67話 今のアイツになったきっかけは……
「清楚系美少女……?」
俺の言葉に鹿島田は首をかしげる。
「学校における柚羽のことだ」
うまく説明したつもりだが、どうやらうまく伝わらなかったようだ。
仕方がない、順を追って説明してやるか……
中学のあの一件から、柚羽は俺以外に友達を作ろうとはしなかった。
あの時のように、突然友達ではなくなってしまうのが怖いからだと話していた。
「それに私には奏翔がいるから、寂しくなんてないし!」
柚羽から言われた時は、嬉しさもあるが……申し訳ない気持ちのほうが大きかった。
高校生活が始まってから柚羽は男子女子問わず誰とも交流を持とうとはせず、教室ではずっと1人で過ごしていたようだ。
休み時間はカバーをかけたライトノベルを読み、昼も1人で食べてそのまま読書を続けてることによって自分の存在感をなくそうとしていたようだ。
1年の時は俺と別のクラスだったので、昼は一緒に食べようと言ったこともあった。
「気にしなくても平気だよ、1人だと好きなことができちゃうしね! それに……」
——学校で我慢した分、家に帰っていっぱい奏翔に甘えればいいんだから……と。
その言葉に俺は何も返すことができなかった。
そして、高校1年目も終わりを迎えようとした10月後半の文化祭。
この文化祭の一大イベントである『ミス清楚系美少女』コンテストが行われ、柚羽がエントリーされていた。
もちろん、本人が行ったのではなく、柚羽のクラスメイトだった自称カースト上位の女子が自分もエントリーしたものだ。
自信をよく見せるための比較対象として、推薦枠で柚羽を勝手に入れたものだった。
誰とも交流を持たなかったため、このエントリーに気づいた時はすでに引き下げることができなくなっており、嫌々ながらもコンテストへ出場することになってしまった。
そして結果は予想外にも柚羽がこの『ミス清楚系美少女』に選ばれてしまったのだった。
カースト上位女子は見た目も悪くなかったが、緊張でろくに喋ることのない姿が清楚にぴったりだったとか。
審査員もその場にいた観客も満場一致で柚羽を選んだようだ。
そのままコンテストの熱が冷めることなく、気がつけば非公式のファンクラブも作られ、気がつけば男子女子問わず、和田塚柚羽が尊い存在のように扱われるようになっていった。
まさにテレビでよく見かける偶像崇拝かのように。
ちなみにコンテスト後、カースト上位女子から嫌がらせを受けそうになったようだが、ファンクラブの連中が完膚なきまでに叩きのめしたと聴いている。
だが、この状況を一番に望んでいたのは誰でもない、柚羽本人だった。
本人が望んだ形を壊すわけには行かず、学校では柚羽とはまったく知らないクラスメイトを演じることに。
家に帰ればずっと変わらない柚羽でいてくれる。
本当にこれがよかったのか、俺にはわからない。
だが、柚羽をそんな風にしてしまった原因である俺がとやかく言える権利はどこにもない。
「——が、今の和田塚さんの状況だ」
鹿島田に事の発端を説明した。
もちろん、俺と柚羽のことは適当に端折りつつ。
「……うわ、何それものすごく気持ち悪いんだけど」
鹿島田はストレートな言葉でそう告げた。
初めて聞いた人間からすれば素直な意見だと思う。
「ってかさ、カナトっちはどう思ってるの?」
「何が?」
「このユズっちのことについて」
「さあ? 俺は和田塚さんのことはよく知らないしな」
自分の言葉に心臓が針で刺されたような感覚を覚える。
学校で一番柚羽のことを知っているのは俺だということは自負できる。
そんな俺でさえ、どうしてやればいいのかわからない。
「本当にそうなの? 何かユズっちのことを話してる時のカナトっち、随分感情が入ってたようなきがするけど?」
彼女の言葉に俺はドキッとさっきとは違う感覚がしていた。
「お、俺も一応男だし、学校で1番の清楚系美少女の話をするとなったらそりゃ感情もはいるだろ?」
自分でもわかるぐらい苦しい言い訳だった。
「……まあ、うん、そうなのかなあ」
鹿島田は腑に落ちないといった様子だった。
「それなら、私はこれまで以上にユズっちを遊びに誘ってみるかな」
すぐに笑顔になり、そう答えていた。
「……何でそこまでして彼女を遊びに誘うとするんだ?」
「だって一緒にいて楽しいし!」
彼女らしいどストレートな返答だった。
その答えを聞いて俺はふと、この女なら今の柚羽を変えられるかもしれないと思ってしまっていた。
昔のように誰でも気さくに話せる柚羽になってくれれば俺は——
「っと、そろそろ帰らないと、ママが心配しちゃう」
鹿島田の言葉にスマホの画面を見ると、この店に入って結構な時間が経っていたことに気づく。
そろそろ満足いくぐらいアニメ鑑賞できただろう。
「うわぁ……暗くなってるー」
会計を済ませて外にでると、空は真っ暗になっていた。
「それじゃ俺は帰るから——」
すぐに駅の方へと向かおうとするが、腕をグイッと引っ張られてしまう。
「……何だよ?」
もちろん引っ張ったのは鹿島田。
俺はため息混じりに聞くとスマホを差し出してきた。
「せっかくだし、フレンドになってくれない?」
スマホの画面にはLIMEのフレンド用QRコードが表示されていた。
「……フレンドになる意味あるか?」
「だって、日本では友達100人作るのが当たり前なんじゃないの? 歌で聴いたことがあるけど」
今時小学生でも言わないぞそんなこと、など思いながらも自分のスマホを取り出してQAコードを読み込むと、『Aria』と書かれたメッセージが表示された。
「ありがとー! またお腹空いたら連絡するから一緒に食べに行こうねー!」
「……断る、行くなら1人で行ってくれ、じゃあな」
それだけ告げるともう一度踵を返して、駅へと向かって歩き出した。
「……疲れた」
電車に乗ってドア付近の壁にもたれかかると、つい声に出してしまっていた。
周りに誰もいなかったのが幸いだった。
安心していると、ブレザーの内ポケに押し込んだスマホが増えるえていた。
柚羽かと思って取り出すが、画面に表示されたのは鹿島田からのメッセージだった。
Aria.R.P
『さっき言い忘れたけど、私のことはアリアでいいから!』
本人曰く、ずっと海外の苗字を名乗っていたが、日本に来て母親の姓である『鹿島田』を名乗れと言われたものの、全く慣れないとLIMEのメッセージに綴られている。
ちなみに父親の姓はリサーチパークらしく、ずっと『アリア・リサーチパーク』だったらしい。
そのメッセージに対して俺はため息をつきながら『あっそ……』とゲームのキャラが描かれたスタンプを送ったのだった。
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