも入ってこい」
「あ、ついでにお風呂も一緒に入るのを——」
「……飯がこれ以上遅くなってもいいのか? それにこれ以上遅ってハンバーグなんて食べたら——」
「——お風呂いってきまーす!」
俺の言葉を最後まで聞くことなく柚羽は洗面所へと走っていった。
「それで、デートのことなんだけど!」
柚羽はダイニングテーブルの上にチーズインハンバーグをナイフで切りながら話しかけてきた。
ちなみに俺は鹿島田と一緒に食べたラーメンがまだ残っていたので、お茶漬けで済ませることにした。
「以前、LEOの放送番組あったでしょ?」
「あぁ、これからのバージョンアップ情報やコラボ情報を紹介していたやつか」
パーソナリティでプレイヤーでもある2人組の若手芸人が何かにつけてスベっていたことを思い出す。
「それでさ、感謝祭やるって言ってたの覚えてる?」
「夏と冬の祭典をやる展示場でやるとか言ってたやつか?」
感謝祭はLEOに限らず、他のMMORPGでもやっているものはある。
時にはライブだったり、舞台だったり色々な形でリアルでのイベントを開催している。
「うん! ってことでそれに連れていって!」
「……いつだっけやるの?」
「5月の大型連休の時だよ」
スマホを取り出して、検索をするとすぐに感謝祭のページが出てきた。
日にちを確認するとどうやら大型連休中ずっとやっているようだ。
「……どうせ連休中やることもないし別にいいか」
「さすが奏翔、うへへ〜奏翔とデートだあ」
柚羽は溢れんばかりの笑顔のままハンバーグを口に運んで行った。
『そういえば2人とも、感謝祭はどうするんだい?』
食事を済ませてからLEOにログインするとフウヤのプレイヤーが既にログインしていた。
これからレベル上げをしようと言おうとしていると、あちらから話しかけてきた。
『うん、行くつもりだよ!』
柚羽は勢いよくタイピングして答えていった。
『セシリアさんは?』
『そのつもり』
と淡々と答えていった。
ウイッチのキーボードが打ちづらいからこうなってしまう。
『ちなみにいつ行くのか決まってたりするのかい?』
『うーん、特に決めてないかなー』
『同じく』
俺と柚羽が答えると、フウヤのプレイヤーは「それなら!」とメッセージを送ってきた。
『よかったら、一緒に3日目にしてそこで顔合わせするのはどうかな?』
「……どうする?」
フウヤのプレイヤーから送られたメッセージを見て、柚羽は俺の方をみていた。
「……一応話では俺らと同い年ぐらいなんだっけ?」
「っていう話だよ 前にもJKって言ってたし」
柚羽の言う通り公言していたが、いまだに信じてはいない。
かと言って、ここですっぱりとも断りづらい雰囲気でもあるし……。
「……柚羽はどうする?」
「フウヤ好きがどんな人なのか気になってはいるよ!」
柚羽は目をキラキラと輝かせながら話していた。
「……わかった、会ってみるか。その代わり変なやつだったらすぐに帰るぞ」
「うん!」
そしてすぐに俺と柚羽はフウヤのプレイヤーの提案をのむことにした。
『まさかオッケーになるなんて思いもしなかったよ、今から2人に会えるのが楽しみだね!』
フウヤのプレイヤーはチャットを送りつつ、キャラが何度もジャンプする仕草をしていた。
こうなったら退くことはできないので、このプレイヤーがまともであることを願うばかりだ。
「……大丈夫だよな」
俺は柚羽に不安なことを悟られないようにするため、目の前に置いた炭酸水を一気に飲み干していった。
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