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65話 鹿島田有愛の新たなる犠牲者

 「柚羽、そろそろ寝ないと明日起きれなくなるぞ」


 柚羽は食事と風呂を済ませ、いつものようにTシャツとハーフパンツ姿でソファに姿勢良く座ってテレビを直視していた。

 だが、目の疲れから睡魔に襲われているようで、何度も頭が前後に揺れている。


 「うぅ……全然アニメが消化できない」


 新学期が始まってからもうすぐ半月が経とうとしていた。

 ほぼ毎日と言っていいほど、放課後は鹿島田に連れ回され、帰りが遅くなっており、日課となっているアニメ鑑賞を夜中直前までしていた。


 「別に無理して見なくてもいいんじゃないか?」

 「……毎日見ないと溜まっていっちゃうんだよ」

 「毎回思うが1日にいくつ録画しているんだ?」

 「最低5作品」


 アニメってそんなにやってるのか……


 「だからって睡眠削ったら体壊すから今日のところはさっさと寝ろよ」

 

 俺は飲んでいた炭酸水のペットボトルを冷蔵庫にしまってからダイニングから出ようとするが……


 「かなとー、部屋までつれていってー」


 柚羽はだっこをせがむ幼児のように俺の方に手を伸ばしていた。

 

 「……まったく」


 ため息混じりに柚羽の元に行き、抱き抱える。


 「うへへ〜、奏翔の体あったかーい、このまま奏翔の部屋のベッドまで〜」

 「……自分のベッドで寝ろ」

 「むぅ……明日頑張るには奏翔と一緒に寝る必要があるんだよ?」

 「じゃあ俺が寝不足になって風邪ひいたら、掃除洗濯と食事の用意してくれるんだな?」

 

 階段をゆっくりとあがりながら問い詰めていくと柚羽は猫のように唸り声をあげて俺を睨んでいた。

 そして柚羽の部屋に入り、抱えているこいつをゆっくりとベッドに下ろして布団をかけると、すぐに心地良さそうな寝息を立てる。どうやら限界に近かったようだな。


 「……流石にどうにかしないとな」


 俺は柚羽の部屋を出ると1人呟く。



 「えっと、今日の日誌は鹿島田でいいか」


 次の日、担任が気だるそうに教室に入ってくると鹿島田の名前を呼んでいた。

 他のクラスはわからないが、このクラスというかこの担任は日替わりで日誌を書かせている。

 順番は名前順だが、当人が風邪をひいて休んでいるため同じ「か」のつく鹿島田を指名していた。


 「日誌って何ですか??」

 

 すかさず鹿島田は担任に疑問をぶつけていた。


 「そうだな……お、俺と目があった藤野、後で説明してやってくれ」

 「え!?」


 何その理由無茶振りにも程があるだろ?

 

 「鹿島田は何かあれば藤野に聞くようにな」


 担任はそう言いながら鹿島田の席に行き、分厚い茶色の日誌を渡していた。

 絶対にただめんどくさいから俺に振っただろ、この男……


 そして、放課後。


 「ユズっち! 放課後に行きたいところがあるんだけど!」


 毎度のように鹿島田は柚羽の手を取っていた。

 柚羽はというと心底嫌そうな顔をしているが、鹿島田の圧に負けそうになっている。

 そのやりとりを見て、俺は立ち上がって2人の元へと向かう。


 「……日誌書いたのか?」


 俺が鹿島田に声をかけると、時が止まったかのようにその場に立ち尽くしていた。


 「あー!! 忘れてた全然書いてない!」


 思い出して慌てふためく鹿島田をよそに俺は柚羽の顔をみて、早く出ろとアイコンタクトを送る。

 さすが付き合いが長いせいか、俺の意図を汲んだ柚羽はカバンを持って急いで教室を出ていった。


 「あー!!! ユズっちまってよー!!!」


 気づいた鹿島田が手を伸ばすが時すでに遅し、柚羽の姿は既に教室からなくなっていた。

 今日はゆっくりとアニメ鑑賞できるだろう。


 「えー、めんどくさいからそのまま渡してもいいよね?」

 

 日誌を取り出した鹿島田は俺に話しかけてきた。


 「……あの担任、怒るとめちゃくちゃ怖いぞ、というか俺まで怒られるからやめてくれ」

 「えー! 何を書けばいいのかわからないって!」

 「……教えるからさっさと開いてくれ」


 俺が答えると鹿島田は面倒だという表情で日誌を開いていった。


 

 「今日起きたこと……何か午後の授業で目つきの悪い男子生徒が寝てました。 これでいい?」

 「……まあいいか」


 ちなみに目つきの悪い男子生徒というのは虎太郎のことだ。

 いつも寝てるし、たまには痛い目をみてもいいだろう。


 鹿島田が日誌を書き始めてから1時間が経とうとしていた。

 教室にはもちろん俺とこの女しかいない。

 ちなみに虎太郎は咲奈ちゃんとソシャゲのイベント周回のためだと言って薄情にも一目散に帰っていきやがった。

 

 「あとは……質問などあれば? あ、そうだ! 屋上への扉の鍵の場所教えてと……」

 「それは書くな、色々と面倒なことになる」

 「それじゃ、何を書けばいいの?」

 「……特になしでいいだろ」

 「はーい」


 鹿島田は気だるそうな声で答えると言われた通りに書いていく。


 「よし、これで全部書けたから終わりだよね!」


 そう言って俺に日誌を見せてきた。

 なんていうか、全ての項目に女性特有の丸文字で書かれていた。

 しかも要所要所に筆記体で書かれた英単語も……。


 「大丈夫だろ、それじゃ担任に出せば終わりだ」


 ようやく終わったことに安堵の息をつき、カバンを持って教室を出ようとするが、腕を掴まれてしまう。


 「職員室ってどこにある?」

 

 どうやら案内が必要のようだ。




 「ありがと! それじゃ早速行ってくる!」


 職員室の入り口まで鹿島田を案内すると、すぐに中へと入っていった。

 これでようやく解放される。

 それじゃ帰って夕飯の準備でも、なんて考えているうちに再び職員室のドアが開く。

 ドアの奥には鹿島田の姿があった。


 「……早くないか?」

 「渡したら、帰っていいって言われたよ?」


 まあ、何も修正しろとか言われてないからいいのか。


 「それじゃ俺は帰るから、今度は自分1人で書いてくれ、それじゃ!」


 俺は踵を返し、早々に立ち去ろうとするがまたもや腕を掴まれてしまう。


 「……今度は何だよ?」

 

 振り返って睨むように鹿島田を見る。


 「お礼に奢るから何か食べにいかない?」


 鹿島田は俺の手を掴んでいた腕を離すと、両手を合わせて拝むような仕草を見せていた。

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