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63話 聖域侵害

 「ユズっち! お昼食べよー!」


 新学期が始まって数日が経った。

 進級したが、クラスメイトは変わらないため以前と変わらない日常だった。 

 ——柚羽以外は。

 

 「う、うん……!」

 

 新学期早々に転入生、鹿島田有愛と一緒に行動してからというもの、毎日の様に鹿島田は柚羽と一緒に行動していた。

 

 「昨日は学食で食べたし、今日は屋上でも行こうか!」

 「え、でも屋上はたしか——」

 「——そうと決まったらさっさと行っちゃおう! こう言う時は悪は急げだっけ!」

 「……それをいうなら善はいそげって、ひっぱらないでぇぇぇぇ」


 柚羽は鹿島田に引きづられるように教室から出ていった。


 「鹿島田さん、ほぼ毎日和田塚さんと一緒に行動してるな」

 「全校集会の時の時はすごいと思ったが、彼女って単に空気が読めないだけなのか?」

 「外国人って結構ガツガツくるイメージがあるからそのせいもあるんじゃないかね」

 「この状況、彼女のファンクラブの連中が見たらどう思うんだろうな」


 2人が出ていった直後、クラスメイトたちが話し出していた。


 「……だってよ、どうなんだ?」


 俺は相変わらず目の前の席で堂々と持参した弁当の中身を食べている虎太郎に話を振った。


 「ふわふげくわびひょ!」

 「……食べてる時に聞いて悪かったよ、ゆっくり飲み込んでから答えてくれ」


 俺がそう告げると虎太郎はベットボトルのお茶を勢いよく飲み込んでいく。


 「気に食わないに決まってるだろ!」


 飲んだペットボトルを勢いよく机に叩きつけながら答える。

 予想通りの答えだった。


 「俺たちファンクラブが遠くからじっくり、時にはねっとりと遠くから見守っているにも関わらず、数日しか経ってないあの女に俺たちの聖域を踏み躙られるなんて!」


 熱い思いを語った後、弁当箱にある分厚い豚肉の生姜焼きを口の中に頬張っていった。

 どうやら昨日の恩田家の夕飯は豚の生姜焼きだったようだ。ちゃんと千切りされたキャベツも入っている。


 「これが空気の読めない男なら、拳で語り合うところだけど、相手は女で顔はいいし胸もでかいからそんなことできやしねえ!」

 

 今のセリフ録音して咲奈ちゃんに送っておけばよかったか。

 

 「ってか奏翔はどう思ってんだよ?」

 「どう……とは?」

 「知っているんだぜ、俺?」

 「な、何がだよ?」


 これが震えた声で答えると、虎太郎はニヤニヤとした表情をしていた。

 もしかして、俺と柚羽のことがバレ——


 「——おまえ、和田塚さんの隠れファンってやつだろ?」

 「……は?」

 「いやいや、隠すなって俺知ってるぜ? ここ最近和田塚さんのことをチラチラみてるの!」


 思っていたことと違うことで少し安心していた。


 「見る時は和田塚さんが何か叫んだりした時だろ?」


 新学期になり、鹿島田と一緒のいるようになってから、柚羽は先ほどみたいに叫び声を上げることが多くなった。

 その度に見ていたことは確かだ。


 「今までは何かあってもそんな素振りなかったし」

 

 と、いうより学校ではあまり見ないようにしていただけだ。

 俺たちのことを学校の連中には知られたくなかったから。

 

 ただ、鹿島田と一緒に行動しだしてからは何かにつけて見るようになってしまっていた。

 ——自分でも呆れるぐらいに。


 「どうだ? ファンクラブに入らないか? そうすれば和田塚さんの秘蔵の写真が入ったアプリを——」

 「——結構だ」


 正直、飽きるぐらいあいつのことは見ている。

 こんなことは口が裂けても言えないが。


 「奏翔ならいい会員になれそうな気がするんだけどなぁ」


 いい会員ってなんだよ……。


 「それよかお前はどうなんだ?」

 「どうって?」

 「咲奈ちゃん」

 「あぁ、ゲームにおける最高の相方って感じだな」


 どうやら進展は硬直状態のようだ。

 良いのやら悪いのやら……

 

 虎太郎と話していると昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴ると同時に柚羽たちが教室に戻ってきた。

 出る時と同じように鹿島田に引っ張られながら……。


 「屋上に入れないのは残念だよねー、アニメだと屋上でお昼を食べるシーンとかあるからできると思って楽しみにしてたのに」

 「……アニメと現実は区別した方がいいと思うよ」


 柚羽は小声で鹿島田にそう告げていた。

 高校に入ってから見ることのなかった柚羽を見て、こんなアイツを見るのも悪くないなと思う反面……。

 俺から離れていくような変な感覚になっていく。


 あと、アニメと現実の区別に関して言えば……。

 お前が言うなと心の奥底でツッコんでしまっていた。

 

 

 「柚羽……?」

 「奏翔〜」


 放課後、虎太郎と久々にファーストフード店で駄弁ってから帰っていくと地元の駅の改札で柚羽の姿を見かけて声をかけた。

 今日も鹿島田と一緒に色々と連れまわされたのだろう、顔に疲れが出ていた。


 「疲れたよ〜、突然カラオケに行こうってなったのはいいけど、中にあった卓球台見つけた途端そっちに熱が入っちゃって!」


 どうやら苦手とするスポーツに付き合わされたようだ。


 「家に帰っても引きこもってばかりだし、たまにはいいんじゃないか?」

 「むぅ……」


 柚羽は口を尖らせていたが、すぐに俺の方へと来ると空いている手で俺の手を掴んでいた。

 

 「奏翔は虎太郎くんと一緒だったの?」

 「まあな、相変わらずくだらない話に付き合わされてたよ……」


 俺が話すと柚羽は笑っていた。


 「さてと、さっさと家に帰るか」

 「うん! ずっと奏翔に会えなかったから夜は甘えまくるから覚悟しておいて!」

 「……いつものことだろ」


 俺の返答に柚羽はふへへと変な笑みを浮かべていた。

 いつもなら気持ち悪いとか言ってしまいそうになるが、今日に限ってはそんな柚羽を見ても落ち着いてしまっている自分がいた。

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